NY州クオモ知事が辞意表明

NY州クオモ知事が辞意表明 セクハラ認定で引責
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『【ニューヨーク=大島有美子】米ニューヨーク州のクオモ知事は10日、今後2週間以内に辞任する意向を表明した。3日に同州のジェームズ司法長官が、クオモ氏が複数の女性に対してセクハラ行為をしたことを認定し、同氏に対する辞任圧力が高まっていた。

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クオモ氏は会見で「私がニューヨークの助けにならない状態をつくりたくはない。最善の方法は州政府の機能を戻すことだ」と述べ、混乱の責任を取った。足元では新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)の感染が広がる。クオモ氏は「州政府は時間とお金を感染拡大防止や銃暴力への戦いに使わねばならない」と語った。後任には民主党のキャシー・ホークル副知事が就く。同州で初の女性知事となる。

州司法長官は3日、11人の女性がクオモ氏からセクハラを受けたとする報告書を公表し、クオモ氏のセクハラ行為を認定した。同氏は10日、報告書について「政治的な動機に基づいたもので、真実ではない」と反論した。一方で女性に不快な思いを与えたことに関しては「深く謝罪する」と述べた。

クオモ氏への包囲網は狭まっていた。クオモ氏と近い関係にあったバイデン米大統領は報告書の公表直後、クオモ氏は辞任すべきだとの認識を表明した。8日には側近の秘書官が辞任。ニューヨーク州議会下院のカール・ヘイスティ議長は9日、「知事は下院の民主党議員の大半の信頼を失った」と述べた。

クオモ氏の弾劾調査を進める州議会下院の司法委員会は9日に会合を開き、今後の対応を協議した。弾劾決議案を提出するかどうか、8月中にも判断するとの見通しを示していた。決議案の可決には下院(150人)の過半数の賛成が必要だが、AP通信によると半数超の86人がクオモ氏が辞任しなければ弾劾に向けたプロセスに賛成するとの意向を示していた。

ニューヨーク州では2020年3月にコロナの感染者が初確認されてから感染が急拡大した。一時は1日あたり1万人超の新規感染者が判明するなど全米で最も厳しい感染状況になった。感染拡大初期に医療設備が足りず、クオモ氏は人工呼吸器の確保や病床の新設で陣頭指揮を執った。トランプ前大統領にも支援を求めるなど、政治的な思惑を超えて交渉する手腕が注目された。

3月から土日も含めて111日間連続で記者会見し、マスク着用や社会的距離の確保などを呼びかけた。会見は米主要テレビ局が連日中継した。感染者数や入院者数など日時で更新するデータに基づいた感染対策や危機対応力を評価する声もあった。

セクハラを巡る下院の弾劾調査は今年3月から開始していたが、コロナ対応についても調査対象だった。クオモ氏はコロナ急拡大期の20年3月下旬、高齢者施設にコロナ患者の受け入れを要請し、高齢の死者数が急増する結果を招いた。州司法長官は今年1月、同施設での死者数を過小に公表していた疑いを指摘していた。

下院司法委員会のラヴィーン委員長によると、弾劾調査の内容は高齢者施設でのコロナ対応や、クオモ氏が親族や知人にコロナ検査を優先的に受けられるよう便宜を図ったといった外部の申し立てなどを含んでいた。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員

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分析・考察 バイデン大統領の最優先課題は来年11月の中間選挙で民主党の上下院の過半数を維持することです。昨年の大統領選挙での民主党支持票には、トランプ政権の不十分なコロナ感染対策への不満があり、民主党政権には積極的なコロナ対策への期待がありました。その期待に大きく貢献したのがクオモ知事のコロナ対策における存在感でした。一方で、昨年の大統領選挙と2018年の中間選挙では、トランプ前大統領の女性蔑視の態度に不満を持つ女性票が民主党勝利の大きな原動力となりました。上記の要素を現実的に勘案してバイデン大統領は「泣いて馬謖を斬る」選択をしたのでしょう。

2021年8月11日 8:41 (2021年8月11日 8:42更新)
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石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員

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貴重な体験談 記者人生をまだ始めたばかりのころ、日本初のセクハラ裁判を取材しました。職場での優位性をほのめかし、性的関係を迫る構図です。いくつか裁判を傍聴しましたが、いずれの加害者も「(ハラスメントの)つもりは一切なかった」と言い訳していたのが、記憶に残ります。

思い起こせば、あれは平成初期の出来事。もう30年も経っています。でもいまだセクハラ事案はなくならず、加害者側は同じ言い訳を繰り返します。

「世代が変われば、男性の意識も変わりセクハラはなくなる」。被害者や訴訟を担当した弁護士が、当時の若い世代に期待していたことも思い出します。でも結局、変化なし。次世代でも同じ言い訳が繰り返されるのでしょうか?

2021年8月11日 10:14いいね
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楠木建
一橋大学 教授

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分析・考察 中村さんのコメントにかぶせていえば、「男は女よりえらい」「力のある人は何をやってもいい」――こうした考え方を文章で見たときに同意する人はほとんどいないはずです。それでも性差別やハラスメントの行為は起こる。人間も動物。動物的本能のどこかにこうした要素が入っている。だからこそ意識的規律が大切になると考えます。オリンピックにまつわる失言を例にとって「日本は意識が遅れている」と言います。現象レベルでいえば、確かに日本の女性管理職比率はアメリカと比べて低水準にあり、これは問題ですが、性犯罪件数は日本のほうがはるかに少ない。だいたいどこの国でも人間の動物性は同じようなものだと思います。

2021年8月11日 9:15いいね
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中村奈都子
日本経済新聞社 編集委員

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別の視点 米国に限らず組織のリーダーがハラスメントで辞任するケースが後を絶ちません。性別に限らず人は平等で相手を尊重しなければいけないというのは学校でも教わったはずなのに体得できていないのは、社会のどこかで「男は女よりえらい」「力のある人は何をやってもいい」と学んだのでしょう。家庭や地域やクラブ活動などあらゆる場所で、一人ひとりを尊重することの大切さを徹底していかない限り、同じことが繰り返されるのではないかと懸念します。

2021年8月11日 8:37いいね
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