中国、科学大国世界一を視野

中国、科学大国世界一を視野 米国の競争力基盤揺るがす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC103PJ0Q1A810C2000000/

『中国が「科学大国世界一」の座を米国から奪おうとしている。文部科学省の研究所が10日発表した報告書では注目度の高い論文の数で初めて首位となり、研究の量だけでなく質の面でも急速に台頭していることを印象づけた。戦後の科学研究をリードしてきた米国の優位が失われつつあり、産業競争力にも影響する可能性がある。

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米中が威信を懸けて科学力を競う主戦場の一つが宇宙開発だ。5月には中国が送り込んだ無人探査機「天問1号」が火星に着陸し、習近平(シー・ジンピン)国家主席は「中国は惑星探査の分野で世界の先頭集団に入った」と胸を張った。

2019年には月の裏側へ世界で初めて無人探査機を着陸させている。「中国の技術力は米国に負けないレベルに達している」と京都大学の山敷庸亮・有人宇宙学研究センター長は指摘する。

米国は1950年代以降、科学技術の分野で世界を先導してきた。産業競争力の源泉であり軍事上の優位を支える土台でもあったが、その基盤を中国が揺るがしている。

中国の研究力向上を支えるのが積極投資と豊富な人材だ。中国の19年の研究開発費(名目額、購買力平価換算)は54.5兆円と10年間で2倍以上に増えた。首位の米国(68兆円)にはなお及ばないが、増加ペースは上回る。研究者の数も210万人と世界最多で、18年に155万人だった米国を大きく引き離す。

現在の中国の姿は戦略的な計画に基づく。胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席時代の06年に始動した「国家中長期科学技術発展計画綱要」で、20年までに世界トップレベルの科学技術力を獲得する目標を掲げた。研究開発投資を拡充し、対外技術依存度の引き下げを進めてきた。

人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。国内でハイレベル人材を育てる計画も推進してきた。

当面、中国の勢いは続きそうで、ノーベル賞の受賞なども増える公算が大きい。3月には今後5年間、官民合わせた研究開発費を年平均7%以上増やす方針を示した。米スタンフォード大学の報告によると、学術誌に載る人工知能(AI)関連の論文の引用実績で中国のシェアは20年に20.7%と米国(19.8%)を初めて逆転した。

近年、米国は技術流出に警戒を強め、中国から研究者や学生を送り込むのが難しくなっている。中国は最先端の半導体などをつくる技術はまだ備えておらず、研究を産業競争力の強化につなげる段階でも壁は残る。

日本の衰退は一段と進んでいる。注目度の高い論文の数ではインドに抜かれ10位に陥落した。世界が高度人材の育成を競うなか、大学院での博士号の取得者は06年度をピークに減少傾向が続き、次世代の研究を支える人材が不足している。

米国では民主主義などの価値を共有する日本との協力を重視すべきだとの声もあるが、このままではそんな声さえ聞かれなくなる恐れがある。

(AI量子エディター 生川暁、松添亮甫)

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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授

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貴重な体験談 「人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。」

これが全てを物語っている気がします。米国で名を挙げた企業や大学の研究者が中国に戻ったり中国の組織で兼任したりしているのを実際にたくさん目にします。
2021年8月11日 8:33 (2021年8月11日 9:51更新)

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