五輪のレガシー、光と影

五輪のレガシー、光と影 リオは「負の遺産」に苦しむ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06F7C0W1A800C2000000/

『【サンパウロ=外山尚之、ロンドン=佐竹実】東京五輪が8日に閉幕し、今後は大会が残した「レガシー(遺産)」に注目が集まる。2016年の開催地、リオデジャネイロでは競技施設などが今なお放置される一方、12年のロンドンでは新興企業の拠点に活用される。新型コロナウイルス禍で経済効果がしぼんだだけに、東京にとってはレガシーの活用がより重要性を増しそうだ。

「大会開催に伴う費用は今後も増える」。ブラジルメディアのグロボは7月にこう報じた。リオ五輪の開催に伴う支出は280億レアル(約5900億円)と見積もられていたが、実際は410億レアルに増加。大会終了から5年がたった今も、五輪は「負の遺産」となっている。

跡地利用も進まない。リオ市は7月、ハンドボールなどの競技に使われた競技場の一部を改修し、学校として利用するための工事が9月に始まると発表した。再開発は既定路線だったが、コスト面で連邦政府とリオ市の足並みが合わず、放置されたままとなっていた。
政府の財政難で五輪前の計画通りに改修されず、リオ市内には放置されたままの施設が点在している。こうした状況が荒廃を招き、維持・改修にかかる費用がさらにかさむという悪循環に陥っている。五輪関連施設の建設に伴う数々の汚職が発覚したことも、再開発の遅れにつながる。

地下鉄などの交通網の整備も、レガシーとして残るはずだった。ところが、メイン会場となったバハ地区と観光名所であるイパネマ海岸を結ぶ地下鉄4号線は工事が遅れ、いまだに完全開通していない。

バスに代わる交通網として導入された次世代型路面電車(LRT)は1日25万人を輸送する計画だったが、コロナ前の時点で11万人にとどまっていた。郊外と市中心部を結ぶバス高速輸送システム(BRT)は車両数が足りておらず、通勤時の混雑が常態化している。

リオ五輪の選手村として利用されたマンション群(17年、リオデジャネイロ)=ロイター
選手村跡地は分譲マンションとして改修されたが、多くが売れ残っている。30以上のタワーマンションが立ち並ぶ「イリャ・プラ」はこれまでに3割程度しか売れておらず、多くが空き家となっている。地元メディアのCBNは「ゴーストタウンのようだ」と評する。

リオ市のパエス市長は「五輪のために建設された白い象(無用の長物)はリオにはない」と強弁し、民間資金の活用で再開発を促進するとしている。ただブラジル経済の低迷が続く中、資金の出し手が現れるかは不透明だ。

一方、英ロンドンはレガシー活用の成功例と評される。

ロンドン東部、クイーンエリザベス五輪公園の一角にある「ヒア・イースト」。ロンドン大会でプレスセンターとして使われた施設は現在、新興企業の集積地となっている。スマートフォンなどで手軽にフィットネスを提供する17年創業の「Fiit」など約130の企業のほか、3つの大学が入居し、コロナの感染拡大前は3800人が勤務・通学していた。

マスメディアが世界に情報を発信する拠点だっただけに、テック系企業にとっても理想的なネット環境がそろう。当時テレビ中継に使われたスタジオは、天井までの高さが10メートルに上る。こうした設備を活用し、通信大手BTグループもこの施設でスポーツ中継のチャンネルを運営している。ロンドン東部はかつて開発が遅れた地域だったが、大型ショッピングモールも建設され多くの雇用も生んだ。

五輪を機に自転車専用レーンの整備も進んだ。当時ロンドン市長だったジョンソン首相は「緑豊かで安全な街に」としてレンタルサイクルを導入し、地元民や観光客の足としても定着している。 』