米政権の環境規制、欧州と差

米政権の環境規制、欧州と差 車メーカー・労組に配慮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN062VT0W1A800C2000000/

『【ニューヨーク=中山修志、ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領が5日、2030年までに米国販売に占める電動車を5割に引き上げる大統領令に署名した。電気自動車(EV)振興への決意を表明したかたちだが、ガソリン車の全廃を宣言した欧州との差は大きい。22年の中間選挙に向け、米自動車メーカーや労働組合への配慮が透ける。

5日、大統領令の署名式でバイデン氏に先立ってスピーチしたのは全米自動車労組(UAW)の幹部だった。フォード・モーターのEV工場があるミシガン州ディアボーン地区のバーニー・リッキー代表が「我々はEVを生産する準備ができている」と切り出し、バイデン氏は「UAWが自動車産業の未来をつくる」と応じた。

大統領令に署名するバイデン氏をゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)やフォードのジム・ファーリーCEOら米自動車大手の首脳が囲み、官民・労使の協調ムードを演出した。

バイデン氏が署名した30年に米国販売に占める電動車を5割にする大統領令は、35年にガソリン車を全廃する英国や欧州連合(EU)の計画と大きな差がある。トランプ前政権の規制緩和を撤回した新たな燃費規制も、欧州規制に比べると3割近く緩い内容だ。

7月にガソリン車の全廃を表明したEUの欧州委員会は、自動車業界から猛反発を受けている。欧州は日本や米国に比べ電動車の普及が進んでいるが、メーカー各社は「規制が厳しすぎる」と訴えている。

米メーカーは表向きバイデン政権のEV普及策を歓迎しているが、米市場で9割以上のシェアをもつガソリン車やハイブリッド車(HV)の全廃は認められないのが本音だ。GMやフォードは今年に入ってEV戦略を加速しているが、足元の燃費性能は日欧メーカーに大きく見劣りする。

EVシフトを急げば、雇用を重視するUAWの支持を失う恐れもある。EVはガソリン車に比べ部品や生産工程が少なくすむため、工場従業員の雇用減につながるとの指摘がある。UAWはバイデン政権発足後にEVシフトを容認する姿勢に転じたが、組合員の間にはガソリン車の生産が減ることへの危機感が強い。

バイデン政権は長期の環境規制について、「30年を見据えた規制づくりに着手する」との説明にとどめた。米メディアの間では、今回の規制内容で50年のカーボンニュートラル計画が達成できるか疑問視する声も上がる。22年の中間選挙と24年の大統領選をにらみつつ、さらに踏み込んだ規制を示せるか。バイデン政権と自動車業界の距離が試されている。』