北朝鮮「核施設を複数回稼働」

北朝鮮「核施設を複数回稼働」 国連中間報告書案
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0604D0W1A800C2000000/

『【ニューヨーク=吉田圭織、白岩ひおな】国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調べる専門家パネルが9月にも公表する中間報告書の全容が明らかになった。2020年12月~21年2月にかけ、北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)の核施設を「複数回稼働した」と結論づけた。新型コロナウイルス禍の国境閉鎖の影響で高級品の輸入が停止した一方、石炭の輸出など制裁逃れが続いている現状も指摘した。

5日に安保理の北朝鮮制裁委員会に提出された報告書案の全文を日本経済新聞が入手した。理事国の議論や修正を経て公表する。法的拘束力はないが、報告を受けて安保理や加盟国などが違反する団体や個人に新たな制裁を科すことがある。

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報告書案では、北朝鮮が核・ミサイル開発を継続している現状が浮かび上がった。寧辺の実験用軽水炉では、20年12月~21年2月に撮影された赤外線画像などから、施設で複数回の試験が行われたとみている。

北朝鮮は稼働や停止の状況を公表しておらず公式の記録はないが、米国の北朝鮮分析サイト、38ノースによると、19年に軽水炉での活動が確認されている。報告書案は「軽水炉の外部の工事が完成したようで、現在は機材の設置途中だとみられる」とも指摘した。一方、5メガワットの原子炉は18年以降稼働していないとした。

北朝鮮は制裁をかいくぐり、安保理の制裁決議が禁じる石炭の輸出を続けている。報告書案は、21年2~5月の間に少なくとも41回に分け、北朝鮮産の石炭36万4000トンが中国の寧波・舟山地域へ輸出されたと指摘した。

一方、7月中旬時点で制裁委員会に報告された石油精製品の輸入量は17年12月に安保理決議が定めた年間供給上限(50万バレル)の4.75%にとどまった。21年上半期は従来と比べ大幅に輸入量が少ないが、違法に輸入している石油精製品が増えているため、ある加盟国は「安保理が定めている上限を超える」と予想する。海上で積み荷を移し替える「瀬取り」の手口が使われ、5月以来、より多くの瀬取りが横行していると指摘した。

高級品を含む消費財の輸入は、新型コロナ禍の国境閉鎖で事実上停止し、民間の取引が行われていないとした。ただ、車のタイヤや部品、建築・内装材、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の家族の別荘向け物資など輸入品や高級品の一部は国境の鉄道基地から南浦などの港に船で不正に運ばれたとした。トヨタ自動車の高級車「レクサス」ブランドの車の北朝鮮への出荷に中国企業が関与していたとも指摘した。

特定の組織や人物を狙い、偽の電子メールを送る「スピア・フィッシング」と呼ばれる手法を使い、北朝鮮が「仮想通貨交換所に対するサイバー攻撃を継続的に行っている」とも言及した。ただ、サイバー攻撃で奪った仮想通貨の額については「調査中」とし、明らかにしなかった。3月に公表した北朝鮮制裁委員会専門家パネルの最終報告書によると、19~20年には仮想通貨交換業者などへの攻撃で推計3億1640万ドル(約347億円)を奪ったとされる。

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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ひとこと解説 国連安保理決議が禁じた石炭の輸出や高級車の出荷などの例からも中国がぎりぎりのところで北朝鮮を支えている構図が浮かびます。このところ金正恩氏が「親中」姿勢を鮮明にしているのも、コロナ変異種に脅かされ、中国に生殺与奪の権を握られつつある証拠です。「第2の苦難の行軍」を宣言した北朝鮮の体制が食糧難で崩壊する展開も考えられません。国が貧しくなって通常兵器や訓練に頼れなくなるほど核兵器に傾斜していきます。2017年秋のように米中連携で圧力をかけなければ核問題は動かないでしょう。

2021年8月6日 11:50いいね
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