中国、アフガンにらみ軍事演習

中国、アフガンにらみ軍事演習 ロ軍も参加 合計1万人
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『【北京=羽田野主】中国がアフガニスタンからの米軍撤収に向けた備えを本格化している。アフガンのイスラム過激派が国内に流入する事態を警戒し、9日からロシア軍と合同で対テロの軍事演習を実施する。アフガン情勢が悪化すれば中国の広域経済圏「一帯一路」に影響しかねず、中国は難しい対応を迫られる。

軍事演習は「西部・合同2021」と名付けた。内陸の寧夏回族自治区の陸軍基地で一部訓練をすでに開始し、9~13日に本格演習を実施する。中国国防省の呉謙報道官は7月29日の記者会見で「テロ合同掃討作戦などの能力向上をめざす」と強調した。演習は新疆ウイグル自治区やチベットを管轄し、アフガンとの国境沿いを担当する人民解放軍の西部戦区が担う。

ロシア軍が参加するのは、対米関係が悪化するなかで「蜜月関係」を確認するためでもある。軍事演習に先立ち、中国の魏鳳和国務委員兼国防相は7月28日にタジキスタンの首都ドゥシャンベでロシアのショイグ国防相と会談。テロリズムの合同取り締まりで連携する方針を確認した。

中国は米軍が8月末までとするアフガン撤収によって治安が悪化し、中国国外を拠点とするウイグル独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」が新疆ウイグルに侵入する事態を懸念している。中国は国内で起きた漢族とウイグル族との衝突の多くを「暴力テロ事件」と位置づけ、ETIMが関与したとみなしてきた。

中国国防省の呉報道官は7月29日に「米国はアフガン情勢に責任があり、逃げ出して重荷を地域各国に押しつけるな」と批判した。新疆ウイグルとアフガンは70キロメートル以上にわたって国境を接している。中国は米軍のアフガン駐留を批判してきたが、いざ撤収となると過激派の侵入に備えてこれまで以上に厳重警備が求められることになる。

中国はイスラム過激派の流入に神経をとがらせている(1月、新疆ウイグル自治区の国境周辺で演習する人民解放軍)=AP

習近平(シー・ジンピン)指導部は西部戦区のてこ入れを始めた。中国国営メディアによると、西部戦区のトップである司令官に同戦区の陸軍司令官だった徐起零氏が7月までに昇格した。

徐氏は2020年にインドとの国境地帯で起きた紛争を指揮して中印ともに死傷者を出した「強硬派」とも目される人物だ。習氏は7月、徐氏を軍階級で最高位の上将に任命した。西部戦区の士気を高める狙いとみられる。

アフガンでは反政府武装勢力タリバンが攻勢にでており、周辺国の過激派が刺激を受けて中央アジアなど一帯一路圏の関係国が不安定になるリスクも高まっている。

パキスタンでは中国人が襲撃される事件が立て続けに起きている。7月14日には北西部で水力発電所の建設現場に向かうバスが爆発し、中国人9人が死亡した。28日にはカラチで中国人の車が襲撃された。

米欧との関係が悪化する習指導部にとって、中央アジアやパキスタンは戦略的要衝の地だ。過激派の活動が拡大すれば中国の後背地が揺らぎかねないとみている。

中国はタリバンがアフガン全土を掌握する事態も想定して関係の強化に動いている。

7月28日に中国・天津で王毅(ワン・イー)国務委員兼外相はタリバンの幹部バラダル師と会談した。

王氏は「ETIMなどあらゆるテロ組織と完全に一線を画し、断固として効果的に取り締まることを希望する」と伝えた。ETIMがタリバンと連携する事態を警戒し、タリバン側をけん制した。バラダル師は「中国がアフガン再建と経済発展でより大きな役割を果たすことを期待する」と語った。中国の経済支援や投資を求めたとみられる。

アフガン情勢の流動化によって中国の財政や人的負担が高まるのは確実だ。米国や欧州、インドなどと関係が悪化する習指導部にとって頭痛の種が一つ増えることになる。』