「略奪的な中国に制裁強化を」

「略奪的な中国に制裁強化を」 トランプ政権高官に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04F8J0U1A800C2000000/

『ハイテク企業を巡る米中対立が激しさを増している。中国は7月下旬の米中高官協議で華為技術(ファーウェイ)への制裁解除を求めたが、バイデン政権は強硬姿勢を崩さない。トランプ前政権の商務省で輸出規制を担う責任者を務め、数々の対中強硬策を立案したナザク・ニカクタル氏に聞いた。

――バイデン政権は中国のハイテク企業への禁輸措置を拡大するなどトランプ前政権の政策を維持・強化しています。現政権の半年の対中政策をどうみていますか。

「とても前向きにとらえている。我々(共和党政権の高官)はバイデン政権に交代したとき、トランプ政権以前(の穏健な対中政策)に戻るのではないかと、少し悲観的だった。さらに政策を強化してほしい。中国の言動や脅しは一段と攻撃的になっており、台湾周辺での軍事活動の拡大など実際に具体的な行動に移しているからだ」

――バイデン政権は、トランプ前政権が中国との貿易交渉で結んだ「第1段階の合意」を現時点で引き継いでいます。対中制裁関税を維持すべきですか。

「制裁関税を課す理由となった知的財産権の侵害はいまも続く。関税が不十分で、中国に大きな影響を及ぼしていない。中国政府は関税の打撃を避けるため補助金支給などで対応している。関税を引き上げたり(米国の輸入者ではなく)外国の輸出会社に関税を払わせたりすべきだ。現行法でできる」

――トランプ前政権は中国企業に相次いで禁輸措置を課しました。バイデン政権高官は「米国の単独行動では効果が乏しい。同盟国と協調すべきだ」と主張しています。この批判にどう応えますか。

「ファーウェイに関しては多くの誤解がある。制裁はファーウェイ(の成長)を抑え込むためではない。イランに関する米国の制裁に違反したのが原因だ。ファーウェイの制裁は政治化すべきではない」

「当時、同盟国から内々に支持を得ていた。ただ米国と行動をともにする同盟国はなかった。我々の唯一の選択肢は先行して行動し、同盟国が追随するか見極めることだった。そして今、同盟国は追随している」

「米国が行動しなかったら、事態は悪化していた。いじめには誰か1人が立ち上がらないと。国際協調と言うのは簡単だが、実際は他国が準備できていない。同盟国が同調できる前であっても、自国を守るためにやるべきことをやるのが政府の義務だ」

――米国企業は輸出規制によって中国市場で他国企業にシェアを奪われるのを懸念しています。安全保障と企業の競争力維持をどうバランスさせるべきですか。

「ある国が特定の企業に輸出規制を課したら、他の同盟国も対象企業に輸出を増やさないという信頼がある。我々は定期的に同盟国と意見を擦り合わせていた」

「強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)を築く上でも同じ協調が必要だ。供給網を交渉材料に使うような敵対国とは組みたくない。政府で私の役目は米国企業を損なわずに安保を維持すること。実際に同盟国が(米企業のシェアを奪って)米国を損なうようなことはなかった」

――商務省は2018年8月に成立した米国防権限法で新興技術や基盤技術の輸出規制を求められました。議会には「想定通りに進んでいない」との不満がありますが、規制を進めるべきですか。

「過去20年の中国の技術成長は、米政府が認めてきた重要技術の輸出が促した。中国の成長による脅威は後戻りできない水準まで来てしまった。ロボットや遺伝子、人工知能(AI)など危険な技術を内製化した。米国が速やかに行動しなければ、中国は米国や同盟国を衰退させるために技術開発を加速するだろう」

「新興技術は商用化されていないものが多い。輸出規制は(中国を抑え込む)テコに使える。米国や同盟国が新興技術から恩恵を受けられるようにできる。同盟国と協調してイノベーションを共有することが必要だ」

――米議会は半導体生産に巨額の補助金を投じる法案を審議しています。米国は中国の補助金を問題視してきましたが、米国が同じ政策をとることはどう考えますか。

「米国産業を空洞化させ、国際ルールを守らない中国と貿易を続けるのであれば、我々も中国と競うために中国のような(政府がお金を出す)産業政策が必要だ。米国には資本配分を自由市場に任せるべきだという『反・産業政策』の考え方があるが、率直にいって米国の成長を遅らせている」

「知財侵害など中国の略奪的な競争から米国産業を守る政策を組み込んだ産業政策であれば大きな変化をもたらす。それがなければ税金の無駄遣いになる」

――半導体補助金を担当するのは商務省です。同省が「産業政策」を担えますか。

「米国にとっては初めてのことで、政府内に『産業政策』を担える人物は1人もいない。合理的な国と競争するのであれば産業政策は効果的だが、中国は違う。他国を追い抜くために攻撃的な戦略で経済を統制するのが中国だ。この現実を認識し、米国と同盟国の国益を損なう非市場経済国と、我々は経済関係を続ける余裕があるのか見極めるべきだ」

(聞き手はワシントン=鳳山太成)』