【中国ウォッチ】習主席批判、異例の公表

【中国ウォッチ】習主席批判、異例の公表 党内の個人独裁反対論に警告
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『中国でこのほど、習近平国家主席(共産党総書記)への権力集中を批判し、党内民主主義の重視を求める意見を習氏が「奇怪な議論」と非難した内部演説が初めて公表された。党内のこの種の意見対立が明らかにされるのは異例。最高指導者の厳しい発言を広めることで、習氏の個人独裁志向に反対する動きに警告する狙いがあるとみられる。(時事通信解説委員・西村哲也)

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◇党内民主重視は「奇怪な議論」

 党内統治強化に関する習氏の新しい論述集が党中央の党建設工作指導小組によってまとめられ、6月下旬に出版された。香港メディアなどによると、それに収録された2018年1月の演説で習氏は次のように語った。

 「党内統治の全面的厳格化が不断に進行するにつれて、党内で幾つかの雑音・騒音が生じてきた。『(習氏が総書記に就任してから)過去5年間、党の集中統一を強調してきたが、もう十分だ。これからは党内民主の発展に重点を置こう』と言う者もいるが、奇怪な議論だ。(そういう論者は)政治的立場があいまいで、頭がはっきりしていない者もいれば、自身が清廉でないため、何とかごまかして乗り切ろうという下心を持つ者もいる」。
 「党の集中統一」は「党内民主の発展」に反するものとして言及されている。習氏は公式に「党中央の核心、全党の核心」とされているので、「集中統一」が習氏個人への権力集中を指すのは明らかだ。それに反対する者は思想がおかしいか、腐敗していると習氏は決めつけている。

 演説は第19期党中央規律検査委員会の第2回総会(1月11~13日)で行われた。規律検査委は党員の不正を取り締まる「反腐敗闘争」の執行機関。汚職調査の実質的権限は警察や検察より大きく、これまでに失脚した党中央指導部メンバーら政界有力者はいずれも中央規律検査委に摘発・処分されてから、投獄されている。失脚するのは常に政権内の非主流派である。

 この総会は、国家主席の任期(2期10年)を撤廃して習氏の終身支配を可能にした憲法改正の直前に開かれた。党の最高指導機関である中央委員会は同18~19日の総会で改憲案を決定。それに沿って、国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月11日、憲法を改正した。習氏は1月の演説で反腐敗闘争の刃(やいば)をちらつかせて、改憲反対論を抑え込んだのだろう。

◇「党の指導否定」と決めつけ

 実は「奇怪な議論」という言葉は中央規律検査委第2回総会の閉幕から2日後(同15日)に同委員会機関紙の論評で使われていたが、習氏の演説からの引用であることは伏せられていた。論評は以下のように指摘した。

一、過去5年間は管理が厳し過ぎたので、もう緩めるべきだと考える者、党内統治を全面的に厳格化すれば、幹部がやるべきことをやらないようになって経済発展に影響すると考える者、反腐敗は権力闘争だと考える者がいる。

一、(思想や倫理に問題がある者より)もっと重大なのは、党内統治の全面的厳格化をほしいままに歪曲(わいきょく)し、悪いことであるかのように言う人々がいることであり、その最終目的は中国共産党の指導を否定することだ。

 中央規律検査委の機関誌(月2回発行)が18年第3号に掲載した「いかなる時でも党の集中統一指導を強調しよう」と題する論文にも「奇怪な議論」が登場。その実例として、「民主集中制を曲解して、民主と集中を引き裂き、さらには対立させて、党の集中統一指導に対してとやかく言う者」を挙げていた。

 論文は党内統治について、「集中」偏重による独断専行の危険性に触れつつも、「極端な民主化や無政府主義」を強く警戒。「強固な指導核心がなければ(党は)ばらばらの砂になるしかなく、統一的意志と統一的行動がなければ、偉大な勝利を手にすることは全く不可能だ」と強調した。

 いずれの指摘も習氏の発言に基づいていたとみられる。

◇反対勢力を徹底粛清へ

 これら一連の批判は長年続く反腐敗闘争の歴史の中でも異例の激しさで、習氏の強引な権力基盤固めに対する党内の反発が当時いかに強かったかが分かる。
 それから3年以上たって、党中央は「奇怪な議論」批判が習氏自身の考えであることを明らかにした。党内でこうした議論がいまだになくなっていないということだろう。
 習氏の論述集出版と同時期の6月25日、中央規律検査委の機関紙は習氏を党の核心として擁護し、「党の集中統一指導」を堅持するよう呼び掛ける評論員論文を掲げ、その中で「偽の忠誠を示す両面派、両面のある者(言動に裏表のある勢力や人)を断固として取り除く」必要性を強調。7月9日の評論員論文でも党に対する忠誠がいかに大切かを指摘した上で、「獅子身中の虫を除去せよ」「刀の刃を内に向け、内部の裏切り者を一掃せよ」と訴えた。
 習氏としては、来年後半に開かれる見通しの第20回党大会で個人独裁体制を完成させるため、反腐敗闘争で反対勢力を徹底的に粛清し、異論を封じ込める決意のようだ。』