[FT]パキスタン 待ちわびる米大統領から首相への電話

[FT]パキスタン 待ちわびる米大統領から首相への電話
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『米軍の撤収を受けて反政府武装組織タリバンがアフガニスタンを支配するのを食い止めるべく米政府が助力を求めるなか、パキスタンの国家安全保障担当補佐官がバイデン米大統領からカーン首相に連絡が来ないことに不満の意を表した。

パキスタンのユスフ首相補佐官(左から2人目)は、米国の「冷遇」に不満を表明した=AP
タリバンが米軍撤収で大胆になり、アフガン全域で容赦ない攻撃に出て支配地域を拡大するさなかに、米政府は冷ややかな対応を見せる。ガニ大統領率いるアフガン政府は、地域における戦略的利益を確保するためにタリバンを支援しているとして公然とパキスタンを批判している。

バイデン氏就任から半年以上過ぎたが
米政府は近年、タリバン幹部を交渉のテーブルに着かせ、米兵が襲撃を受けずに引き揚げられるようにするための合意を得るうえで、パキスタンの協力に頼っていた。だが、カーン氏が和平のパートナーとなり、アフガン問題以外でも米パキスタン関係の拡大を望む意向を示しているにもかかわらず、バイデン氏は1月の就任後、まだカーン氏に電話していない。

「アメリカ合衆国大統領は、アフガンの諸問題において、いくつかの形で成否の鍵を握る存在と米国自身が言っている重要な国の首相と話をしていない。理解に苦しむシグナルだ。そうだろう」。パキスタンのユスフ首相補佐官(国家安全保障担当)は、米ワシントンのパキスタン大使館でフィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。

「毎回(電話は)あると言われてきたのに、技術的な問題だのなんだのと……。率直に言って、みんな信じていない」

「電話することが譲歩であるのなら、安全保障関係が譲歩であるのなら、パキスタンには選択肢がある」とユスフ氏は付け加えたが、詳しいことは明かさなかった。

パキスタンは「鉄の兄弟」である中国と深い絆で結ばれ、中国側は広域経済圏構想「一帯一路」の一環としてインフラ構築に巨額の投資をしている。

バイデン政権の高官はこう語った。「バイデン大統領がまだ直接話せていない指導者は世界にまだまだいる。大統領は、しかるべき時期にカーン首相と話すことを待ち望んでいる」

故ウサマ・ビンラディン容疑者が結成した国際テロ組織アルカイダがニューヨークの世界貿易センタービルを攻撃した2001年の米同時テロを発端とする「テロとの戦い」における協力の後、後退に転じた米パキスタン関係に外交上の侮辱という問題が加わった形だ。

米国は04年、アフガンでの戦闘に支援を必要とするなかでパキスタンを「非北大西洋条約機構(NATO)主要同盟国」に指定した。だが、その後の米歴代政権は、タリバンの戦闘員をかくまっているとしてパキスタンを非難している。パキスタン側は事実関係を否定している。

トランプ前大統領は軍事援助を打ち切り
米国は「うそと偽りばかり」とパキスタンを非難したトランプ前大統領の下で、同国への20億ドル(約2200億円)の軍事援助を打ち切った。だがトランプ氏は、パキスタンの協力に頼ってタリバンと合意を交わした後、カーン氏をホワイトハウスに招いた。

ユスフ補佐官はパキスタンの情報機関、3軍統合情報部(ISI)のトップを含む代表団の一員として、アフガン危機について協議するためにワシントン入りした。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)との先週の協議について知る関係筋は、アフガンに関する話し合いは「厳しい」ものだったが、政治的な解決が米パキスタン関係の劇的な改善につながりうると話した。だが地域情勢の専門家は、タリバンが戦果をあげているなかで政治的解決の可能性は薄いとみている。

「(解決への交渉)プロセスをもっと意味のあるものにしようとするかなりの努力が進められている」と関係筋は話した。「我々の利益が本当に一致しているとも言えそうな局面を迎えているが、次にどうしたいのかという彼らの見極め次第だ」

ワシントンの専門家の間には、カーン氏は強力な情報機関と軍の操り人形とみなされて冷たくあしらわれているとの見方もある。

ユスフ氏は「パキスタンの文民政府と軍の分離に疑いの余地はない。首相が指示したのでなければ、私と代表団がここにいるはずがないと断言できる」と話し、タリバンに対するパキスタンの影響力は弱くなったと付け加えた。

代表団の訪問中、米公共放送PBSがカーン氏のインタビューを放映した。その中で同氏は、米国はアフガンで「実にひどい失敗をした」と指摘し、米政府はパキスタンを「殺し屋のように」扱ったと語っている。このところ米国内に向けた批判的な報道が相次いでおり、パキスタンが関係立て直しを図るさなかの奇妙なタイミングに一部の米政府当局者は首をかしげている。

ユスフ氏はサリバン氏との協議について「建設的」だったと語る一方、逆効果になっているのであればメディアへの露出について「見直す」と話した。「動揺を引き起こすことではなく、状況に対するパキスタン側の見方をごく率直に示すこと」が目的だと説明している。

By Katrina Manson

(2021年8月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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