EV基幹装置で主導権争い 異業種参入

EV基幹装置で主導権争い 異業種参入、勢力図一変も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC315N20R30C21A5000000/

『自動車メーカーが電気自動車(EV)の心臓部の動力装置を部品会社から一括調達する動きが出てきた。動力装置は産業ピラミッドの頂点に立つ車メーカーが自ら開発・製造するというエンジン車時代の枠組みが崩れ、EV部品にシフトする既存の部品大手や新規参入企業の商機が膨らむ。EVが世界で普及期に入るなか、基幹部品を軸に業界の勢力図が変わる可能性がある。

外部調達が始まったのは、モーターやギアを一体化した動力装置「eアクスル」。EVの航続距離や走行性能に直結する。車大手はEVの動力装置でも内製を軸とし車づくりの主導権を譲らない構えだが、内製が唯一の選択肢ではなくなっている。

韓国の現代自動車グループは2023年から生産する小型EVの動力装置を米部品大手ボルグワーナーから調達する。欧州ステランティス傘下のプジョーは小型EV用に、独部品大手コンチネンタルから独立したヴィテスコ・テクノロジーズから調達している。

動力装置はEVの生産原価の5~10%を占めるとされる。外部調達で部品会社にとって新市場が生まれる。エンジン部品の供給などで従来の車を支えてきた部品会社が商機を見いだしている。

日産自動車系の変速機メーカー、ジヤトコは25年までにeアクスルの量産を始める。日産など国内外のEVメーカーに販売する。旧カルソニックカンセイがイタリア企業と経営統合したマレリは25年に年100万基の供給をめざす。

内製、既存の部品会社に続く第3勢力といえるのが、EV化を機に車ビジネスの拡大を狙う日本電産のような企業だ。EV化で先行した中国にeアクスル工場を設け、広州汽車集団や吉利汽車に供給を始めている。

動力装置の市場は拡大する見通し。英調査会社LMCオートモーティブによると20年の世界のEV販売は新車全体の3%の214万台だった。30年には2330万台と比率は24%に上がる。富士経済はeアクスルの35年の市場規模を年約1250万基と予測する。

マレリは24年までに中国とフランスに工場を設け、eアクスルを量産する
先に外部調達が進んだのは電池だ。中国の寧徳時代新能源科技(CATL)、韓国LG化学、パナソニック、韓国サムスンSDIで75%の世界シェアを占める。電池はEVの原価の3~5割を占めるとされ、EV市場での取り分は大きい。

EVには米アップルなど異業種の参入も取り沙汰される。eアクスルを使うと難易度が高い動力装置の開発負担が減り、新興勢力がEV市場に参入しやすくなる。

EVでは従来の垂直統合型の車づくりへの対抗軸として、パソコンなどのように開発と生産を別々の企業が担う水平分業型の企業連携が広がる見通し。電子機器の受託生産大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は車の受託生産に進出する。

水平分業の動きはeアクスルを開発する企業に従来の車メーカー以外の取引先をもたらす可能性がある。eアクスルで業界標準となる製品を生み出せれば、成長するEV市場で高いシェアを獲得できる。

【関連記事】

・EU、35年にガソリン車販売禁止 50年排出ゼロへ包括案
・日本電産、鴻海とEVで合弁 「車」核に売上高4兆円へ
・欧米車10社、EV比率5割に 30年の世界販売
・独メルセデス、30年にもEV専業に 5.2兆円投資
・マツダ、電動車「全方位」 投資重くEV時代の勝算見えず
この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

深尾三四郎のアバター
深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員

コメントメニュー
ひとこと解説 電池同様に製造ライフサイクルでの脱炭素化が競争力を左右する。
スマホ・タブレットやPCで成功したメーカーがEVに参入している。CATLはiPad向け電池で成功したTDKの子会社ATLの車載電池部隊から誕生。HDDに搭載される精密小型モーターや家電向け中型モーターで成長した日本電産は、車向けモーターにインバーターとギアを一体化させてeアクスルを開発した。スマホやPCのように水平分業ビジネスを展開するメーカーは規模の経済性を獲得するまで赤字を承知でシェア拡大を急ぐ。今後はCO2排出量が多いeアクスルの鋳造部品の脱炭素化が競争力を左右する。再エネが豊富な欧州のメーカーが地の利を活かして攻勢をかける。
2021年8月3日 7:38いいね
1 』