ミャンマー問題、特使決定急ぐ

ミャンマー問題、特使決定急ぐ ASEAN外相会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM014EL0R00C21A8000000/

『【ヤンゴン=新田裕一、シンガポール=中野貴司】東南アジア諸国連合(ASEAN)は2日、オンライン形式で外相会議を開いた。特使の早期派遣を協議するなど、国軍による市民への弾圧がやまないミャンマー問題で打開を目指した。ただ、国軍が民主派との対話に応じる兆しはなく、ASEANが今後影響力を発揮できる可能性も限られる見通しだ。国軍が主導権を握る状態が続けば、ASEANの存在意義が問われることになる。

会議は当初予定の2時間を大幅に超過し、5時間に及んだ。ASEANは4月下旬に、インドネシアの首都ジャカルタでミャンマー情勢を話し合う臨時の首脳会議を開き、暴力の即時停止や特使の派遣など5項目で合意していた。インドネシアのルトノ外相によると、2日の外相会議では多くの時間をこの5項目の協議に費やし、ルトノ氏はミャンマーにASEANが提案する特使案を受け入れるよう訴えた。

ロイター通信によると、ブルネイのエルワン第2外相を特使とする案に加盟国の支持が集まった。ミャンマー側の5項目についての発言内容は明らかになっていない。

ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍総司令官は2月のクーデターから半年の節目となる1日の演説で、ASEANの特使について「対話の用意がある」と述べ、受け入れる姿勢を示した。一方で、5項目の合意について「我々が行うべきことは既に行った」と主張した。「(ASEAN側から示された)3人の特使候補からタイのウィラサック元外務副大臣を選んだが、その後で新たな提案が示され前に進めなくなった」とも述べた。

国軍が受け入れ姿勢を見せたのを受け、ASEANは2日の外相会議で特使の決定など、これまで進展が乏しかった事態の前進を目指した。国軍側の同意も得た上で、特使を早期にミャンマーに派遣したい考えだ。複数の外交筋によると、ASEANは特使の派遣にあたり、クーデターで身柄を拘束された民主化指導者のアウン・サン・スー・チー氏との面会を求めており、国軍と民主派の対話の橋渡し役となることを目指す。

ただ、国軍が特使訪問を支配の既成事実化に利用する恐れもある。9月中旬には国連総会が開幕する予定だ。ある外交筋は「国連総会までにASEAN特使の人選を固められなければ、国軍は非難をかわせなくなる」と指摘する。逆に特使が決まれば、国際社会は一旦その成果を待つことになる。

仮に特使派遣が実現しても、短期間で成果を上げるのは難しい。シンガポール元外務次官のビラハリ・カウシカン氏は「現状では国軍がASEANを含む他国からの説得に応じる可能性は乏しく、どんな外交努力もうまくいかない」と事態打開の難しさを指摘する。

ASEANは軍事政権下の06年3月にも、当時のマレーシアのサイドハミド外相を特使としてミャンマーに派遣したことがある。03年にスー・チー氏が3度目の自宅軟禁処分を受け、欧米が軍事政権への制裁を強めていた時期だ。だがASEAN特使はスー・チー氏にも軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長とも面会できなかった。今回も国軍が特使とスー・チー氏との面会を拒否する懸念がある。

これまで5項目が実現しなかった背景には、ASEAN加盟国間の意見の隔たりが続いてきたこともある。インドネシアやシンガポールなどがミャンマー問題の解決に積極的に関与する立場である一方で、タイやベトナムなどは慎重な姿勢だ。ASEANは内政不干渉を原則とすることもあり、5項目には一部加盟国が求めていたスー・チー氏らの解放は盛り込まれなかった。

外相会議では、中国と一部加盟国が領有権を争う南シナ海問題も議題となった。中国が軍事拠点化を進める南シナ海の現状について、インドネシアが懸念を示し、同様の懸念を示す国も出たもようだ。中国との成文化交渉を再開した紛争防止に向けた行動規範(COC)の進捗状況も確認したとみられる。

ASEANのオンライン形式の関連会議は6日まで開かれる。4日には日中韓、米国、ロシアなどが加わる東アジア首脳会議(EAS)参加国の外相会議が、6日には北朝鮮などもメンバーのASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議が予定されている。一連の日程終了後の7日に議長国ブルネイのエルワン第2外相が記者会見する。』