カナダ、下院で台湾関係強化へ法案

カナダ、下院で台湾関係強化へ法案 対中は一段悪化も
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『【ニューヨーク=白岩ひおな】カナダ下院が台湾との関係強化に向けた法案の審議を始め、中国へのけん制を強めている。法案は台湾の出先機関を格上げし、国際機関への台湾の参加も支持する内容だ。9月以降、法案の本格的な討議に進む見通しで、中国との一段の関係悪化につながりそうだ。

野党・保守党のマイケル・クーパー議員が提出した「カナダ・台湾関係枠組み法案」は下院での趣旨説明を6月中旬に終えている。非平和的な手段や禁輸などで「台湾の未来を決定しようとするいかなる試みも、インド太平洋地域の平和と安全への脅威でありカナダにとっての重大な懸念とみなす」と明記した。

台湾の出先機関である駐カナダ台北経済文化代表処の名称を「台湾代表部」に変更し、台湾政府高官のカナダ訪問時のビザ取得を免除する方針を盛り込んだ。世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)などの国際機関への台湾の参加も支持するとした。

クーパー氏は同法案が、中国大陸と台湾が一つの国に属するとする「一つの中国」政策とは矛盾しないと主張する。カナダと台湾の交流を「より前進させるべき時だ」とし、法案を通じて経済、文化、法律などの関係を強化するための「秩序あるメカニズム」を確立するとした。

カナダは人権問題をめぐり中国との摩擦を抱える。2018年12月、カナダ当局は中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)をバンクーバーの空港で拘束した。米国は19年にイランとの違法な金融取引について英金融大手HSBCなどに虚偽の説明をした罪などで孟氏を起訴し、カナダに孟氏の身柄引き渡しを要請している。

その直後、中国は元外交官のマイケル・コブリグ氏と企業家のマイケル・スパバ氏の2人のカナダ人を拘束した。孟氏逮捕に対する報復とみられており、カナダは「恣意的な拘束」だとして解放を求めているが、中国は応じていない。

ファーウェイ幹部の米国身柄引き渡しをめぐる裁判は4日からカナダで最終審理に入る。孟氏の弁護団はHSBCから入手した新たな文書が身柄引き渡しの根拠を覆すものだと主張していたが、ブリティッシュコロンビア州上級裁判所は7月、証拠としての申請を却下した。

新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での民主派排除をめぐっても、中国とカナダは対立してきた。3月には米英や欧州連合(EU)とともにウイグル族への人権侵害に絡んで中国当局者らに制裁を科した。20年10月には中国の叢培武駐カナダ大使が、カナダに香港のデモ参加者を受け入れないよう警告。トルドー首相が「中国の強制的な外交は容認できない」と反発し、香港出身者への就労許可に道を開いた。

中国をめぐる一連の動きは、より強硬な対中政策を求めるカナダ国内の世論を意識したものとの見方もある。カナダは年内にも総選挙を見込む。対中強硬派として知られる保守党のエリン・オトゥール党首は、与党・自由党のトルドー首相の対中政策の甘さを指摘してきた。自由党は19年10月の総選挙で単独過半数を取れていない。台湾や香港、ウイグル問題をやり玉にあげ、国内世論にアピールする可能性もある。』