アルゼンチン外相、域内国からの保護主義批判に反論

アルゼンチン外相、域内国からの保護主義批判に反論
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN102BN0Q1A610C2000000/

『発足合意から30周年を迎えた南米4カ国の関税同盟「南米南部共同市場」(メルコスル)は加盟国間の対立で機能不全に陥っている。ブラジルやウルグアイはアルゼンチンの保護主義的な姿勢が主な原因だと批判する。アルゼンチンのフェリペ・ソラ外相は日本経済新聞の書面インタビューに応じ、こうした意見に反論した。一問一答は以下の通り。

――アルゼンチンの保護主義的な姿勢にメルコスル加盟国から批判が出ています。

「批判には同意しかねる。アルゼンチンは野心的な貿易交渉課題に取り組んでいる貿易圏の一員であり、現在、36カ国と交渉を行っている。これらの交渉においてアルゼンチンはいくつもの場面で中心的な役割を果たしてきた」

「論点はアルゼンチンが保護主義的であるかどうかではない。生産面での各国・貿易圏の戦略的利益を定義することが重要だ。我々の関心はメルコスルの対外的な影響力を強化するために世界とつながり、雇用と経済活動を維持しながら海外市場への参入を果たすことだ」

――メルコスルの課題についてどのように考えていますか。

「関税同盟として機能するために議論が本格化している。加盟国の合意の下、全体的な見直しに取り組む必要がある。経済の競争力を高め、生産的発展の手段として役立つものでないといけない」

「メルコスルは30年前、経済的な非対称性が顕著な発展途上国によって設立された。一部の分野では満足のいく一致を得たが、ほかの分野では規模や競争力の面で無視できない差が残っている」

――2019年にアルゼンチンで政権交代が起きたことで、改革が遅れているとの指摘があります。

「一部の加盟国がブレーキをかけているためにメルコスルが前進していないという見方を共有することはできない。アルゼンチン政府は前政権が締結した自由貿易協定(FTA)を維持しており、交渉についても引き継いだ形で進めている」

――ウルグアイやブラジルはメルコスルに縛られずに、個別に通商協定を締結したいと望んでいます。

「この問題は、加盟国が表明する見解を超えている。共通通商政策はメルコスルの根幹をなすものだ。不確実性の高い国際情勢の中で、アルゼンチンはメルコスルの制度的な安定性を重視している」

「現在の通商交渉で期待された結果が得られていないことを無視しているわけではないが、メルコスルが一丸となって協力し続けることが必要だと考えている」』

南米関税同盟30年、機能不全あらわに 意見対立も表面化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26EQS0W1A520C2000000/

『【サンパウロ=外山尚之】ブラジルやアルゼンチンなど南米4カ国による関税同盟「南米南部共同市場」(メルコスル)が加盟国間の対立で機能不全に陥っている。欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)も環境問題を巡って停滞しており、発足合意から30周年を迎えたメルコスルの存在意義が改めて問われている。

加盟国の一つ、ウルグアイのラカジェポー大統領は7月、同国がメルコスル域外の国と2国間貿易協定の交渉を始めると宣言した。メルコスルの規定では他国の合意を得ない個別交渉は禁じられており、ウルグアイは「抜け駆け」した格好だ。同大統領は「世界は我々を待ってくれない。だからこそ、前に向かっていることを伝えたい」と述べた。

ウルグアイはこれまでも個別交渉を求めており、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は3月の首脳会合で、ウルグアイに対して「我々が重荷ならば、船から下りればよい」と言い放った。この結果、共同宣言も発表できない異例の事態となっていた。

メルコスルはブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイの4カ国で構成する。1991年に発足合意に関するアスンシオン条約に署名し、95年に発足した。域内総生産(GDP)で世界有数の規模を背景に、地域の経済統合を深め、関税同盟として他国とのFTA交渉を進めていくことを目指した。

しかし、域内統合や自由貿易網の構築は遅れている。域内経済をけん引するブラジルやアルゼンチンで政権交代が起きるたびに方針が二転三転し、十分な成果を出せていない。

EUとのFTA交渉も批准の見通しは立たない。オーストリアの連立政府の一角を占める緑の党は3月、アマゾン熱帯雨林保護に消極的なブラジル政府の態度を理由に、メルコスルとEUとのFTAを拒否する意向を示した。

フランス政府も環境保護を理由に、消極的な姿勢を崩していない。総選挙を控えるドイツでも環境保護への関心が高まっており、両者のFTA交渉が再開するめどは立っていない。

メルコスルが市場開放で遅れる姿は、加盟国の国際競争力の低下という形で表面化している。スイスのビジネススクールIMDの21年世界競争力ランキングでは、世界の主要国・地域の中で、ブラジルは57位、アルゼンチンは63位と下位に低迷している。加盟国内の対立が深まるなか、メルコスルが南米経済のけん引役になる日は遠いのが実情だ。』