ソフトバンクG、中国リスク鮮明

ソフトバンクG、中国リスク鮮明 滴滴株など下落
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB295K10Z20C21A7000000/

『ソフトバンクグループ(SBG)の投資戦略に逆風が吹いている。中国政府の自国IT(情報技術)企業に対する規制強化で、傘下の「ビジョン・ファンド」が投資する中国企業は株価が急落した。習近平(シー・ジンピン)指導部は独占的な地位を築いた有力企業への統制を強める。中国はSBGにとって重要な投資先だったが、戦略の見直しを迫られそうだ。

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6月末からの株価下落率をみると、ビジョン・ファンドが投資する配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)は4割、トラック配車アプリの満幇集団(フルトラック・アライアンス)が5割に達した。SBGが直接保有するアリババ集団も1割安とさえない。

株安のきっかけは7月上旬、中国政府が米国に上場する中国企業の締め付けに動いたことだ。滴滴や満幇は当局による調査の対象となった。その後も当局の規制がITプラットフォーム企業から教育産業に広がるなど締め付けが止まらず、市場の警戒が続く。ビジョン・ファンドが滴滴への投資で、数千億円規模の含み損を抱えているとの観測もある。

29日にはSBGが保有する米ライドシェア大手ウーバーテクノロジーズの計4500万株を売却することが明らかになった。直近の終値で計算すると売却額は約21億ドル(2300億円)に相当する。SBGは1月にもウーバー株を売却しており「滴滴の状況でウーバー株売却を決めたわけではない」(関係者)とされるが、中国関連企業の含み損を受けた対応との臆測も呼んだ。

SBGにとって中国は重要市場だ。2000年に投資したアリババは14年の上場を機に急成長し、一時は保有株の価値の大半を占めていた。21年3月末時点では43%まで低下したものの、それでも保有株の価値は約12兆7000億円に上る。

17年にスタートしたビジョン・ファンドでも中国の有力スタートアップの開拓に取り組んできた。未上場の投資先には動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)などがある。一般に企業価値は上場で大きく拡大するが、中国よりも投資家の層が厚い米国市場で上場した方が評価は膨らみやすい。中国企業の米国上場は不透明感が増しており、ファンドの運用成績にも響く可能性がある。

財務戦略にも影響を与える恐れがある。SBGは純有利子負債を保有株式価値の総額で割って算出する「負債カバー率(LTV)」を重視し、平時で25%未満、異常時でも35%未満に抑えるとしている。21年3月末時点では12%と低いものの、株式価値の減少はLTVの上昇を招く。SBGは保有するアリババ株を担保にローンを調達しているが、担保価値が減れば調達額も減少しかねない。

中国リスクの顕在化について、SBGの後藤芳光・最高財務責任者(CFO)は7月のNIKKEI Financialのイベントで「中国のカントリーリスクを乗り越えないといけない」として、投資戦略を直ちに見直すことはないとしていた。もっとも、中国を巡っては経済成長の鈍化も指摘される。今後は欧米への分散なども選択肢となりそうだ。』