[FT]ロシア、タリバンと関係構築狙う

[FT]ロシア、タリバンと関係構築狙う 米軍アフガン撤退で
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『米軍のアフガニスタン撤退が生む安全保障上の空白にロシアが入り込もうとしている。プーチン大統領にとっては中央アジアで再び影響力を振るい、イスラム過激主義が国境を越えて波及するのを防ぐのが狙いだ。

ロシアは米軍がアフガニスタンから撤退するのを機に影響力を強化しようともくろむ=AP
アフガニスタンでは、勢いを取り戻した反政府武装勢力タリバンが前進を続け、米国は同国に平和をもたらすことができなかった20年間の軍事作戦を終える準備を進めている。そうした中、ロシアは先週、アフガニスタン政府が崩壊する事態から同盟国を守る軍事演習のために、タジキスタンとアフガニスタンの国境地帯に戦車を移動させた。

1989年のソ連の屈辱的なアフガン撤退とよく似ているにもかかわらず、米軍撤退に喝采を送ったロシアは、他国に先駆けて公然とタリバンと関与した国の一つだ。タリバンのことを活動を禁止されたテロ組織と見なしているにもかかわらず、和平交渉に弾みをつけるために2018年にタリバン代表団をロシアに迎え、それ以来、一連の協議を重ねてきた。

米スタンフォード大学国際安全保障協力センター(CISAC)のフェロー、アスファンディアル・ミール氏は「プーチン氏の作戦は、米国に恥をかかせることだ」と言う。「ロシアは自国の裏庭に米国の支援を受けた政権が存在するのを望まない」

プーチン氏はむしろ、タリバンとの新たな関係に信頼を置き、それによって過激派組織「イスラム国」や国際テロ組織アルカイダからの脅威を封じ込めることを期待している。

プーチン大統領のアフガニスタン問題担当特使を務めるザミル・カブロフ氏は最近、より危険なジハード(聖戦)主義集団を一掃することになるため、タリバンの勢力拡大はロシアにとって安保上の恩恵になると評した。

「タリバンが支配権を握りつつあることには、プラスの側面がある。なぜか。それは、こうした(過激派)集団の大半は国内問題に集中しておらず、中央アジア、パキスタン、あるいはイランに目を向けているからだ」と先週語った。

リスクを伴うロシアの戦略


先週、別のラジオインタビューで米軍撤退がロシアにとって良いことかどうか問われると、「全体としては、良いことだ」と答えている。

だが、ロシアの政治学者で中央アジア専門家のアルカディ・ドゥブノフ氏は、この戦略にはリスクがあると指摘する。

「あからさまに1つの勢力に賭け、他の勢力の影響力を限定しようとするロシアの姿勢は、私には危険に思える。ぎこちなく、積年の恨みを晴らそうとする試みのように見える」
ロシアは、ソ連が10年にわたってアフガニスタンで繰り広げた紛争によって大きな傷を負った。後にタリバンへと分かれるムジャヒディン(イスラム聖戦士)が、士気が低下したソ連軍を撤退に追い込んだからだ。

別の地域専門家は、「ロシアとしては、(アフガニスタンで)大きな役割を担いたいが、1980年代の戦争と直接関係した役割は望んでいない」と話している。

プーチン氏にとっては、米軍撤退によって生まれた好機はアフガニスタンだけにとどまらない。というのもロシア政府は、ソ連時代に誇った力を取り戻し、ユーラシア大陸の大部分に安全を保証する国としての地位を再び確立したいと考えているからだ。

「これは、ロシアがアフガニスタンで平和的な統治に手を貸すというような話では全くない。アフガン情勢を考えると、潜在的な仮想の脅威に見舞われるロシアの友好国や同盟国が大半を占めている中央アジア諸国の安全保障を担保するための対策だ」とドゥブノフ氏は語る。

そして「すべてがイメージの問題であり、彼らの安全を保証できるのはロシアだけだということを中央アジアのパートナーたちに納得してもらうことだ」と続けた。

西側諸国が戻るのを阻止へ

さらに、究極の目標は、米国やその他の西側勢力が再度この地域に戻ってくるのを阻止することだと付け加え、「ロシアがやっているその他すべてのことは、ただの見せかけだけの行為だ」と話している。

その一環としてロシアは繰り返し、ロシアのほかにアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスが参加するユーラシア経済同盟や、これら5カ国にタジキスタンを加えた軍事ブロックの集団安全保障条約機構(CSTO)など、自国が支配している枠組みで協議を呼び掛けてきた。

だが、それでもやはり、ロシアにとってはリスクがある。シンクタンク、カーネギー財団モスクワセンターのドミトリー・トレーニン所長は「悪化するアフガン情勢は、地域の安全を確保できることを証明しなければならないCSTOにとって重大な試金石となる」との見方を示す。

さらに同氏は「ロシアも中央アジア諸国も、やむを得ずアフガン問題に介入する財源や人員、理由、願望を持たない。介入を余儀なくされることは完全な愚行だ」と付け加えた。
国際的な専門家の大半は内心では、米国の撤退後、完全にせよ部分的にせよ、タリバンがアフガニスタンの支配を取り戻す可能性があると考えている。

あるロシア外交筋は匿名を条件に本紙フィナンシャル・タイムズに「タリバンが9月までに首都カブールで権力を握ることを保証してもいい」と語った。「だが、タリバンは国を統治する方法を知らない。彼らのしきたりは13世紀から抜け出しておらず、大混乱する事態になるだろう」

パキスタンとも関係強めるロシア

1996年から2001年にかけてタリバンが前回アフガニスタンを支配した時には、イスラム法の厳格な解釈を強制し、恐ろしい人権侵害と、特に厳しい女性弾圧につながった。

タリバン政権は、01年9月11日の米同時テロを首謀したウサマ・ビンラディン容疑者のアルカイダを含むテロリストに隠れ家を提供し、その結果、20年間駐留することになる米軍主導の部隊によるアフガン侵攻を招いた。

ドゥブノフ氏は、今回ロシアはタリバンに国の統治方法について「助言」を与えることもできるかもしれないと話している。もっとも、これが奏功するかどうかは不透明だ。「こうした人たちは助言で教えることが難しく、お金をもらった方がはるかにいいと思っている。そしてロシアは、お金で支援する用意はない」と言う。

ロシアはまた、地域の有力国で、特殊部隊がタリバンと密な結びつきを持つパキスタンとも関係を深めている。

パキスタンは「核兵器を持ち、中国と緊密な協力関係にあるため、ロシア政府はもっと大きな関心を払うべきだ」とトレーニン氏は言う。だが、ロシア政府としては、パキスタンのライバルであるインドを怒らせないように、難しい綱渡りをしなければならないと付け加える。

また、インド・ニューデリーのシンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団の幹部ハーシュ・パント氏によると、撤退が差し迫っているにもかかわらず、米国はアフガニスタンの運命について完全に無力なわけではない。

「このアフガニスタンのゲームに参加しているすべての国は、米国が次にやることを待っている」。パント氏はこう話し、「米国にはまだ多くのカードがある」と付け加えた。

By Nastassia Astrasheuskaya and Stephanie Findlay

(2021年7月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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