ペルー、経済開放路線が岐路に

ペルー、経済開放路線が岐路に 左派大統領が就任
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『【ニューヨーク=外山尚之】南米ペルーで28日、急進左派のペドロ・カスティジョ氏が大統領に就任する。自由貿易網を世界に張り巡らせ、経済の対外開放を推進してきたペルーの政策路線は岐路に立った。金融市場や進出企業は急激な政策転換を懸念している。

カスティジョ氏は6月の大統領選挙でフジモリ元大統領の長女、ケイコ・フジモリ氏に勝利した。任期は5年。就任式の前夜になっても主要閣僚の人事を公表せず、経済界は気をもんでいる。

注目されるのは新政権の自由貿易協定(FTA)に対する態度だ。カスティジョ氏は選挙期間中、国内農家を保護するため農作物の輸入制限に言及した。ペルーの歴代政権が継承してきた開放経済路線に疑問を呈する姿勢を度々見せた。カスティジョ氏の所属する政党ペルー・リブレはFTAそのものに反対する。

ペルー政府は21日に環太平洋経済連携協定(TPP)の国内の承認手続きを終えたばかり。政権末期の駆け込みでの批准に対し、カスティジョ氏は賛否を表明していない。「TPPに反対するようであれば今後の投資にも影響する」(進出日系企業幹部)と、経済界は政権発足後の「ちゃぶ台返し」を警戒する。

急激な政策転換を懸念し、ペルーの通貨ソルは過去最安値圏で推移する。カスティジョ氏側にも市場の動揺を抑えようとする動きもみられる。

就任式にあたり、中南米の反米左派を代表する指導者であるボリビアのモラレス元大統領がペルーを訪れたが、カスティジョ氏は面会しなかった。23日には経済が崩壊状態のベネズエラを引き合いに「我々は共産主義者ではないし、過激主義者でもない」と述べた。経済界が嫌う反米イデオロギーと距離を置き、市場や経済界を安心させる思惑がありそうだ。

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の清水達也・ラテンアメリカ研究グループ長は「カスティジョ氏には政治経験がなく、外交政策で独自色を出す余力があるかは未知数だ」とみる。

世界有数の銅生産国として高成長を遂げたペルーだが、近年は成長が鈍った。カスティジョ氏は経済成長から取り残された国民の支持を集めて当選した。「小さな政府」路線からの転換は確実な情勢だが、天然資源やインフラ企業の国有化など、選挙で掲げた過激な政策にどこまで踏み込むかが今後の焦点になる。

ペルー議会は26日、新たな議長を選出したが、議席数で第1党になったペルー・リブレではなく、野党議員から選ばれた。少数与党の状況下、政策実現のためには議会との折衝も必要となる。

カスティジョ氏は大統領選で僅差で当選しただけに、支持基盤も盤石とは言えない。現実路線を採れば選挙で同氏に票を投じた農村の貧困層が失望する可能性もある。市場や国民の反応を見極めながら、慎重に政権運営に取り組む方針とみられる。 』