ベトナム、強まる言論統制

ベトナム、強まる言論統制 SNS「問題投稿」削除も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM148R70U1A710C2000000/

『ベトナム政府がSNS(交流サイト)を対象にした新たな規制の検討に入った。運営者に人気投稿者の個人情報を提供させるほか、「問題投稿」の削除も求める方針。これまで比較的自由に発言できたSNSへの締め付けは、新型コロナウイルスの感染抑え込みでもたつく政府のいらだちも見え隠れする。

「多くの個人や組織はソーシャルメディアを利用して報道活動を行い、ネット上でのストリーミングを通じて虚偽の情報を提供している」。情報通信省は7月初旬、新たな法令の草案内でこう訴え、「他の組織や個人の評判と尊厳を侮辱する」ネット上のコンテンツを規制する考えを示した。

草案では、SNSの運営者は1万人以上のフォロワーがいる投稿者の個人情報を提供する必要がある。そのうえで、当局などからの要請があれば24時間以内に「問題投稿」の削除を求める。国民からの意見を募った上で最終検討し、ファム・ミン・チン首相の署名後に施行される見通しだ。

情報通信省は6月末時点の利用者数がフェイスブックで約6500万人、ユーチューブは約6千万人、中国系のTikTok(ティックトック)は約2千万人と推定。「これらのプラットフォームはベトナムの法令を完全には順守していない」と批判する。

共産党一党支配が続くベトナムではマスメディアは政府の統制下にあり、政府批判は許されていない。それに対して、一般国民によるSNSを通じた政府への不満はそこまで厳しく規制されていなかった。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府が流行を抑え込めないことに国民のいらだちが募っている。そんななか、現地メディアはSNSでコロナに関する偽情報を流した人に罰則を科したケースを報じるようになった。「政府は自分たちに批判的な情報に神経質になっており、監視が強まっている」(地元記者)ようだ。

規制強化の裏には、SNS利用者に対する課税強化という狙いも透ける。政府はSNS上での商品やサービスの売買に対し、思うように税金を徴収できずにいる。ハノイを拠点とする政治アナリスト、ズオン・クオック・チン氏は「当局は数十億ドル(数千億円)分の税収を失っていることに不満を持っている」と指摘する。

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」による21年の世界各国・地域別の報道自由度ランキングでは、ベトナムは175位と全体でワースト6位。「違法」や「問題」の定義は曖昧で、要は当局のさじ加減次第だ。約1億人を抱える巨大市場だけに、SNS業者の苦悩は深まるばかりだ。

(ハノイ=大西智也)』