フィリピン大統領、対中配慮鮮明 施政方針演説

フィリピン大統領、対中配慮鮮明 施政方針演説
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM262NW0W1A720C2000000/

『【マニラ=志賀優一】フィリピンのドゥテルテ大統領が26日、施政方針演説に臨んだ。同国は米国の同盟国だが「すべての国と協力し効果的な連携を模索していく」と各国との等距離外交を主張。中国に対する融和的な発言が目立った。経済協力や新型コロナウイルスワクチンで中国に依存する中、対立する南シナ海の領有権問題で中国に強く出られない実情を映している。

来年6月に任期満了を迎えるドゥテルテ氏にとって今回が最後の施政方針演説となった。同氏は「フィリピンが大国の陰のもとに決断し行動を起こす日々は終わった」と述べ、米中など主要国とのバランス外交の必要性を強調した。

演説を通して浮き彫りになったのは中国への配慮だ。中国と領有権で争う南シナ海問題についても「中国と戦争をしたいというのか。中国のミサイルは5分や10分でフィリピンに到達する」と述べ、衝突を避ける立場を鮮明にした。

国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年7月に下した、中国の南シナ海に関する領有権の主張を否定する判決についても「本当の意味で仲裁というものはない」と強調。「我々は敵ではない。私は中国と友好な関係を維持した」と語った。

背景にはフィリピン経済における中国の圧倒的な存在感がある。比統計庁によると20年のフィリピンの輸出総額約640億㌦(約7兆円)のうち、中国と香港向けの合計は29.3%を占め日本(15.5%)や米国(15.2%)を上回る。ドゥテルテ氏が大統領に就任した16年から20年までの5年間で中国による直接投資はアキノ前政権下の10~15年に比べて12倍に増えた。

コロナワクチンでも対中依存を深めている。ドゥテルテ氏は演説で「最初に(コロナ対策の)協力を要請したのは中国だった」と明らかにした。「習近平(シー・ジンピン)国家主席へ『フィリピンはワクチン不足で接種計画がなく、ワクチン開発もできない』と伝えた。習氏は快諾し、中国からの寄付が決まった」とも語った。現在フィリピンが調達したコロナワクチンの6割程度は中国科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製が占める。

演説では軍事同盟を結んでいるはずの米国のアジアへの関与度の低さに対するいらだちの言葉も聞かれた。ドゥテルテ氏は「米国はフィリピンが攻撃を受ければ防衛するという。一方で他国との国境に関する紛争には関与しないとも声明を出している」と不満を漏らした。

フィリピンは米比同盟関係の土台である「訪問軍地位協定(VFA)」について、20年2月に一方的に破棄の方針を伝えた。米兵のフィリピン国内での法的地位を定めた取り決めで、破棄した場合は同盟自体の維持が困難となる重要な協定だが、同氏は現在のVFAでは中国に対応する上で不十分と考えているとみられる。

VFAは本来フィリピンにとって欠かせない協定だが、演説ではVFAの今後について明言を避けた。ドゥテルテ氏は近くフィリピンを訪れるオースティン米国防長官とこの問題を協議する見通しだ。』