[FT]南アフリカ暴動、アパルトヘイト後で最大規模

[FT]南アフリカ暴動、アパルトヘイト後で最大規模
損失14億ドル規模の地域も
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※ こんな「6輪装甲車」繰り出して、鎮圧しなければならない状況なんだから、大変な事態だ…。

『南アフリカ東部の都市ダーバン西郊のハマーズデイルは、同国の新たな物流拠点となるはずだった。しかし今月起きた暴動で襲撃された食肉用冷蔵倉庫の焼け跡では火がくすぶり続け、煙が立ち上っていた。

南アフリカでは略奪が横行し、軍が事態の収拾に乗り出した=ロイター
アパルトヘイト(人種隔離政策)後の民主政権下で最悪の略奪行為の後、盗まれなかった食肉は倉庫の中で腐りつつあった。

汚職疑惑を抱えるズマ前大統領が裁判所の調査に協力しなかったとして収監されたことに端を発した大規模な暴動は、長年同氏の支持基盤であるクワズール・ナタール州(KZN)で特に激しかった。軍が動員され暴動が収束するまでの一週間で、全国で330人以上が死亡した。

ハマーズデイルほど経済への影響が明白な場所はない。最大都市ヨハネスブルクとアフリカ最大の貨物港ダーバンを結ぶ幹線道路沿いに何マイルにもわたって立ち並ぶ小売業者の倉庫や工場の一部が暴徒の標的となった。

停滞する経済の再建を公約としてラマポーザ大統領が2018年に就任して以降、ハマーズデイルでも地域経済の再興に期待が高まった。「本当に前向きな勢いがあった。雇用も創出されていた」とある企業幹部は匿名を条件に話した。

しかし「南アフリカ不動産所有者協会」や「ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ」などの業界団体は、同地域の将来が危機にひんしていると警告する。在庫の喪失や建造物への被害、輸出の減少など、暴動がKZNの州内総生産に与えた損害はおよそ14億ドル(約1500億円)と推定されている。昨年の南アの国内総生産(GDP)は約3000億ドルだった。

再建には数年との見方も
業界団体は一部の企業は再建に数年かかると見ている。同国経済の中心地で、やはり暴動で深刻な打撃を受けたハウテン州とKZNは南アのGDPの5割と人口のほぼ半分を占める。ダーバン港は同国の輸入品の70%を扱うと同時に、アフリカ南部への玄関口でもある。

独立系エコノミストのタビ・レオカ氏は「KZNなどまだ情勢が不安定な地域があるため、暴動がもたらした損害を算出するのは現時点では難しい。しかしKZNの損害は200億ランド(約1500億円)以上、全国では500億ランドを超えるだろう」と指摘する。「人命以外の最大の損失は雇用の喪失だ。多くの人が職場を失った」

KZNは長い間、南アの2つの側面を象徴してきた。一つはハイテク物流への投資や雇用創出、もう一つは工業団地の外に広がる衰退や穴だらけの道路だ。

トラックへの放火や略奪から始まった暴動はすぐにスーパーや倉庫、食品包装工場など食品のサプライチェーンへの襲撃に変わった。ラマポーザ大統領は企業経営者に対し、これらの投資への意図的な破壊工作が暴動の中心であり、それは「経済を崩壊させ、社会を不安定化し、民主国家を深刻に弱体化あるいは解体させようとする」計画の一部をなすものだと述べた。

また今回の暴動は、長期間の失業と食料不足がもたらした絶望が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でより深刻化したことも反映している。「これはズマ問題ではなく時限爆弾だった」と、ダーバンの貧民街住民の権利保護団体「アバーラリ・ベースムジョンドロ」の広報担当者タペロ・モハピ氏は語った。

同市のウムゲニ・パーク地区では、緑豊かな郊外の住宅地や倉庫が立ち並ぶ地域のすぐ外側に貧民街がある。「ロックダウン(都市封鎖)の期間中、住民は野草まで調理して食べていた」と同氏は話す。暴動が拡大するにつれ「住民は食料を盗みはじめ、『ズマなんて知らない』と言っていた」

また同氏は、一部住民は食料を盗んだが「ズマ氏の支持者は放火した」ともいう。ハマーズデイルに近いカトー・リッジにある巨大倉庫では数百人がフェンスを壊し、ドアをこじ開けて韓国サムスン電子製のテレビなどを略奪した。目撃者によるとゴム弾を使い果たした警察は傍観していたという。倉庫では片付け作業が行われており、責任者によると倉庫は移転せず「旗を掲げる」が、セキュリティーは強化される。

軍と警察が供給ルートを確保して物流は再開したが、多くの住民は十分な食料を買える収入がないままだ。21年初めには全国の失業率は32%を少し上回る水準だった。現在黒人の失業率は48%近く、若年層では74%に達している。

店舗の1割が襲撃された大手小売り
暴動で手ごろな価格の食料の入手がさらに困難になった。南アフリカ大手スーパーマーケットチェーンのショップライトは、南アで運営する店舗の約1割に当たる120店舗近くが火災や略奪で被害を受けたと明らかにした。同社は「可能な限り早期に再建し、営業を再開する努力をしている」と述べた。

暴動の前から政治や犯罪にまつわる暴力がダーバンの経済に悪影響を及ぼしていた。活動家によると、与党アフリカ民族会議(ANC)の一部メンバーと犯罪組織が手を結んで企業にみかじめ料や利益の分け前を要求し、取り分をめぐって争い、しばしば殺人にまで発展している。アバーラリの運営者もANCの汚職への抗議活動をめぐり脅迫を受けたという。

そして今、投資家が計画を再考するのではとの懸念が生じている。ANC所属のムサ・ムキゼ地方議会議員は「非常に悲しい」と漏らす。「ここは産業にとって素晴らしい地域だ」

また同氏は数千人が失業する恐れを指摘した。「(暴動は)悪い警鐘だったが、我々は投資を守るため24時間監視している。投資によって子どもたちが学校に通え、住民は食料を手に入れることができる。従業員の70%は地元住民だ」

略奪を防げなかった警察は家宅捜索を行って物資を押収している。まるで高額な押収薬物であるかのようにカメラの前に冷蔵庫を並べている。しかしウムゲニ・パークの貧民街のような場所から押収できるのは「鶏肉、引き割りトウモロコシ、コメやおむつなどだ」とモハピ氏は述べた。「冷蔵庫などない」

By Joseph Cotterill

(2021年7月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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