[FT]北アイルランドへ供給停止 医薬品2000種

[FT]北アイルランドへ供給停止 医薬品2000種 離脱余波
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 ※ 事程左様に、世の中はうまくいかない…。

 ※ 「共通のルール」「グローバルな大市場」というお題目は、簡単に口にすることができる…。

 ※ しかし、現実の利害関係は、鋭く対立する…。

 ※ ましてや、「人の健康に関すること」、「下手すると、後遺障害があり得るようなこと」であれば、なおさらだ…。

『製薬会社が英国の欧州連合(EU)離脱後の煩雑な手続きと格闘するなか、グレートブリテン島で生産し、英領北アイルランドの患者に現在提供されている約2000種類の医薬品の販売が今後、取りやめとなる事態が起きた。

3日、英領北アイルランドのベルファストで北アイルランド議定書に反対する人々=ロイター

業界団体の英国後発医薬品工業協会(BGMA)は、数カ月にわたって政治的解決を求めた末に、北アイルランド市場だけのために二重の規制に従うコストと複雑さから、加盟企業は同市場への医薬品供給を打ち切る意向を英保健省に伝えたと明らかにした。

医薬品供給に深刻な混乱が及びかねない脅威が生じたのは、欧州委員会のフォンデアライエン委員長がジョンソン英首相に対し、英国のEU離脱協定に盛り込まれた北アイルランド議定書について再交渉しないと警告したのを受けてのことだ。

北アイルランドに関する貿易ルールを定めた議定書では、12月に期限が切れる猶予期間の後、同地域はEUの医薬品規制システムの一部として扱われることになっている。

認可や検査の負担

(イングランド、スコットランド、ウェールズで構成する)グレートブリテン島で生産される北アイルランド向け医薬品は、別途認可を得る必要があるうえ、安全性検査やその他の審査を受けなければならない。

BGMAのマーク・サミュエルズ代表は、その結果、追加の倉庫設備や臨床試験、技術専門家が必要になると指摘する。「こうした重複のために多くの場合、北アイルランドへの供給が長期的には引き合わなくなる可能性がある」

週を追うごとに多くの企業が医薬品販売撤退を決めていったといい、同氏は「私の知る限り、過去にこの規模の撤退が一斉に起きたことはなかった」と話した。

また、医薬品提供を取りやめた際に英保健省の担当者が代替品を特定するシステムには大きな負荷がかかるだろうとも指摘した。

サミュエルズ氏は「我々が危機を回避できるよう、この状況に対処する追加資源を(英政府が)提供してくれる」ことを期待していると語った。

欧州委員会は6月、北アイルランドでの供給不足緩和に向け、医薬品供給に関するEU規制の見直しに取り組むと表明した。委員会は向こう数カ月で、法整備の提案をまとめることになっている。

14日、ブリュッセルで記者会見を終えてマスクを着けるフォンデアライエン欧州委員長=AP
英保健省にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。

一方、ジョンソン氏はフォンデアライエン氏に対し、北アイルランド議定書は「持続不能」であり、「大幅な変更」が必要だと伝えた。

議定書では、グレートブリテン島から北アイルランドに入る製品がEUの基準を満たしていることを確認するために、アイリッシュ海の境界での検査が義務付けられている。

英首相官邸は、ジョンソン氏は電話でフォンデアライエン氏に対し、貿易問題を緩和するために議定書の修正で「英国と協力」するよう要請したと発表した。

英政府は7月21日、グレートブリテン島から北アイルランドへ向かう製品について大半の検査の廃止を求める報告書を発表した。

「北アイルランドの市民と企業が直面している困難に対して合理的で実際的な解決策を見いだし、ひいては英国とEUの関係を改善する多大の好機がある」(首相官邸)。

だが、フォンデアライエン氏は、通商関係のいかなる変更も、ジョンソン氏が2019年に署名した議定書の枠組みの中で実施しなければならないとの考えを明確にしている。

「再交渉はしない」

「EUは今後も、引き続き議定書の枠組みの中で創造的で柔軟な姿勢をとる」。フォンデアライエン氏はこうツイートした。「だが再交渉はしない。我々は共に北アイルランドの安定性と予測可能性を確保しなければならない」

ジョンソン氏はドイツのメルケル首相にも電話し、議定書の運用方法の大幅変更を受け入れるよう、残り数週間の首相在任期間でのEU説得を要請した。

協議に通じた複数の高官によると、欧州委員会は22日、EUの外交官に対し、もし英政府が議定書と離脱協定の条件に違反していることが明らかになれば、委員会は英国に対する法的措置を強化すると通告した。

By Sarah Neville, George Parker and Mehreen Khan

(2021年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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