米政権が多面外交

米政権が多面外交、閣僚相次ぎアジア訪問 対中にらむ
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『【ワシントン=永沢毅】バイデン米政権が「唯一の競争相手」とみなす中国をにらんだ外交を多面的に展開する。ブリンケン国務長官がインド、オースティン国防長官が東南アジアをそれぞれ訪れるほか、ロシアとの高官級軍縮対話も開く。閣僚や高官が同時並行で対中包囲網の構築に取り組む構図が鮮明になる。

オースティン氏はバイデン政権の主要閣僚として初めて東南アジアを訪問した。中国が実効支配を進める南シナ海での領有権問題を巡り、中国の圧力を受けるフィリピンやベトナムを訪れ、支援姿勢を示す。影響力を拡大する中国をけん制する狙いだ。

バイデン政権発足後、日本や韓国、欧州、中東にはバイデン大統領本人を含む高官が訪れたが、対東南アジア諸国連合(ASEAN)はブリンケン氏がオンライン外相会合を開くにとどまっていた。

ブリンケン氏の訪印は初めてで、28日にモディ首相、ジャイシャンカル外相と会う。「バイデン政権は初めからクアッドと米印関係に高い優先順位をおいている」。国務省高官はこう述べ、2国間関係とともに日本、オーストラリアを交えた枠組み「Quad(クアッド)」の協力も推進すると説明した。

クアッドは新型コロナウイルスワクチンの途上国への供給で協力体制にある。インドでの生産増強を米国が支援することなどが柱で、今回も連携を深める方策を話し合う。米国にはワクチン外交で先行する中国に対抗する狙いがある。

18日から26日まで、日本、韓国、モンゴル、中国を訪れていたシャーマン国務副長官は中東のオマーン経由でジュネーブに向かう。28日に米ロ間で核軍縮を話し合う「戦略的安定対話」の初会合に出席するためだ。ロシアのリャブコフ外務次官と協議にあたる。同対話は6月に同じジュネーブでのバイデン政権初の米ロ首脳会談で合意していた。

国務省は「将来の軍縮やリスク提言への地ならしを進める」と開催の目的を説明している。2月に5年延長で合意した米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の後継枠組みを含む幅広い安保問題を話し合うことになる。

米国は中国を含めた軍縮対話を視野に入れる。核・ミサイルを含めて急速な軍拡を進める中国を欠いた軍縮はその脅威を増すだけに終わりかねないためだ。米国が軍縮などでロシアとの接点を探るのは、加速する中ロの接近に一定の歯止めをかけるためでもある。

「米国の一部が中国を仮想敵とみなしている」(中国の王毅国務委員兼外相)。シャーマン氏の26日の訪中であらわになったのは、容易には解消しそうにない米中対立だ。香港や新疆ウイグル自治区、サイバーなどあらゆる問題で王氏らとほぼ全面衝突する結果となった。バイデン政権が各国との関係強化に取り組むのは、対中競争が長期的な課題になるのを見据えた動きだ。

対中シフトは軍事面でも鮮明になっている。「今年の年末までに戦闘任務は終える」。バイデン氏は26日、ホワイトハウスにイラクのカディミ首相を招いてこう宣言した。イラク駐留米軍は約2500人。大半が従事しているイラク治安部隊への訓練や情報提供は継続する。

ただちに大規模な米軍の削減にはつながるわけではない。ただ、今回の宣言は8月末までのアフガニスタン撤収とあわせて中東でのテロ掃討作戦に一定のメドをつけ、中国への対応に注力するバイデン政権の方針に沿う。国務省高官はブリンケン氏の訪印についても、インドに近接するアフガンの安定に向けた協力が重要課題になると指摘する。

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