米国防長官、中国との「安定した関係構築目指す」

米国防長官、中国との「安定した関係構築目指す」 
シンガポールで安保演説、南シナ海問題では中国批判
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM253QX0V20C21A7000000/

『【ワシントン=中村亮、シンガポール=中野貴司】オースティン米国防長官は27日、訪問先のシンガポールで演説し、米国として「アジアへ永続的に関与していく」と強調した。南シナ海をめぐる中国の一方的な海洋権益の主張については「根拠がない」と断じた一方「我々は対立を求めてはいない」と表明。中国との安定した関係の構築を目指す考えを示した。

オースティン氏はバイデン政権の主要閣僚として初めて東南アジアを訪れ、英国の国際戦略研究所(IISS)が主催するイベントで演説した。バイデン政権の対アジア安全保障政策に関する初めての包括的な演説となった。演説後には識者などからの質問に答えた。

同氏は航行の自由や紛争の平和的解決、法の統治などについて「こうした原則と相いれない行動をこの地域は目撃している」と語った。南シナ海の海洋権益を一方的に主張して実効支配を強める中国を批判する発言だ。

オバマ政権は南シナ海問題に迅速に対応せず、中国への強硬姿勢を打ち出したトランプ政権も中国による軍事拠点化を食い止められなかった経緯がある。バイデン政権は危機感を強めており、米軍は南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島などの周辺で「航行の自由」作戦を続けている。

台湾海峡問題を巡っては「誰も一方的な現状変更を見たいと思っていない」と述べ、中国を改めてけん制した。「台湾の自衛能力支援を約束する」とも強調した。バイデン政権が最近、台湾問題で強い姿勢を打ち出していることもあり、中国も最近は軍事的挑発を抑制している。25日までの過去約3カ月間(100日間)で台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した中国軍機は延べ112機にとどまり、それ以前の3カ月間と比べて半分以下に減った。

オースティン氏は中国の新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族への弾圧や、中国の台湾への姿勢も批判した一方「対立を求めてはいない」とも強調。中国との「建設的で安定した関係」を模索する考えも示した。気候変動問題での中国との協力にも前向きに取り組む意向を表明した。

オースティン氏は東南アジア諸国に関係の再構築を呼びかけた。「同盟と友好のネットワークこそが他の追随を許さない米国の戦略的資産だ」と強調。「私は同盟を与えられたものだとは思わない」とも述べ、米国が積極的にアジアへ関与する姿勢を示した。

同盟関係にきしみがみられるフィリピンについては、米国のフィリピン防衛を定めた米比相互防衛条約の適用対象に南シナ海が含まれると改めて説明した。米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の沖縄県・尖閣諸島への適用にも触れ、一連の条約上の義務を果たす考えを強調した。

アジア各国に対し「必要とする能力や情報を提供するため連携していく」と語り、サイバーや宇宙領域を含む幅広い防衛協力に意欲を示した。違法な漁業や資源開発を取り締まるための能力開発も支援していくと説明した。

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越野結花
国際問題戦略研究所(IISS) リサーチ・フェロー

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ひとこと解説 当初6月に予定していたオースティン国防長官の東南アジア訪問が今月実現。シンガポール政府の判断で、国際問題戦略研究所(IISS)が毎年開催しているシャングリㇻ対話が二年連続の中止となったことが影響した。全体としては、「強靭な国際秩序」を構築するため、同盟国や地域の友好国と強調する姿勢を何度も繰り返して強調していたことが前政権との大きな違いだ。政権があくまでも外交重視の立場であること、限られたリソースを効果的に活用する戦略として軍事から非軍事的手段を組み合わせる「統合的抑止力」の概念が強調されたことも、国防省のホワイトハウス内の位置づけを検討する上で重要。続く東南アジア訪問の成果も注視したい。

2021年7月27日 23:21いいね
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