習氏、3期目人事案を調整か

習氏、3期目人事案を調整か 北戴河会議が焦点に
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『【北京=羽田野主】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は、3期目をにらんで人事案の調整を進める見通しだ。2022年秋に開く5年に1度の共産党大会に向け、長老らの意見を聞く夏の北戴河会議の開催が当面の焦点となる。

北戴河会議は例年、8月上旬ごろに北京に近い河北省の避暑地である北戴河に現役指導部と一線を退いた長老らが非公式に集まり、党の重要人事や政策を話し合う会議だ。日程や会議の内容は公開されない。建国の父、毛沢東時代に始まったとされる。

記者が23日に現地を訪れると、すでに厳戒態勢が敷かれていた。「カバンの中身をみせろ。その小さいケースは何だ」。北戴河の高速道路の出口で警察の車両検査を受け、リュックはもちろん、筆箱の中身まで小型のビデオで撮られた。

「検問を違法に突破した疑いがある。直ちに下車しなさい!」。北戴河に入るとすぐ別の警察が走り寄ってきて、車のキーを取り上げられた。

誤解が解けたあとも、北戴河を離れるまで黒白2台のワゴン車に尾行された。食堂で食事中は私服の警察官らしき2人組が近くのテーブルに座ってにらみをきかせてきた。警備の厳戒ぶりからみて党関係者が集まるのは間違いなさそうだ。

習氏に対して、一部の長老は不満を抱いているとの見方がある。習氏が長老らをなだめるためにも現地に赴く可能性はある。ある党関係者は「長老の呼び出しに備えて8月のスケジュールを空けている閣僚もいる」と明かす。

北戴河の高速降り口は警察の検問を受けるために渋滞していた

一方で、権力基盤を固める習氏は長老らのいる北戴河には行かないシナリオもささやかれている。20年夏は共産党幹部が北戴河に出入りする情報が中国メディアで一切伝えられない「異変」が起きた。習氏にとってご意見番の長老は本来なら遠ざけたい存在だ。昨年は新型コロナウイルスの流行もあり、開催を見送ったとの観測も飛び交った。

今年も8月になっても北戴河を巡る情報が伝わらなければ、習氏は現地には行っていない可能性もでてくる。習氏への権力集中が進み、長老たちの意見に影響されずに人事や政策決定ができるように変わってきているとみることもできそうだ。

最高指導部の人事を占ううえで注目されるのは、党大会の時点で67歳以下なら「上=入る」、68歳以上は「下=出る」という「七上八下」と呼ばれる不文律の扱いだ。習氏はすでに68歳で、暗黙のルールに従うなら来年秋に引退を迫られることになる。中国近現代史に詳しい北京の著名な大学の教授は「習氏は自身を例外にするつもりだ」とみる。

観光客が訪れる北戴河の海辺。党幹部らの専用ビーチも近くにある。

党内からは「七上八下は江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記時代につくられた内規で、絶対視するものではない」との意見がでている。

21年7月1日の党創立100年の記念式典に習氏との溝が指摘されてきた江氏が姿を見せなかったことで、影響力のさらなる低下を指摘する声もある。例外をつくりたい習氏には追い風になりそうだ。

李克強(リー・クォーチャン)首相の後任人事も焦点となる。李氏は憲法の規定で23年3月で首相職を退く。首相は副首相から選ぶのが慣例で、習氏は李氏の後継候補として年内にも側近を副首相に就けようとしているとの観測がでている。

習氏が浙江省トップを務めたときからの側近の陳敏爾・重慶市共産党委員会書記や李強・上海市党委員会書記、李希・広東省党委員会書記らの名前が挙がる。

首相候補とみられてきた胡春華(フー・チュンホア)副首相は習氏と距離があるとの見方が絶えない。胡氏は李克強首相や胡錦濤(フー・ジンタオ)前総書記らと同じ党の青年組織、共産主義青年団(共青団)の流れをくむ。党内では行政手腕を評価する声も多い。「胡氏外し」を巡り、党内でせめぎあいが起きているとの見方もある。

主要な人事案のほか、対米政策や台湾問題などについて話し合われる可能性がある。』