米欧で感染再拡大 「集団免疫」へハードル高く

米欧で感染再拡大 「集団免疫」へハードル高く
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『【ロンドン=佐竹実、シリコンバレー=佐藤浩実】米国や欧州で新型コロナウイルスの感染者数が再拡大している。米国ではワクチンの接種完了率が低い地域ほど新規感染者が多い傾向が鮮明だ。一方、欧州では5割を超えても感染抑制に苦戦する。感染力の強いインド型(デルタ型)の拡大で感染を抑えるための「集団免疫」獲得へのハードルは上がっている。

「間違った方向に向かっている」。バイデン政権のファウチ首席医療顧問は25日出演した米CNNの番組で、ワクチン接種の遅れる地域で新型コロナ感染が再拡大していることに警鐘を鳴らした。

ワクチン完了5割、地域に差
米疾病対策センター(CDC)によると、米国の23日の新規感染者は約6万4000人と1カ月前の4倍強に膨らんだ。新規入院患者の97%余りがワクチン未接種の人で、状況が改善しなければ冬季に最大で1日4000人が死亡するとの予測もある。ファウチ氏は「最悪のシナリオになるかはわからないが良い状況にはならない」と指摘した。

米国ではワクチン接種で先行する東部などでは新規感染や重症化を抑え込んでいる一方、接種率の低い南部や中西部の感染増が鮮明だ。ワクチン接種完了率が37%と全米平均(49%)を下回るルイジアナ州では、人口100万人あたりの感染者数(7日平均)が519人と全米最悪の水準に急増。対照的に接種完了率が64%と最も進んでいる州のひとつ、東部マサチューセッツ州では100万人あたりの感染者数は60人とルイジアナの8分の1程度にとどまる。

報道によると、ルイジアナ州では感染者の7割強を50歳未満が占め、州都バトンルージュでは大学に隣接する繁華街で多数の感染が起きた。南部などでは白人保守層やマイノリティー(人種的少数派)の間で政府への不信や陰謀論の影響などから接種を拒否する人が一定数おり、接種伸び悩みの原因となっている。

日本のワクチン接種完了率は全国で25%。100万人あたり新規感染者数(7日平均)は33人と米国に比べ感染者数は大幅に少ないが、接種完了率が21%の東京都では104人にのぼる。
ワクチン接種は重症化予防には欠かせない。米バージニア州の保健当局によると、7月1~18日に新型コロナ感染が確認された約5800人のうち、ワクチン接種を完了していた人は3%の160人。うち13人が入院したものの、死亡者はいなかった。

イスラエルが実施した調査では米ファイザー製ワクチンはデルタ型の感染者でも重症化や入院を9割程度防ぐ効果があった。英イングランド公衆衛生庁(PHE)によると、イングランド地方でファイザー製を2回接種した人のデルタ型発症防止の有効性は88%と、英国型(アルファ型)の94%より低いものの高い効果が認められた。アストラゼネカ製でもデルタ型で67%と、アルファ型の75%は下回るが接種の効果は大きい。

デルタ型、抑え込み苦戦

感染を抑えるための「集団免疫」を獲得するには人口の70%がワクチン接種を完了することが必要とされる。デルタ型は他の変異ウイルスよりもワクチン接種が完了した人にも感染するリスクが高い可能性が指摘されており、集団免疫へのハードルはさらに上がりかねない。

デルタ型の拡大にともない、ワクチンの接種完了率が5割程度では感染抑制が難しいことも分かってきた。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、接種完了率が54%のスペインでは、24日時点の100万人あたり感染者数が550人と、1カ月で7倍近くに増えた。5月に緊急事態宣言を解除して人流が増えたところに、デルタ型の流行が重なった。48%のイタリアでも感染者が増え始めている。

接種完了率54%の英国は「新型コロナだけを考えていては生きていけない」(ジャビド保健相)として共生路線を進み、19日には行動規制をほぼ撤廃した。英国の25日の感染者数は約3万人と、ここ数日やや落ち着きを見せているものの、規制解除には異論も根強い。

英国ではワクチン接種が高齢者にある程度行き渡ったことで死者や重症化する人が減り、医療体制は20年から21年にかけての流行時のように逼迫していないが、政府のウィッティー首席医務官は「医療システムが圧迫されないと考えるのは現実的ではない」と指摘する。

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