ベトナム鉄鋼ホアファット、東南ア首位に

ベトナム鉄鋼ホアファット、東南ア首位に 台湾系抜く
さらに4000億円で高炉新設 能力7割増へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM157IB0V10C21A7000000/

『【ハノイ=大西智也】ベトナム鉄鋼大手ホアファット・グループが粗鋼生産規模で東南アジア最大手の地位を固める。今春に台湾系でJFEスチールも出資するフォルモサ・ハティン・スチール(FHS、ベトナム)を抜き東南アで首位に浮上した。約4000億円を投じる高炉の新設でさらなる増産体制を敷く。中国に頼らず鉄鋼製品の母材を国内でほぼ自給できる体制を整える。

「ベトナムでは鉄鋼需要は引き続き根強い。我々はこの投資に自信がある」。チャン・ディン・ロン会長は中部クアンガイ省で予定する高炉新設の大規模プロジェクトへの意気込みを強調した。

1992年に建設機械商社として創業し、96年に鉄鋼事業に参入した。2021年1月までに同省にある一貫製鉄所で4基の高炉を立ち上げ、21年1~3月期の粗鋼生産量は約200万トンだった。四半期ベースで初めてライバルのFHS(約160万トン)を上回った。

22年初めに建設を始める新たな高炉設備では年間560万トンの粗鋼を生産する。このうち家電や機械、建材といった幅広い製品の母材である熱延コイルは約460万トン、棒鋼やスチールワイヤは約100万トンを見込む。

これにより、24年のホアファットの粗鋼生産能力は現在の7割増の約1400万トンになる見通しだ。世界鉄鋼協会によると、日本勢の20年の粗鋼生産量は日本製鉄が世界5位で4100万トン、JFEスチールが同14位で2400万トンだった。

ホアファットが大幅な増産に動き出すのは、世界の粗鋼生産の6割弱を占める中国が輸出の抑制を続けているためだ。中国は環境規制を背景に、粗鋼生産量に比例して二酸化炭素(CO2)を排出する高炉の操業条件を厳格化している。

数年前までは、中国国内で供給過剰になった鋼材が輸出に回り、それが東アジアの市況をかく乱してきた。足元では東アジアの鉄鋼市場が様変わりしたことで、ホアファットが思い切って増産できる環境になっている。

世界的な景気の回復傾向に加え、中国の輸出減少などの影響でベトナム国内の鉄鋼業界には追い風が吹いている。実際、建材として使用される鉄筋価格は1年前と比べて4~5割上昇した。

ホアファットの21年1~6月期の建設用鋼材の販売量は前年同期比22%増の約180万トンだった。数量に比例し業績も好調で、21年12月期の売上高は前期比31%増の120兆ドン(約5600億円)、最終利益は18兆ドンと33%増える見通しだ。

ベトナムは東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国で最大の鉄鋼生産国・消費国だ。20年の粗鋼生産量は約1950万トンと前年比11%増加し、過去5年で3倍強になった。FHSが中部のハティン省で17年から高炉一貫製鉄所を稼働し、地場系のホアファットと鉄鋼生産量を競い合い、国全体の生産量を増やした。

政府が「長年、悲願としていた」(鉄鋼商社)のは鉄鋼製品の母材である熱延コイルの自給化だ。ベトナムは年間約1200万トンの熱延コイルの国内需要がある。FHSに続いて、ホアファットも20年秋から熱延コイルの生産を始めたものの、ベトナム国内全体ではなお需要の5割前後を輸入に頼ってきた。

主要な輸入国は中国で、中国政府の政策や大手鉄鋼メーカーの動きに翻弄されてきた。ホアファットの高炉の増設が完了すれば計算上、ベトナムは熱延コイルをほぼ自給できるようになる。

ベトナムのグエン・ホン・ディエン商工相は5月に開いた鉄鋼業界との懇談で「鉄鋼業は基幹産業だ。工業化において特に重要な役割を果たしている」と強調し、業界発展に向けて積極的に支援する姿勢を示していた。

ベトナムは南シナ海問題などで隣国の中国と外交面で緊張関係にあり、安全保障の面からも主要品目で自国産化を急いでいる。縫製業では新型コロナウイルスの感染が中国で広がった20年春、原材料である生地調達が停滞し、大幅な減産に追い込まれた。政府は生地の自国生産の拡大に向けて、税制優遇などを通じて支援を強化している。

足元では最大の懸案であるコロナワクチンでも、ベトナム資本であるナノジェン製薬バイオテクノロジーが最終となる第3段階の臨床試験(治験)に入っている。

ベトナムではワクチンを1回以上接種した国民の割合は人口約1億人の4%程度にとどまるが、中国からのワクチン調達は現時点で50万回分にとどめている。』