ドイツ介護保険改革、「子なし」なら負担重く

ドイツ介護保険改革、「子なし」なら負担重く
ベルリン支局 石川潤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR183030Y1A710C2000000/

 ※ 『子供がいないのなら、より高い保険料の支払いをーー』…。

 ※ いよいよ、そういうことになるのか…。

 ※ 『「子供を育てていない人は、子供を育てている人よりも金銭的な負担が少ない」。ドイツのシュパーン保健相は、子供が欲しくてもできなかった人々の感情的な問題に理解を示しつつも、新たな負担を求める理由をこう説明した。』…。

 ※ 率直な話しだ…。

 ※ 子供がいない「50才以上」の人には、賃貸住宅を貸してくれない現実がある…、という話しも聞くところだ…。

 ※ 人生設計、子供を作るか作らないかは、極めて「プライベートな、個人的な」選択のハズだ…。

 ※ しかし、「社会全体の制度設計」「国家としての制度設計」にまで、影響を与えてくる…。

 ※ 「税金使って、何かやる」ということは、「他者が拠出した税金まで使う」ということだから、「純粋に個人的な事がら」というわけにはいかない…。

 ※ そこでは、各国民の「置かれた立場による、利害関係」が、鋭く対立する…。

 ※ まあ、何やるにしても、そうなんだが…。

『子供がいないのなら、より高い保険料の支払いをーー。2022年から実施されるドイツの介護保険改革が物議を醸している。子供のいない人の保険料率だけが、これまでの賃金の3.3%から3.4%に引き上げられるためだ。子供のいる人の保険料率は3.05%で据え置きとなる。子供のいない人をまるで罰するかのような動きに対し、ドイツ国内で批判があがっている。

介護従事者の待遇改善が目的
ドイツの介護保険改革の大きな柱が、介護従事者の待遇改善だ。ドイツの65歳以上人口の割合が2割を超える一方、生産年齢人口は減少に転じている。介護需要が急速に高まるなか、必要な人材をどう確保していくかが課題になっていた。人手不足を避けるには「賃上げと労働条件の改善が不可欠」(ドイツ看護協会のクリステル・ビーンシュタイン会長)というわけだ。

そのために必要なお金をどう工面するか。介護従事者の給与を引き上げ、利用者負担も抑えていくには「介護保険制度か税金でまかなうしかない」(ハイル労働・社会相)というのが当然の帰結だ。ただ、メルケル政権が税金の投入のほか、子供のいない人だけを対象にした保険料率の引き上げを選択したことが議論を呼んでいる。

ドイツのシュパーン保健相=ロイター

「子供を育てていない人は、子供を育てている人よりも金銭的な負担が少ない」。ドイツのシュパーン保健相は、子供が欲しくてもできなかった人々の感情的な問題に理解を示しつつも、新たな負担を求める理由をこう説明した。ドイツではこれまでも子供のいない人に保険料率を0.25%上乗せしていたが、22年以降はこれが0.35%に引き上げられる。

子供のあるなしで保険料率が異なるのは、01年のドイツ連邦憲法裁判所の判断がもとになっている。将来の社会保険の担い手となる子供をお金をかけて育てた人とそうでない人の負担が同じなのはおかしいという考え方が背景にある。ドイツ政府は05年から子供のいない人に上乗せの負担を求めるようになった。

「連帯性を欠く」との声も
ただ、介護従事者の待遇改善を主張するドイツ看護協会のビーンシュタイン氏もこのやり方は「間違っている」と指摘する。「様々な理由があるというのに、子供がいないからといって罰を与えられるべきではない」というのが同氏の考えで、一部の人々だけに負担を強いるのはあまりにも「連帯性を欠く」というわけだ。

改革を進めた連立政権の内部でも複雑な感情が広がる。与党のドイツ社会民主党(SPD)のヘイケ・ベーレンス議員は日本経済新聞の取材に「(子供のいない人へのさらなる上乗せは)我々が願ったことではなかった」と明かした。「多くの重要な改善」を実現するため、連立相手の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と妥協せざるを得なかったのだという。

ドイツメディアでも批判的な論調が目立つ。南ドイツ新聞は同じ理屈を突き詰めれば「数え切れないほどの要因」が見つかると指摘する。子供のあるなしだけでなく、たばこを吸うか吸わないか、運動をしているかしていないかによっても、保険料率は変わるべきかもしれない。ただ、そうした考え方は保険制度のもとになっている連帯とは相いれないものだ。

ドイツ以上に少子高齢化が加速する日本にとって、こうした制度は今後のヒントになり得るだろうか。日本の政策当局者には、子育て支援をしたいのであれば、子ども手当などを検討すべきだという意見がある。財源の確保を図るのであれば、まずは日本の介護保険制度の保険料負担の対象を現在の「40歳以上」から広げることが先決との考え方も根強い。

ただ、ドイツの制度が子育てや介護の負担を誰が担うべきかという重い問いを突きつけている面はある。保険料率が一律というのが本当に公平なのか、連帯を壊すような議論は避けるべきなのか、税と保険料の違いが薄れてはいないか。少子高齢化で保険料負担が重くなっているからこそ、制度の本質を問い直す意味もある。』