中銀、相次ぎ緩和縮小

中銀、相次ぎ緩和縮小 インフレ対応・景気回復で綱渡り
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『世界の中央銀行が新型コロナウイルスの感染拡大に対応した金融緩和策の見直しに動いている。カナダやオーストラリアなどが7月に量的緩和の縮小を発表したほか、新興国でも政策金利を引き上げる動きが相次いでいる。経済活動が再開しインフレ懸念も強まっているためだ。ポストコロナをにらみ正常化を進めるが、景気の先行きには不透明感も強く綱渡りの政策運営を迫られる。

先進国ではカナダ中銀が国債買い入れの縮小(テーパリング)の先陣を切り、4月に続いて7月も買い入れのペースを引き下げた。オーストラリア準備銀行(中央銀行)も7月に資産購入の規模を縮小すると決めた。

ニュージーランド(NZ)準備銀行(中銀)も7月、国債の追加購入プログラムを23日までに終了すると発表した。SMBC日興証券の丸山義正氏は「資産買い入れプログラムの上限までまだ余裕があり、終了はサプライズだった」と指摘する。経済回復のペースが想定を上回っており、早期のテーパリングに踏み切った。

NZとカナダは早期の利上げも視野に入れる。NZは早ければ年内に利上げに踏み切る可能性があり、カナダ中銀はすでに2022年後半の利上げを見込む。一方、オーストラリアはテーパリングは実施するものの、資産買い入れの期限は延長を決めた。

緩和縮小の背景にはコロナ禍からの経済回復に加え、空前の規模の金融緩和による緩和マネーが不動産価格を押し上げるなど緩和の弊害が目立ってきたことがある。オーストラリア中銀は利上げを「24年以降」とする姿勢を崩していないが、住宅価格の上昇などが原因で、市場では利上げの前倒しを迫られる可能性が高いとみられている。

先進国に先駆け、新興国ではすでに利上げを決めた国が相次いでいる。インフレによる商品価格の高騰が国民生活を直撃しており、影響がより深刻なためだ。

ブラジル中央銀行は6月、3会合連続で利上げを決めた

ブラジルの中央銀行は6月に3会合連続で、ロシアの中銀は23日に4会合連続の利上げを決めた。メキシコも2年半ぶりとなる利上げを実施。チリ中銀も7月に利上げを決め、金融引き締めに動いた。韓国銀行(中銀)も7月の会合で、次回会合以降に緩和の正常化を検討する可能性を示唆している。第一生命経済研究所の西浜徹氏は「物価上昇への対応のために新興国が利上げに動く方向性は続くだろう」とみる。

ただ、新型コロナの変異ウイルス「インド型(デルタ型)」の拡大で景気の先行きには不透明感も強い。西浜氏は「足元では景気回復にもとづく『良い利上げ』が中心だが、今後は景気が悪いのに利上げに踏み切らざるを得ない国が出てくる可能性がある」と指摘する。物価や資産価格の上昇をおさえつつ、病み上がりの景気の腰折れも防ぐ。コロナ禍を経て中銀の政策運営の難度はさらに増している。

(学頭貴子)』