五輪組織委、止まらぬ迷走 開会式演出の小林氏解任

五輪組織委、止まらぬ迷走 開会式演出の小林氏解任
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『東京五輪の運営を担う大会組織委員会の混乱が収まらない。開会式を翌日に控えた22日、ショーディレクターを務める元お笑い芸人の小林賢太郎氏を過去のコント内容を巡って解任した。かねて不祥事は相次ぎ、19日には開会式の楽曲担当者が辞任したばかり。根底にある人権意識の希薄さや「密室体質」を払拭できず、東京五輪そのもののイメージを損なった。

開閉会式の制作・演出チームの一員だった小林氏は過去にユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)をコントで扱い、SNS(交流サイト)上で批判が集まっていた。組織委の橋本聖子会長は22日の記者会見で「次々と多くの問題が発覚し、後手に回っている印象があり反省している」と述べた。

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組織委の武藤敏郎事務総長は小林氏の役割を「全体を統一的、一貫性あるものにするもの」と説明。組織委は演出内容を見直すかどうかを検討したが、22日夜に変更しないと発表した。精査した結果、小林氏1人で演出を手掛けた部分はなかったとし、「予定通り実施する方向で準備を進めている」とコメントした。

橋本氏が問題を把握したのは22日未明。外交上の問題にもなりかねないとして同日午前に解任した。米ユダヤ系団体が小林氏を非難する声明を出していた。菅義偉首相も首相公邸で記者団の質問に答えて「言語道断だ。全く受け入れることはできない」と批判した。

組織委を巡っては、3月に式典を統括するクリエーティブディレクターの佐々木宏氏が演出関係者に女性タレントの容姿を侮辱するメッセージを送った問題で辞任した。組織委はこれを受け、式典の制作や演出を担うチームを再編成。詳細なメンバーを開会式の9日前となる7月14日になって発表した。選定過程などの説明はなかった。

19日にはメンバーの一人、ミュージシャンの小山田圭吾氏が雑誌で告白した学生時代のいじめが問題となり、辞任に追い込まれた。小山田氏は開会式の冒頭の楽曲を制作しており、当該部分の変更を迫られた。

小山田氏の場合、いったん組織委は続投させる意向を示していた。今年2月には前会長の森喜朗氏が女性蔑視発言で辞任。組織委の人権意識の低さが相次ぐ不祥事の根底にはある。

小山田氏辞任の際、武藤氏は「佐々木氏の辞任後、時間がない中で必要な人たちを仲間内で集める形になった」と説明。小山田、小林両氏について過去の問題の把握や精査はできていなかった。

かねて不透明な体質が批判されてきた組織委。2015年には大会エンブレムで盗作疑惑が浮上し、アートディレクターを限られた幹部で決めた経緯が批判された。

森氏辞任の際も後任人事を巡り、森氏が元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏へ直接就任を打診したことが「密室人事」と非難された。教訓が生かされず、不祥事が収まらない。
組織委は都や日本オリンピック委員会(JOC)、政府や民間など出身母体が異なる職員が集まり14年に発足した。専門家が集まった混成組織で職員は約8千人に及び、統治機能が働きにくい。

エンブレム見直しでは選考方法を公募に切り替えた。当時の幹部は「国民的事業なので、オールジャパンで策定すべきものだった」と反省の弁を述べたが、不透明な構図は再び繰り返された。

五輪の開会式目前になって制作・演出の主要メンバー2人が去った。開会式の演出はほぼ完成し、国立競技場ではリハーサルが連日行われていた。「このタイミングで演出を変更するのはかなり難しい」(組織委の担当者)のが実情だった。

開会式は10億人以上がテレビで視聴するとされる。「マイナスのイメージがどうしてもぬぐえない状態で開幕を迎えようとしている」(橋本氏)。「多様性と調和」をテーマに、日本を世界に発信する場は揺らぐ。』