[FT]中国、パキスタンでのバス爆発を「テロ」と疑う

[FT]中国、パキスタンでのバス爆発を「テロ」と疑う
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『中国はパキスタンに対し、同国で発生し、9人の中国人を含む少なくとも13人が死亡したバスの爆発の原因究明を求めた。この爆発を巡り、中国政府はパキスタンの武装勢力が脅威だと受け止めている。

アフガニスタン国境に近いパキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州で、爆発したバスから乗客らを救出する住民ら(14日)=AP

パキスタン北西部の山岳地帯で14日、40人余りを乗せてダス水力発電所のダム建設現場に向かっていたバスが爆発した。このダムは、中国国有の建設会社、中国葛洲堰集団が出資する19億ドル(約2090億円)規模の水力発電プロジェクトの一環だ。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は14日夜、タジキスタンで会談したパキスタンのクレシ外相に「(爆発が)テロならば、犯人を速やかに逮捕し、厳しい処罰を受けさせなければならない」と訴えた。

15日付の中国国営通信、新華社によると、王氏はクレシ氏との会談で、パキスタンに対する中国の投資を保護するため安全保障分野での協力を強めることも提案した。

14日の会談前、中国の外務省と在パキスタン大使館は爆発を「攻撃」だと非難したが、その後、パキスタン外務省は「事故」だったと発表した。中国との関係が緊密なパキスタンは、バスについて「機械の故障でガスが漏れた。爆発が起き、峡谷に落下した」と説明したが、さらに調査を進めると約束していた。

パキスタン事業の安全保障リスクが浮き彫りに
今回のバス爆発は、パキスタンで事業をするうえで避けられない安保リスクを浮き彫りにした。隣国アフガニスタンから駐留米軍が撤収を進める一方、パキスタンではイスラム武装組織「パキスタンのタリバン運動(TTP)」が勢力を盛り返している。

TTPは4月、アフガンとの国境に近いパキスタン南西部クエッタの高級ホテルに対して自爆テロを実施したと表明した。ここには中国の駐パキスタン大使が滞在していた。

中国政府は、米軍撤収でアフガン情勢が不安定になっていると考え、積極的に対応しようとしている。

中国のアナリストらは、パキスタン、アフガンを含めた3カ国の外相会談をはじめとする最近の中国政府の外交の狙いの一つが、「新疆ウイグル自治区におけるテロの脅威」との闘いだと指摘する。これは中国側の表現だ。中国政府は2017年以降「テロ対策」の名目で、イスラム教徒のウイグル族をはじめ100万人の少数民族の身柄を拘束してきた。

清華大国家戦略研究院(北京)の銭峰・研究部主任は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が推進する広域経済圏構想「一帯一路」に参加する中国企業が今回のバス爆発によって、(相手国で事業を進めるうえで)死傷者を出すリスクを「覚悟」すべきだという事実を思い出したはずだと、主張した。

銭氏は、中国が「(この地域での)過激なテロ勢力の伸長を阻ぐため、現地当局と協力する」必要があると強調した。

最近では中国人をターゲットにした激しい攻撃も相次ぎ、中国政府は地域への投資の安全をどう確保するのか考えを巡らせている。

中国・パキスタン経済回廊の防御に懸命
パキスタンにおける中国軍の駐留は公式には確認されていない。中国政府は総額620億ドル規模の(一帯一路関連事業である)中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を(テロから)守るためパキスタン軍を動員するよう、同国政府に何度も圧力をかけてきた。CPECは、中国西部の国境地帯と、戦略的に重要なパキスタンのグワダル港の間で一連のインフラを整備する計画だ。

「中国・パキスタン枢軸」を著したアンドリュー・スモール氏は、今回のバス爆発を受け、中国がCPECの開発に一段と慎重になる可能性があるとみている。「CPECが次の段階に進めば、原則として、さらに多くの中国企業がパキスタンに進出する。そうなれば(地域の)緊張が、間違いなく高まることになるはずだ」と推測する。

By Christian Shepherd

(2021年7月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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