独翻訳サイトに世界が注目 グーグルより高評価も

独翻訳サイトに世界が注目 グーグルより高評価も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07DYK0X00C21A7000000/

『【フランクフルト=深尾幸生】インターネットの翻訳サービスで独DeepL(ディープエル)が存在感を高めている。昨年から翻訳対象に日本語も追加し、「定番のグーグル翻訳より精度が高い」との評価も聞かれる。ヤノスラフ・クチロフスキ最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に「(米グーグルなどに対する)優位性を維持できる」と自信を示した。

DeepLの画面。比較的こなれた翻訳に評価が高い

独西部のケルンに本社を置くディープエルはもともとウェブの独英辞書のサービスを展開していた。コンピューター科学者のクチロフスキ氏らが業務時間を少し割き、翻訳を学習する人工知能(AI)の開発に着手したのが始まりだ。

「最初は遊びだったが、次第に多くの同僚が『面白い!』となり、やがて会社の本業となった」(クチロフスキ氏)という。2017年から翻訳サービスを本格的に開始した。いまは全社員がディープエルのサービスに携わっている。

翻訳は英独仏スペイン語など欧州の主要言語から始め、日本語のほかルーマニア語やエストニア語などを追加していった。現在は24言語で相互に文章の翻訳ができる。従業員数は17年の15人から20年末に約100人となり、21年内に200人を超える見通しだ。

DeepLのヤノスラフ・クチロフスキCEOはポーランド生まれドイツ育ちで、多言語環境で育った
利用者数や売上高については非公表としているが、クチロフスキ氏は「年率100%以上で成長している」と話す。

サイトのアクセス状況を把握できるサービス「シミラーウェブ」によると、21年5月の合計訪問者数はのべ1億7500万人で、20年12月より44%増えた。グーグル翻訳の7億8150万人には及ばないが、日本のウェブ辞書大手の「ウェブリオ」(約4170万人)を上回っている。

人気を支えるのが翻訳の質の高さだ。同社がプロの翻訳家に翻訳エンジン名を明かさずにグーグルや米マイクロソフトのサービスと翻訳結果を比較してもらったところ、英語から独仏語への翻訳では6割以上が最も優れたものとしてディープエルを選んだという。

しばしば訳し間違いや訳し落としがあるものの、長い専門的な文書の概略を短時間でつかみたいときなどに重宝されている。仏紙ルモンドは「フランス語らしい表現」、独紙フランクフルターアルゲマイネは「グーグル翻訳も良いが、さらに良い」と高評価だ。

クチロフスキ氏はグーグルやマイクロソフトなどIT(情報技術)の巨人たちを上回る評価について、「事業を翻訳と言語に特化し、最高の翻訳を提供することに集中しているから」と説明。多言語圏の欧州に拠点を置いていることも理由の1つと指摘する。「4年前は慎重だったが、巨大な相手と4年間競争してきて、まだ先行できている」と自信を示す。

翻訳サービスは1回5000文字までなどの機能制限がある無料版と、制限を外しデータ保護を強化した有料版の「プロ」の2種類を展開。プロは月5.99ユーロ(約780円、日本では750円)からだ。

プロは仕事で利用する個人ユーザーが多いが、法人契約も増え収益の柱になっているという。富士通やスイスの製薬大手ロシュ、ドイツ鉄道などが採用した。また、自社の通販サイトに組み込んで海外の消費者対応に使うケースもある。

今後の事業展開についてクチロフスキ氏は口をつぐむが、グーグルのブラウザー「クローム」向けに1クリックで翻訳ができるようにするプラグインは出ないのかと聞くと、「実現するかもしれない」とほのめかした。』