対中国、米の「裏庭」支援 茂木外相が中米・カリブ歴訪

対中国、米の「裏庭」支援 茂木外相が中米・カリブ歴訪
日本、ワクチン協力拡充
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA112VP0R10C21A7000000/

『茂木敏充外相は15日、中米・カリブ海の4カ国訪問に出発した。21日までの日程で現地で20カ国ほどの外相と協議する。米国の「裏庭」と呼ばれる中米・カリブ海でも中国が影響力を拡大してきた。日本は新型コロナウイルスワクチンやインフラ支援で米国と協調して引き戻しに動く。

茂木氏はグアテマラ、パナマ、キューバ、ジャマイカの順で訪問する。16日(日本時間17日)にはグアテマラで、同国が議長を務める中米統合機構(SICA)の加盟国とオンライン形式を交えて外相会合を開く。

20日(同21日)にはジャマイカでカリブ共同体(カリコム)とも外相会合に参加する。SICAはパナマなど8カ国でつくる。カリコムはかつての英国領を中心とした14カ国で構成している。

日本は地理的に関係の薄かった中米・カリブ海との関係拡大に取り組む。安倍晋三前首相は2014年に日本の首相として初めてトリニダード・トバゴを訪れ、カリコムと初の首脳会合を開いた。15年にも同様にジャマイカを訪問した。

茂木氏は訪問中に日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」を説明し、法の支配に基づく国際秩序を維持するための協調を求める。日本の質の高いインフラ支援や人材育成の協力を申し出る。

中米・カリブ海はハリケーンや火山による災害が多い。日本の防災のノウハウを共有する。新型コロナワクチン供給の輸送網構築に向けた支援拡充も表明する。

米国にとって「裏庭」といわれる安全保障上の急所だ。他国の覇権を許さない地域として、戦後、反米政権ができないよう様々な手段を取ってきた。

キューバでは1959年に革命が成功した後、旧ソ連との関係を深めるキューバを警戒し、米国が経済制裁を始めた。61年には米中央情報局(CIA)の支援を受けたとされる反革命軍がキューバを侵攻した。

62年にソ連によるキューバへのミサイル配備が発覚すると、米国は核搬入阻止のためキューバの海上封鎖を発表。核戦争寸前の事態に発展した。

キューバと関係の深い南米北部のベネズエラにも神経をとがらせてきた。反米のチャベス、マドゥロ両政権が続く。

トランプ前政権は不法移民の問題を抱えていたこともあり友好関係を築きにくかった。中国は隙をつくようにインフラ投資を増やし、米国の地理的な優位性を崩そうとしている。
中米・カリブ地域には近年、中国がインフラ建設などの巨額の資金支援を背景に力を入れる。パナマは17年、エルサルバドルとドミニカ共和国が18年にそれぞれ台湾と断交し中国と国交を結んだ。

外務省によると世界の台湾承認国の15カ国のうち6割にあたる9カ国が中南米・カリブ地域に集中する。中国は台湾承認国への影響力拡大をもくろむ。

バイデン政権は中国傾斜を懸念する。ハリス副大統領は初訪問の場所をグアテマラなど中米を選んだ。日本は米国を側面支援して信頼関係を深化させる。

日本は安全保障を米国の軍事力に頼る。台湾や沖縄県・尖閣諸島の有事には米軍抜きには対応不可能だ。米国の安全保障にとって肝となる中米・カリブ海への経済支援は米国への貸し借りの一環ともいえる。

ジェトロアジア経済研究所の山岡加奈子主任研究員は「中米カリブ諸国も新型コロナで経済的に打撃を受けている。中米は貧困層が多く中国が支援を申し出れば中国に寄ることもある。今回の訪問でそうした動きに対する効果がある」と話す。

ワクチン支援が中米・カリブ海の急所になっている。

英オックスフォード大の研究者などでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、台湾と断交したドミニカ共和国は中国からワクチン支援を受け、1回以上接種を受けた人が人口全体の48.4%に達する。エルサルバドルも同様に31%と高水準だ。

台湾と国交を結ぶグアテマラ(4.8%)は低い水準にとどまる。

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