〔台湾への軍事的威嚇の実態…。〕

台湾の旧式潜水艦をなぜか怖がる中国軍
激増する台湾への領空侵犯で明らかになった中国軍の実態
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66060

※ ちょっと長いんで(10ページもある)、一部を紹介する…。

『隣国空軍の戦闘機・爆撃機が、ミサイルを搭載して自国に向かって頻繁に飛来してきたとしよう。

 こうした軍事的威嚇を受けた人々は、「偶発事故が起きるのではないか。近い将来、攻撃してくるのではないか」と不安になるであろう。

 通常、戦闘機・爆撃機の攻撃を仕掛けるように見せつける飛行は、偶発事故や紛争防止のために、やってはならないことだ。

 これを行う国は、近い将来、侵攻する意図があると見なされる。』

『現実的には、中国空軍機(特に戦闘機)が、2020年9月頃から、台湾に向けて頻繁に飛行を行っている。

 台湾の防空識別圏の台湾南西部に侵入する威嚇飛行の回数が急激に増加しているのだ。

 台湾が、このような威嚇を受ければ、危機が切迫し、大きな脅威だと感じるのは当然のことだ。

 そこで、中国空軍が現実に台湾に対して向ける軍事的威嚇、特に各種中国空軍機による威嚇飛行の実態と狙い、台湾海峡を挟んだ中台の軍事的緊迫の意味について、分析して説明したい。』

『台湾人の意思を無視した中国の武力侵攻

 中国の習近平総書記は、台湾人の意思を無視した発言を繰り返している。

「いかなる台湾独立のたくらみも断固として打ち砕く」

「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、共産党の歴史的任務だ」

 中国は、台湾独立の動きに対しては「武力行使を放棄していない」ことを何度も表明してきた。

 中国の反国家分裂法の第8条には、「もし台湾分裂勢力が台湾を中国から分裂させかねない重大な事態になれば、非平和的方式を取ることもある」と記述されている。

 中国は、軍事侵攻の可能性がある根拠をここに示しているのだ。』

『このような状況の中、米国政府が「中国の攻撃的な行動が、インド太平洋地域の安定を脅かしている」と発言し、日米首脳会談とG7首脳会議では、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調した宣言を発表した。

 G7首脳は、台湾海峡の危機を共通に認識し始めた。

 2021年3月に米上院軍事委員会で、ハーバート・マクマスター退役中将は「2022年以降が台湾にとって最大の危機を迎える時期である」と証言した。

 また、米国のインド太平洋軍フィリップ・デービッドソン前司令官は「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」とも証言した。

 私は、この2人の発言は、米国軍事情報機関の情報を踏まえた発言であり、信頼性は高いと考える。』

『このように、台湾に対する軍事的な威嚇は、一時的なものではなく、10か月間継続している。このため、台湾海峡は軍事的緊迫状態にある。

 軍事的な威嚇とは、具体的にはどのようなことなのか。空軍機の接近・侵入を焦点に分析する。』

『日米欧が台湾危機に注目するのは、中国空軍が危機を煽る行動からみても当然である。(『日中の空中戦シミュレーション、中国空軍の実力は』(JBpress、2020.08.31)https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61900参照)』

『日米台と戦える能力を備えつつある中国軍機
 多数の戦闘機が組織的に飛行し攻撃するには、AWACSのコントロールが不可欠である。

 中国空軍は、「KJ-200」(空警200)、「KJ-2000」(空警2000)、およびパキスタンに輸出した「ZDK-03」の成果を反映して、「KJ-500」(空警500)を製造したことで、日本のAWACSに近い能力を保有することができた。

 この結果、日中双方が、AWACSを要とするシステムで戦うようになった。』

『とはいえ、米日のAWACSと比較すると、母機である「Y-8」輸送機に搭載していることで、飛行速度が遅いこと、レーダーの技術をロシアから導入できなかったことから、性能はかなり劣っていると見てよい。

中国空軍の早期警戒管制機「KJ-500」

出典:台湾国防部サイト(2020.03.29)
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 KJ-500が2020年10月に台湾に接近した時が、周辺諸国への初めてのお披露目だったようだ。日本周辺には、まだ現れていない。

 出現状況をみると、2020年末までは単独で飛行し、2021年1月から戦闘機と連携を始めた。その後、KJ-500は、連携する戦闘機の数を徐々に増加させた。

 2021年の月26日には爆撃機4機・戦闘機12機、4月12日には爆撃機4機・戦闘機18機、6月15 日には、爆撃機2機・戦闘機20機(最大規模)までに増加した。

 とはいえ、KJ-500の同期間の台湾への接近飛行回数は、まだ17回である。実戦用に動き始めたばかりといったところだ。』

『4月12日、KJ-500と各機種の侵入範囲は、台湾の南西部で、侵入方向が南であった。

 侵入航跡を切り取り、東に侵入方向を変えると、台湾侵攻を想定したものだったことが分かる。

 もし、実際に、東に進路をとっていれば、その横暴は許されるものではない。国連や日本は、台湾海峡の危機を真剣に受け止めるべきだ。』

『戦闘機の実戦的飛行の一つである夜間飛行は、この期間に、J-10戦闘機2機が1回、J-11戦闘機2機が1回、J-16戦闘機2機が1回の合計3回だけだった。

 少ない理由は、実戦的な夜間飛行能力が低いのか、台湾機とのトラブルを避けているのかのどちらかである。

 海上での夜間飛行は、真っ暗で空間識失調になりやすく難しい。海上での夜間飛行回数が極端に少ないことは、夜間飛行能力が低いためであろう。』

『空軍機侵入は弾道ミサイル攻撃のため

 情報収集の主な手段は、自国の通信情報収集施設や偵察衛星によるものだ。情報収集機等が敵国に接近して、より正確な情報を収集する方法もある。

 情報収集機、電子戦機、対潜哨戒機を合わせた情報収集活動の日数が172日である。

 中国空軍機が接近・侵入した全日数は183日であるが、そのうち、172日が情報収集機などの単独、あるいは戦闘機・爆撃機等と連携した形での情報収集活動だった。』

『情報収集機は、対空ミサイルを搭載してはいないとはいえ、情報収集飛行であっても、防空識別圏に入ってくれば、戦闘機や爆撃機ほどではないが、軍事的圧力の一種である。
 情報収集機などが接近して収集した情報が、弾道ミサイルや戦闘機・爆撃機の射撃目標となるのである。』

『最も頻繁に接近飛行した空軍機は、4隻の台湾潜水艦を追う対潜哨戒機だ。

 台湾に接近した中国空軍機の機種は、対潜哨戒機、情報収集機、電子戦機、早期警戒管制機、爆撃機および戦闘機の6機種だ。

 これらの機種で最も活動日数が多かったのは、対潜哨戒機で、123日だった。台湾の潜水艦は、1945年と1985年前後に建造された旧式の潜水艦の4隻と100トンクラスの特殊潜航艇2隻だけだ。

 中国海軍は、たった6隻の潜水艦・艇の情報を収集するために、最も頻繁に活動している。中国軍は、台湾の潜水艦の動きに、かなり神経質になっていることが分かる。

2021年5月20日の飛行航跡を見てのとおり、対潜哨戒機が台湾の周辺を飛行している。台湾を不安にさせる軍事的な威嚇そのものである。

2021年5月20日、対潜哨戒機1機等飛行航跡とY-8対潜哨戒機

出典:台湾国防部HP
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*対潜哨戒機は、潜水艦を探知するために、全長が長いアンテナを搭載している。このため、後部部分が長く突き出しているのが特徴だ』

『爆撃機の台湾周回飛行は威嚇行為そのもの

 爆撃機の台湾周辺飛行は、7日で26機である。侵入機種の中では最も少ない。

 このことから、爆撃機は、台湾にミサイル攻撃する想定は少なくて、主に、西太平洋上の米艦艇やグアム基地にミサイルを撃ち込むために運用されると考えてよい。』

『中国空軍爆撃機が短距離を飛行する場合は、戦闘機が掩護飛行を実施する。

 台湾を周回するような長距離の飛行になると、最新の戦闘機でも航続距離に限界があって、全飛行行程を掩護することができていない。

 現代戦において、爆撃機の飛行には、戦闘機の掩護飛行が必要だと考えるが、実際には中国空軍戦闘機の掩護飛行は行われてはいない。

 つまり、戦闘状況下の空中戦闘を想定しての飛行を実施してはいないということだ。

 平時に爆撃機が台湾周回飛行を行い、ミサイル発射訓練の様相を見せつけるのは、あくまでも、軍事的威嚇が狙いである。

 実戦では、台湾軍の防空ミサイルが存在している状況で、爆撃機が低速で接近すると、防空ミサイルで容易に撃ち落とされる。戦時には、下の写真にあるような状況は生じない。』

『威嚇飛行は武力侵攻の前段階

 2021年6月15日、戦闘機20機、爆撃機4機、AWACS2機、対潜哨戒機1機、電子戦機1機の計28機が、台湾南西部の防空識別圏に入った。

 1日に侵入した機数としては最も多い。いずれも台湾の南西沖から入り、一部は台湾の南東沖まで回り込んだあと引き返した。

 これらの飛行は、AWACSを要として、情報提供や指示を出すなど組織化された動きではある。

 だが、飛行航跡を見れば、実際の空中戦を想定してものではなく、ただ単に、台湾に見せつけることが狙いであったようだ。』

『侵入機数の増加は、2020年9月から頻繁に行われるようになった中国空軍による一連の威嚇飛行の延長線上にある。

 とはいえ、G7の首脳宣言が台湾問題に言及したこと時期が重なっていることから、これらへの反発を示すため、投入機数を増加したとみられる。

 これらの投入機数や見せつける威嚇の動きは、台湾に侵攻して成功する戦力レベルには十分に達してはいない。

 そのため、今後は、台湾全域で、AWACSを要として数十機の戦闘機グループが波状攻撃できるレベルになるような訓練をするようになるだろう。このレベルに至れば、侵攻の危機に達したとみるべきであろう。

 今後ますます過激な威嚇飛行が行われるようになるだろう。これは、日米欧の発言などにかかわらず、継続して行われると見るべきである。

 なぜなら、中国空軍機の威嚇飛行は、武力侵攻の前段階だからだ。』