発電用石炭13年ぶり高値

発電用石炭13年ぶり高値 中国の生産停滞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0918U0Z00C21A7000000/

『発電用の石炭(一般炭)がアジア市場で高騰している。指標となるオーストラリア産のスポット(随時契約)価格は約13年ぶりの高値をつけた。国内の生産が停滞した中国がインドネシアなどから輸入を増やし、アジア域内の需給が引き締まった。石炭の値上がりは日本の電力料金の押し上げ要因になる。

豪州産の一般炭のスポット価格は7月中旬時点で1トン139ドル程度。昨年末に比べ7割近く上昇し、2008年9月以来の水準にある。今年に入って上昇基調を強め、3月に97ドル程度と約2年ぶりの高値を記録。4月に下落したが、5月後半以降は再び水準を急速に切り上げている。

値上がりの主な要因と指摘されているのが、中国内での供給の停滞だ。7月1日に開催された中国共産党の創立100周年の記念式典に際し、式典前に大きな事故が発生するのを避けようと「中国内の炭鉱の操業規制が強化された」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構=JOGMEC=の国吉信行氏)。

中国は世界の石炭需要の約半分を占め、年間で30億トン程度の一般炭を消費する。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の21年の石炭消費量は20年比で4%増える見通し。電力需要が20年比で8%増え、その多くを石炭火力発電が占めるとみられている。

中国の20年の一般炭輸入量は2億2千万トン強と、国内消費量の1割弱を占める。国内炭の比重が高いが規制で国内供給が細ったこともあり、海外炭の需要が強まった。

主要な調達先だった豪州からの輸入は政治的対立を背景に停止しているため、代わりに世界第3位の生産国であるインドネシアや、ロシアなどから「代替的に調達を強めている」(国吉氏)。

世界的に脱炭素の動きが進むなか、発電コストが低い石炭火力はアジアなどを中心に電源での存在感は大きい。IEAが4月に公表した予測では、石炭火力発電所の発電量は21年に約480テラ(テラは1兆)ワット時増える。太陽光発電と風力発電の合計を上回る増加幅だ。

日本も原子力発電所の再稼働が進まず、石炭火力に一定程度依存している。中国が周辺国から積極的に買い付け、購入しにくくなった日本や韓国などは豪州からの仕入れを増やしている。

引き合いが増える豪州は供給懸念が起きている。主要港で大型の船積み機械の故障が続き、今秋まで稼働できない状況が続く見通し。鉱山から港までを結ぶ鉄道の事故も散発的に起きているようだ。急増する需要に対応しきれていない。

中国共産党の記念式典が終わり今後は中国内の生産量が戻るとの観測が出ている。一方で大幅には値下がりしにくいとの見方も根強い。「年内までの契約分はすべて売り切ったと話す石炭生産者もいる」(発電事業者)など供給余力の乏しさを指摘する声がある。

アジアを中心にワクチン接種で経済正常化が進めば、電力消費も拡大する。Jパワーの担当者は「秋に相場が下落しても(電力需要期である)冬場には再び上昇するのではないか」と警戒する。

日本の電力大手は長期契約での石炭調達が主体だ。ただ今夏は平年より気温が高くなるとみられていることもあり、スポットの調達も増えているもようだ。スポット価格の高騰が続けば長期契約の価格に影響が及ぶ可能性もある。

電力各社は貿易統計から基準となる燃料価格を算定し、料金に反映する「燃料費調整制度」を採用している。石炭高を受け電力料金が上昇すると、企業や家計の負担増につながりかねない。』