格差広げる「ゼロ円コピー」 勝者総取り、多様性奪う

格差広げる「ゼロ円コピー」 勝者総取り、多様性奪う
デジタルのジレンマ(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25E830V20C21A5000000/

※ コスト構造が、「大変革」したんだな…。

※ 色の濃い部分の「面積」が、「総利益」というわけだ…。

※ こうしてみると、「プラットフォーマー」の取り分は、大きいな…。

※ 「巨大IT企業規制」が、問題になるわけだ…。

※ しかし、その「プラットフォーマー」の「プラットフォーム」こそが、「利益の源泉」というわけだからな…。

※ 解決は、なかなか難しい…。

『男女2人組の音楽ユニット「YOASOBI」。2019年結成ながらデビュー曲の「夜に駆ける」がSNS(交流サイト)上で人気を博し、CDを1枚も発売せずに20年末のNHK紅白歌合戦に出場した。

【前回記事】崩れる富の分配 消えた500億ドル
CDが最盛だった90年代後半、人気上位のアーティストは年間100万枚以上のシングルを売っていた。1枚1000円のCDにかかる製造コストは120円程度。ヒットメーカーとして大量のCDを用意するには最低でも1.2億円が必要だったが、ネットの時代は極論すれば楽曲の量産コストがゼロ円で済む。

限界費用ゼロ
優れたアイデアがあれば、その後はコピーを通じてサービスがほぼ無限大に広がる。生産を1単位増やすために必要な「限界費用」がかからないのがデジタル経済だ。

量産コストがゼロならば流通価格もゼロに近づき、消費者の「お得感」が増す。米スタンフォード大学のエリック・ブリニョルフソン教授らが19年にまとめた調査を基に日経が推計したところ、米国人はグーグル検索など無料のデジタルサービスに年間約355万円支払ってもよいとの数値が出た。

サービスをタダや低価格で供給しながら利益をあげているのがプラットフォーマー企業だ。米フェイスブックや米グーグルは膨大なユーザーデータを集めて広告収入に変えた。スウェーデンの音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーは1億人を超える有料会員が収益基盤を支える。

民主主義に影
一方で「勝者総取り」の弊害もある。米ローリングストーン誌の20年の音楽配信調査では、上位1%のアーティストの曲が総再生回数の9割を占めた。CDでは上位1%が稼ぐ売り上げは全体の5割程度。楽曲配信の収益は再生回数に応じて還元されるため、一部のスターにもうけが集中する。米国でバンド活動をするジョーイ・デフランチェスコさんは「CD時代と異なり無名のアーティストは稼げなくなった」と嘆く。

ネットは万人に発信と活躍の機会を与えるとの期待があったが、ゼロ円コピーの結果、収益機会を奪われるコンテンツの作り手も少なくない。米オハイオ州ヤングスタウンでは、150年以上の歴史があった日刊紙「ザ・ビンディケーター」が19年8月に廃刊を宣言し従業員144人を解雇した。ワシントン・ポスト紙のメディア担当コラムニスト、マーガレット・サリバン氏は「コミュニティーにとって損失だ」と話す。

米国では過去約15年で地方紙の25%にあたる2100紙が廃刊となった。ノースウェスタン大学のペニー・アバナシー客員教授は「地域の教育委員会や議会を取材する人がいなくなれば民主主義の喪失につながる」と懸念する。

従来のイノベーションは消費者と生産者の便益を共に増やしてきた。野村総合研究所の森健氏は「デジタル経済の下では生産者が圧迫されがちだ」と分析する。勝者が限られれば製品の多様性は失われ、消費者の選択肢が奪われる。経済の推進力すらそぎかねない。

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浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長

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分析・考察 クリエイターの多様性はプラットフォーマーが採用する収益還元モデルに依存します。音楽サブスクにおける再生回数ベースのモデルは偏りを生みがち。一方、日本の電子コミック市場は現在も1巻単位の購入が主流で、これが多様な作家の活躍を促しています。Yahoo!ニュースやスマートニュースなどは地方新聞の地域発ニュースを積極的に取り上げ、ニュースの多様化に貢献しています。

とはいえ、現在の還元モデルは未だにプラットフォーマ―側に圧倒的有利です。企業なら合従連衡で交渉力を高められますが、個人クリエイターはそうはいきません。「少数プラットフォーマーと多数のクリエイター」を前提に競争環境を整備する必要があります。

2021年7月14日 7:21 いいね 』