根回しはひきょうじゃない 部長の反撃は先にくらえ

根回しはひきょうじゃない 部長の反撃は先にくらえ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC236X50T20C21A6000000/

『ベストセラー「入社1年目の教科書」の著者、岩瀬大輔さんに聞く「部長の倒し方」。3回目のテーマは、会議で部長の壁を越えるための根回しです。
企画立案を進めるにあたって、越えなければいけないのが部長の壁です。

「成功例」を先に押さえよう

企画書の作成に悩んでいる方にオススメしたいのは、先輩や上司から過去の企画書を見せてもらうことです。厳しい審査を通過する企画書とはどんな構成で作られているのか、自分の企画書とは何が違うのかを洗い出します。先に企画書の「成功例」を押さえてしまうわけです。

いくつもの企画書に目を通す中で、部長がどんな目線で企画を判断しているかも次第に理解できるようになります。

若手コンサルタントだった頃、ある大手電機メーカーに提案書を持参した時のことです。応対した役員が資料にほとんど目を通さないまま「つまらん提案をするんじゃない!」と怒り始めました。当時は理不尽に感じましたが、今振り返れば、あの役員は他のコンサルから同じような提案書をたくさん持ち込まれていたのでしょう。

私は企画書を作成するときは必ず、持ち込む相手の経歴や実績を調べ、どういう話題なら興味を持ってくれるか、どういう道筋で話を進めるかを考えるようにしています。相手の立場になって物事を見る、どんな優先順位で判断を下すかを考える想像力はビジネスでは非常に重要な能力です。

根回しで得られる6つの効果

企画内容を議論する会議では、先に「正解」を用意する方法もあります。いわゆる、部長への「根回し」です。根回しの語感は決して良くありませんが、ミーティングを円滑に進めるための重要なステップととらえてください。

根回しの効果は6つあります。
①前提情報の共有
②論点の洗い出し
③初歩的な質問に対する回答
④思考の整理
⑤合意形成
⑥対処可能な反論をつぶせる

 ーーです。

具体的には、会議で使用する資料をあらかじめ部長に見せて意見を求めたり、企画の懸念点を聞いたりします。話をするときには、質問事項を書き留めたメモを見せながらが効果的です。聞き逃しを防げますし、しっかり準備をしていることも印象づけられます。

会議本番は、事前の根回しで部長から指摘してもらった反対意見や不安材料についての回答を準備して会議に臨みましょう。その場で企画の弱点を突かれて慌てるよりも、あなたの説得力は高まり、話し合いが行き詰まることなく、議論を次のステップに進めることができます。

とはいえ、根回しがひきょうに感じられる人もいるかもしれません。その場合は、会議本番で「事前の説明でいただいた指摘」として、参加者全員に見せてしまうのはどうでしょうか。根回しの内容をオープンにすれば、後ろめたさもなくなります。

予習・本番・復習は等分に

私は仕事の予習、本番、復習には3:3:3の法則があると考えています。予習、本番、復習にかけるべき労力は等分ということです。つい、「1:9:0」や「0:10:0」にしていないでしょうか。根回しとは、この予習にあたる必須作業なのです。

会議本番についても話しておきます。入社1年目のみなさんは何らかの方法で会議に貢献することを考えてください。コピー取りでも、資料配りでも構いません。あなたが会議に参加する資格を確保する必要があります。

国際イベントで講演する岩瀬さん

そして、必ず何か発言すること。トンチンカンな発言でも良いのです。部長は新人のあなたに成果を期待していません。しかし、入社したばかりのあなたの見方が部長たちには新鮮で、議論に新しいアプローチを提供できるかもしれません。本社からは見えにくいリアルな現場情報や顧客の生の声も喜ばれます。

議事録づくりは学びの宝庫

会議の書記役、つまり議事録取りも新人の重要な役割です。頼まれなくても、率先してやりましょう。議事録は意思決定のプロセスにおいて非常に重要であり、役所では議事録が「命」と言えるほどの存在感を持ちます。

議事録作成は簡単な作業ではありません。勘違いしている会社も多いのですが、議事録は会話を一言一句、書き取る必要はなく、議論の大きな流れを意識して、要点や決定事項だけを簡潔に記します。最初は大変ですが、議事録取りを続けるうちに議論のポイントを押さえたり、発言の要旨をくみ取ったりする力が養われます。

作成した議事録は24時間以内に参加者全員で共有します。そして、決定事項を改めて確認し、参加者の認識を擦り合わせます。また、議事録の体裁や内容には先輩や上司から様々な指摘があるでしょう。これこそ学びの宝庫。復習に最適です。

次回は最終回、部長に惚(ほ)れてしまう方法をお伝えします。 』