北朝鮮、中国に接近

北朝鮮、中国に接近 食糧政策・対米外交で行き詰まり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM122CV0S1A710C2000000/

『【ソウル=鈴木壮太郎、北京=羽田野主】北朝鮮が中国に接近する動きを見せている。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は中朝友好協力相互援助条約の締結から60年に合わせ、対米政策での中朝協力への期待をにじませる祝電を打った。中国は経済支援をちらつかせて影響力を高めようとしている。

11日、金正恩氏は中国の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)に宛てた祝電で、相手が攻撃を受けた際の軍事援助を定めた同条約の意義を指摘した。「敵対勢力による挑戦と妨害の策動が悪辣(あくらつ)になっている今日、両国の社会主義を守り推進し、アジアと世界の平和と安定を保障する強い力を発揮している」と述べた。中朝関係の強化・発展は「わが党と政府の確固不動の立場である」と強調した。

習氏は金正恩氏への祝電で「世界ではこの100年で初めて直面する大変化が急速に進んでいる。金総書記とともに戦略的な意思疎通を強化し、中朝関係の前進方向を定め、親善協力関係を新しい段階へと導く用意がある」と伝えた。中朝関係の強化をうたう内容に大きな違いはないが、金正恩氏が「敵対勢力」に言及する一方、習氏は触れていない。

韓国世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)北朝鮮研究センター長は「金正恩氏が中国とだけ協力し、米国とは敵対関係を続けるという『通中排米』の立場を示した。一方、習氏は朝鮮半島情勢を安定的に管理するという意志を示した」と分析する。

朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮労働党序列2位の崔竜海最高人民会議常任委員長は9日、中朝は「革命戦友、親しい兄弟、頼もしい同盟者として互いに支援してきた」と語った。中国の李進軍駐北朝鮮大使との会談で話した。崔氏は「同盟者」との表現を使い、両国の特別な関係を強調した。

北朝鮮が中国に接近するのは米国のトランプ前政権との非核化交渉が決裂し、中国依存を強めざるをえなくなっている事情がある。前提条件なしの対話を求めるバイデン米政権から譲歩を引き出すには中国の支持が欠かせないとの判断がある。

国内の食糧事情も厳しくなっている。金正恩氏は6月15日の朝鮮労働党中央委員会総会で「人民の食糧事情が切迫している」と訴えた。

中朝関係筋によると、北朝鮮は毎年550万トン程度の食糧を必要とするが、ここ数年は毎年100万トン程度が不足する状況が続いている。今年も昨年の気象状況などでさらに生産量が減る見通しだ。韓国政府系シンクタンク、統一研究院の報告によると、今年に入り北朝鮮の主食であるトウモロコシの市場価格が徐々に上がり、6月はコメ価格が急騰した。

中国は北朝鮮を貴重な対米カードとして位置づけてきたが「これまで十分にコントロールできていなかった」(共産党関係者)。北朝鮮の苦境を影響力を高める好機とみているフシがある。

習氏は祝電で「中国は北朝鮮が経済・民生を発展させ、社会主義建設事業を強力に推し進めるのをゆるぎなく支援する」と強調した。食糧支援などを示唆した可能性がある。

王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3日、清華大学の講演で「北朝鮮が情勢緩和の面でとった措置を考慮し、米国は誠意を示し、応えるべきだ」と主張した。「朝鮮半島は中国の玄関先の事柄で、建設的役割を果たしていく」と続け、関与を強める構えをみせた。』