ハイチ大統領暗殺から1週間

ハイチ大統領暗殺から1週間 権力の空白、混乱に拍車
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN140CE0U1A710C2000000/

『【メキシコシティ=宮本英威】カリブ海の島国ハイチでモイーズ大統領が暗殺されてから14日で1週間を迎える。ハイチ警察は逮捕した米在住の医師を首謀者の1人だとみて取り調べを進めているが、現時点では全容は明らかになっていない。大統領の不在によりハイチ政界では権力争いもおきており、同国と関わりが深い米政府も動向を注視している。

「政治的な目的のためプライベートジェット機でハイチ入りした」。ハイチ警察は11日、同国出身で米南部フロリダ州在住の医師クリスティアン・エマニュエル・サノン容疑者(63)を7日未明の事件の首謀者の1人として逮捕したと発表した。

モイーズ氏は首都ポルトープランス郊外の自宅で12発の銃弾を受けて死亡した。マルティヌ大統領夫人も負傷したが、一命をとりとめた。

先に捕まっていた実行犯が、犯行直後に連絡したのがサノン容疑者で、住居からは武装集団が装った米麻薬取締局(DEA)の帽子、弾薬、銃のケースなどが見つかった。米フロリダ州に拠点を置くベネズエラ系警備会社CTUを介してコロンビアの元軍人を実行犯として雇っていたとされる。

ジョゼフ暫定首相の会見場に置かれたモイーズ氏の写真(13日、ポルトープランス)=ロイター

ハイチ警察はこれまでハイチ系米国人3人とコロンビア人18人を逮捕した。米国人のうち1人は、過去にDEAの情報提供者だった。サノン容疑者は大統領就任への野望があったようだが、詳しい動機は不明で、全体の構図も見通せていない。

事件の際、モイーズ氏の警備担当者の負傷は報じられなかった。警備責任者は1~5月にコロンビア経由でエクアドル、パナマ、ドミニカ共和国を複数回訪問していたとの情報もあり、関与の疑いが持たれている。

ハイチ国内では大統領の暗殺に伴う権力の空白で混乱は深まっている。ジョゼフ暫定首相は警察の会見に同席し、実質的に統治しているが、他にも2人の有力者がいる。モイーズ氏が死去する前の5日に次期首相に任命したが宣誓はしていなかったアリエル・アンリ氏、定足数を満たしていない議会が新たに暫定大統領に指名したジョゼフ・ランベール議長だ。誰に正当性があるかは専門家の間でも割れている。

米政府はハイチの混乱拡大を警戒している。ハイチ当局の捜査に協力するため、司法省や国土安全保障省の幹部らをハイチに派遣して情報収集を進めている。バイデン大統領は12日、「ハイチの政治指導者は国のために一体となる必要がある」と述べており、ハイチ国内での混乱収束を期待している状況だ。

ハイチ側からは米軍派遣を求める声もある。治安悪化に伴い、港湾や空港、石油施設といった重要インフラの保護をしたいと考えているためだ。ただ米国側は「まだ検討中」(ホワイトハウスのサキ報道官)としており、事態の推移を見守っている。』