ラオス、中国が2兆円高速整備 深まる依存

ラオス、中国が2兆円高速整備 深まる依存
年間歳出の約4倍 債務のわなに懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS06C8W0W1A700C2000000/

『【バンコク=岸本まりみ】東南アジアの小国ラオスで、中国政府の支援による高速道路の建設計画が加速している。中国の広域経済圏構想「一帯一路」の下、中国の経済支援や投融資で大半がまかなわれる。膨らむ対中債務の返済に窮すれば「債務のワナ」に陥るとの懸念も高まるが、新型コロナ禍で経済が冷え込む中、ラオスは景気回復のために中国主導の大型開発に頼るしかないのが実情だ。

ラオスの首都ビエンチャンの郊外。ときに牛が歩く姿が目撃されるのどかな地方に近代的な道が延びる。ビエンチャンと中部の観光地バンビエンをつなぐ約110キロメートルで2020年末に開通した高速道路だ。一帯一路の一環として進む全長約440キロメートルの「中国ラオス高速道路」の最初の開通区間で、ラオスにとっては初の高速道路だ。

これまで3時間以上かかっていた同区間の移動時間は開通で2時間以下に短縮された。利用したラオス人男性(35)は「便利で安全だ。高速料金がかかっても時間とガソリンの節約になるし、悪路を走るよりいい」と喜ぶ。

中国主導の高速開発計画は中国ラオス高速道路だけではない。中国国営新華社通信やラオス国営メディアによると、ビエンチャンと南部パクセーを結ぶ高速道や、中国国境沿いのボーテンからタイ国境のボケオを結ぶ高速道の計画も浮上する。

報道された計画の建設費を単純集計すると、ラオス全土で進む中国主導の高速建設計画の総建設費は180億ドル(約2兆円)規模になる。ラオスの20年度歳出の4倍超、国内総生産(GDP)に匹敵する。

最初に開通したビエンチャン―バンビエン区間は、中国企業が95%を出資して建設した。高速道路を建設した中国企業が通行料収入などを50年にわたって得た後、ラオス側に譲り渡す「建設・運営・譲渡(BOT)」方式だ。ラオス政府の出資は5%にとどまるが、財政赤字の続く小国にとって負担は小さくない。

すでにラオスの対中債務は膨らみ続けている。世界銀行によると、ラオスの2国間の公的債務残高の75%は中国からの借り入れが占める。公的債務残高はGDP比で60%を超えており、返済には黄信号がともる。格付け会社フィッチ・レーティングスはラオスの外貨準備高が債務返済に不十分とし、20年9月にラオスの格付けを「Bマイナス」から「トリプルC」に引き下げた。

返済が滞れば、重要インフラの権利を中国側に握られる「債務のわな」に陥る可能性もある。18年には米シンクタンク、世界開発センターが対中債務が特に過大な8カ国の一つにラオスを挙げた。中国の影響力が増せば、南シナ海問題などで中国寄りの立場をとらざるを得なくなり、中国と対立する日米や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との摩擦を生みかねない。

それでも、ラオスには中国に頼らざるを得ない事情がある。3月に発足したラオスの新内閣は後発発展途上国からの脱却を急ぎ、25年までの社会経済開発計画で年4%以上の経済成長を目標に掲げる。ただ、新型コロナ禍で経済は冷え込む。成長エンジンの一つと位置づけていた観光産業が沈む中、中国主導の大型開発プロジェクトに頼る以外に経済回復の方策は乏しい。

一党支配の社会主義国ラオスではいまのところ目立った反政府運動は発生していないが、経済面での不満が高まれば、市民の批判の矛先が政府に向かう可能性もある。』