[FT]EU、資金洗浄対策に新機関設置へ

[FT]EU、資金洗浄対策に新機関設置へ
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『不祥事の続発を受けてマネーロンダリング(資金洗浄)の取り締まり強化を図る欧州連合(EU)は、直接的な監督権を持つ新機関を設置しようとしている。

EU域内では毎年、数千億ユーロもの疑わしい取引が行われているとみられる=ロイター

フィナンシャル・タイムズ(FT)が入手した原案によると、EUの欧州委員会は今月、アンチ・マネーロンダリング・オーソリティー(AMLA)の設置法案を提出する。実際の立ち上げは2024年を予定している。

AMLAは26年以降、国をまたいで活動する金融機関を直接監督し、マネロン規制に違反した企業に総額数百万ユーロ(数億円)の罰金を科せるようになる見通しだ。

域内各地で不祥事が発生しているEUにとって、今回の取り組みは最も大胆な不正資金対策となる。域内では毎年数千億ユーロに上る疑わしい取引が行われているとみられるが、加盟国間で法執行のあり方にばらつきがある上、一部の国が既存のマネロン防止指令を完全に実施しようとしないことで、EUとしての毅然とした対応がとれなくなっている。

欧州委員会の狙いは、規制実施の足並みをそろえて当局間の協調性を高め、各国の資金情報機関(FIU)同士の風通しを良くすることだ。新機関は、多くのEU加盟国で活動する「最もリスクの高い」金融機関の直接監視にもあたる。

総勢250人の陣容

法案は今後、欧州議会と加盟国の間で内容を詰めることになるが、原案には、マネロンやテロ資金供与に関するEU共通の単一ルールブックや暗号資産(仮想通貨)に関する新たな規制の制定も盛り込まれている。新機関は罰金を科すこともでき、その総額は(当該金融機関の)いわゆる年間売上高に相当する金額の10%か1000万ユーロの高い方を超えない範囲としている。

新機関設置法案の付属文書によると、AMLAは総勢250人となる見通しで、新体制の「中枢」の役割を担う。本部をどこに置くかは言及されていない。

法案には「新機関は、国際金融部門の最もリスクの高い活動主体に対し直接監督して決定を下すことによって、EU域内の(マネロン・テロ資金供与に絡む)案件の防止に自ら貢献する」と書かれている。

さらに「新機関は各国の監督当局をまとめ上げ、単一ルールブックの執行のほか、均質かつ質の高い監督基準や取り組み、リスク評価の方法の確保で実効性が高まるよう支援する」という。

ABLV、ダンスケ銀などで不祥事相次ぐ

マネロンはEU域内で重大な問題となっており、欧州刑事警察機構(ユーロポール)は疑わしい取引の総額を域内総生産(GDP)の1.3%相当と推計している。欧州会計監査院(ECA)は6月に公表した報告書で、当該のEU法が「速やかに一貫した形で」実施されるようもっと努力をする必要があり、現行の監視の枠組みは「細かく分かれていて協調が不十分だ」と警告した。

18年に米国の法執行当局が明るみに出したラトビアの銀行ABLV(後に清算)での組織的なマネロンなど、近年の金融業界の不祥事が問題の大きさを浮き彫りにしている。ABLVには主にロシアから不正資金が流れ込んでいた。07?15年にかけてデンマークのダンスケ銀行のエストニア支店を経由していた疑わしい取引などもある。

「法案は間違いなく大きな進展で、何年にもわたる圧力が実を結ぼうとしている」と、EUの体制強化を求めてきた欧州議会の緑グループの議員スベン・ギーゴルト氏(ドイツ)は言う。「マネロンに対する新たな枠組みはEUと単一市場にとって大きな前進だ」

同氏は同時に、欧州委員会は現行の規制を実施していない加盟国に対し、違反手続きを取る必要があるとも強調する。「マネロンに対し、欧州委員会はゼロ・トレランス(不寛容)方針で臨む必要がある」

By Sam Fleming

(2021年7月7日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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