偏西風蛇行で米欧が異常高温 日本の梅雨前線にも影響

偏西風蛇行で米欧が異常高温 日本の梅雨前線にも影響
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK051MT0V00C21A7000000/

※ 偏西風が蛇行すると、「熱波が襲来する」ことがあることは、知らんかった…。

※ なるほど、その「空隙」に、通常はブロックされるハズの地域にも、「熱波が到達する」ことになるのか…。

『米国北西部やカナダ西部が熱波に見舞われ、欧州も6月は記録的な高温となった。北半球の上空を吹く偏西風が大きく蛇行したためで、日本付近に活発な梅雨前線が停滞しているのにも関係している。いったんこうしたパターンが定着するとすぐには解消しない。大規模な山火事や農作物の収穫減など、被害が拡大する懸念がある。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は7日、6月の北米の平均気温が過去30年間の平均値より1.2度高く、6月として過去最高となったとするリポートをまとめた。ヨーロッパでも6月として過去2番目の気温の高さだった。

今回の異常高温に大きな影響を持つとされるのが偏西風だ。西から東へ吹く上空の強風で、高気圧や低気圧はこれに流されるように西から東へ移動する。北極上空から見ると反時計回りに円を描いたような流れだが、時折蛇行が発生する。

気象庁のまとめなどによると、米国西部上空では5月末~6月初めに蛇行が大きくなり、いったんおさまったものの、6月下旬にさらに大きな蛇行が現れた。6月としては、めったにないような大きな蛇行になったという。蛇行により南から北へ向かう強い流れが生じた地域に暖気が流入し、暑くなった。

蛇行が非常に大きくなると周囲から切り離されて流れがよどんだ部分ができ、高気圧や低気圧の動きがほぼ止まる「ブロッキング」が起きる。米国北西部からカナダ西部にかけては、このために背の高い高気圧に覆われ続けるようになった。

高気圧内では上から下へ向かう空気の流れが生じ、圧縮されて気温が上がる。手押しの自転車の空気入れが熱くなるのと似ている。同時に乾燥も進む。熱い空気ですっぽり覆われたようになり、「ヒートドーム」と呼ばれる。

カナダの史上最高気温を更新した西部ブリティッシュコロンビア州では、6月29日までの5日間に高温が原因とされる死者が486人に上った。

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6月29日に49.6度を観測した同州の村リットンでは山火事により周辺地域の住民を含む1000人が避難を余儀なくされ、村の9割が焼失した。高温で乾燥した空気下では枯れ葉の摩擦などで自然発火のリスクが高まるうえ、炎が燃え広がりやすい。リットン付近で発生した山火事は周辺地域に大きく広がった。

米国でも熱波の影響が広がる。オレゴン州都セーラムの最高気温は6月下旬に観測史上最高の47.2度に達し、ポートランドの空港でも46.1度と記録を更新した。雨が多く日照時間が短いポートランドは冷房や空調など猛暑への備えが整っておらず、家電量販店でエアコンが売り切れたほか、バーやレストランは休業を余儀なくされた。

日本はシベリアの偏西風の蛇行の影響を受けて気圧配置があまり変わらなくなり、梅雨前線が停滞して大雨の降りやすい状況が続いている。

偏西風の蛇行は全体として徐々に東へ移っている。米国の熱波は最悪期を脱したようだが、ヒートドームが消えて平年並みになるにはもう少し時間がかかりそうだ。

北半球全体の気温は温暖化のために高めに推移しており、そこに偏西風の蛇行に伴う暖気の流入が加わった。温暖化の分だけ、気温が「げたを履いた」可能性がある。

温暖化が実際にどの程度影響したかを調べる研究は「イベント・アトリビューション」と呼ばれ、日米欧で盛んだ。数値モデルを使い、温暖化が存在しない場合の計算結果と現実とを比べる。

「ワールド・ウエザー・アトリビューション」というプロジェクトを進める国際研究グループが日本時間の8日公表した速報では、6月末の米国やカナダの熱波は「人為的な気候変動の影響なしには説明がつかない」とした。温暖化がなければ各地の気温は約2度低かった可能性があるという。今後は極端な高温がさらに現れやすくなる恐れがあると警告している。

(編集委員 安藤淳、ニューヨーク=白岩ひおな)』