中国、スリランカ「支配」を強化 高速道18年間保有へ

中国、スリランカ「支配」を強化 高速道18年間保有へ
不透明な競争入札、ラジャパクサ政権の意向も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB086XF0Y1A700C2000000/

『【コロンボ=ムンザ・ムシュタク、杉浦恵里】中国が主導するインフラ整備計画を巡り、同国によるスリランカの「支配」が強まってきた。中国国有企業の中国港湾工程(CHEC)がスリランカで高架式の高速道を建設し、18年間は保有することになった。競争入札の過程が不透明で、親中とされるラジャパクサ政権の意向が働いた可能性もある。

中国港湾工程は中国交通建設(CCCC)の子会社だ。5月には最大都市コロンボ郊外での延長17キロメートルの高速道路の建設案件をスリランカ政府から受注した。中国港湾工程は建設した高速道路を所有し、元本を回収して利益をあげ、18年後にはスリランカ政府に引き渡す建設・運営・譲渡(BOT)方式を採用する。

結果として、中国港湾工程はスリランカで高速道路を所有する初めての外国企業になる見通しだ。

BOT方式は、資金の乏しい発展途上国が外資をはじめとする民間活力を利用してインフラを整備する有効な手段だとされる。だが、コロンボ大学講師のウメーシュ・モラムダリ氏は「(BOT方式が)有効であるには、競争入札が透明性を確保したうえで実施されるべきだ」と指摘する。スリランカの利益になるはずの高速道計画が多くの疑いをはらんでいるというわけだ。

中国港湾工程はスリランカで、同国南部ハンバントタ港の整備計画などを手がけてきた。ハンバントタ港の整備は中国からの融資を受けたが、返済に窮したスリランカ政府が同港の99年間の運営権を中国側に譲渡した。中国による「債務のワナ」の典型例だとされる。
ハンバントタ港はスリランカのマヒンダ・ラジャパクサ首相の地元にあり、同氏が大統領を務めた時期に整備が進んだ。マヒンダ氏の大統領在任中、スリランカはほかのインフラ計画でも中国から多額の投融資を受け入れた。現在はマヒンダ氏の実弟、ゴタバヤ・ラジャパクサ氏が大統領を務め、兄弟が二人三脚で政権を運営する。

中国港湾工程は現在、14億ドル(約1540億円)を投じて「コロンボ・ポートシティー」と呼ばれる港湾都市を建設している。将来の「金融ハブ」を想定する。だが、スリランカ側はこの港湾都市の権益を中国側に与える法律を早期に成立させ、野党などが批判する。スリランカ側は、ここで営業する外資の銀行、企業をコントロールできない。マネーロンダリング(資金洗浄)など不正行為の温床になる懸念も語られるようになった。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョナサン・ヒルマン上級研究員は、スリランカなどへの中国による不透明な融資が「影響力確保の手段になる」と話す。「(中国による)天然資源への優先アクセス、将来の契約などを認めるよう融資先の国に圧力をかける可能性がある」と改めて説明する。

中国港湾工程の親会社である中国交通建設は2020年8月、南シナ海の軍事要衝である人工島の建設を支援したとして、トランプ前米政権の制裁リストに載った。スリランカの近隣国バングラデシュは18年、中国港湾工程がバングラデシュでの高速道路の拡張計画に関連して同国の政府高官に贈賄を持ちかけたと指摘した。

中国港湾工程は15年、スリランカでマヒンダ氏の大統領再選を目指し、資金を提供したとされる。スリランカの捜査当局は、同社の銀行口座から計110万ドルが選挙活動に関わった当時のマヒンダ氏支持者に渡ったとみている。同社は疑惑を否定している。』