「盛り土リスク」浮き彫り 監視の目届かず、対策急務

「盛り土リスク」浮き彫り 監視の目届かず、対策急務
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE06B3S0W1A700C2000000/

『静岡県熱海市で発生した土石流は起点周辺の「盛り土」が被害を甚大化したとされ、山中に運ばれた土砂の災害リスクを浮き彫りにした。現場のように使用目的が不明確な盛り土は規制の網がかかりにくく、監視の目は行き届いていない。危険性の高いエリアの対策は急務だ。

「繰り返し不適切な行為があった」。静岡県の難波喬司副知事は7日午後、熱海市伊豆山地区で起きた土石流の起点周辺にあった盛り土の造成経緯に言及した。

土石流の起点となったかどうかははっきりしないものの、被害を大きくした要因とされる盛り土。伊豆山地区に住んでいた60代男性は「土砂を積んだとみられる大きなトラックが崩落現場周辺へ向かうのを何度も見た。大雨が降れば崩れるのではと不安だった」と話す。

一方、別の地元男性(63)は「上流に盛り土があるとは知らず、周辺は安全だと思っていた。土砂崩れのリスクがあると知っていたら、近所にも早めの避難を呼び掛けられたはずだ」と悔やむ。

盛り土を巡る規制は目的や規模によって分かれる。宅地開発のための盛り土には宅地造成等規制法が適用される。事業者は都道府県などへの許可申請が必要なほか、工法なども細かく規定され、土砂崩れを防ぐ措置も必要となる。

産廃の埋設については、許可された処分場以外での埋設を廃棄物処理法が禁止。処分場は崩落対策もなされるが、現場は同法に基づく許可申請などが出ていなかった。

宅地開発や産廃処理を除く目的で造成する場合の規制は、各自治体が条例に基づいて進める。難波副知事は記者会見で「条例では(不適切な施工を是正する)勧告や命令などは出せるが(他の法律と異なり)強制的な措置が取れない」と述べた。

盛り土に使われることが多い建設残土は再利用が可能なことから「私有財産」とみなされ、法律だけでなく条例の規制すらかからないケースも少なくない。

盛り土は国土交通省が把握する大規模造成地だけでも全国に約5万1千カ所。規制の網から漏れている小規模な盛り土は各地に点在しているとみられる。

北関東の自治体は「盛り土の点検は大規模なものに限って実施してきた」と話し、別の自治体も「小規模な工事が適正かどうかを調べるには少ない人員では難しい」と漏らす。

赤羽一嘉国交相は6日の記者会見で「関係省庁と全国の盛り土の総点検をする方向で考えないといけない」と述べたが、実施する上で課題となるのが点検の実効性だ。

大阪市立大の山田優名誉教授(土木工学)は今回の土石流の発生について「盛り土部分の強度や崩落対策に加え、行政のチェックが機能していたかどうかの検証が必要だ」と指摘する。

その上で「各地の盛り土についても国が主導する形で大雨時の災害リスクが高い地域を最優先で調べた上、リスクを住民に速やかに周知しなければならない」と強調している。』