急増する社外取締役 「器」作り優先、質は道半ば

急増する社外取締役 「器」作り優先、質は道半ば
企業統治の現実(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC308FR0Q1A630C2000000/

『日本の企業統治はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の導入で転機を迎えた。その象徴が、仲間うちだけの経営体制に外部の目を入れるための社外取締役の活用だ。東京証券取引所によると、指針に沿って2人以上の社外取締役を選任する東証1部上場企業は2020年8月時点で95%。導入前の2割から増えた。』

『今年6月の改定指針では全取締役の少なくとも3分の1以上への引き上げを求めた。「器」の整備はさらに進むが、一橋大学の伊藤邦雄CFO教育研究センター長は「形式の受け入れは進んだが、実質がついてきていない」と懸念する。』

『指針は強制ではなく、従わない場合は自社の事情を説明するという「コンプライ・オア・エクスプレイン」が認められている。だが実際には指針の定める原則の9割以上を「丸のみ」する企業が8割を超える。』

『形式主義は社外取締役や監査役の兼任の多さにも表れている。1社に関わる時間が減るため、ドイツは3社以上の兼任を認めていないが、日本では20年末時点で全上場企業の3社以上を掛け持ちする社外役員が556人いる。東急の野本弘文会長は三菱UFJフィナンシャル・グループ社外取締役など、上場企業5社の取締役を兼任する。』

『単なる数合わせに終わらせないために、人材の量と質をどう底上げするか。

企業統治で先行する米国では、ニューヨーク証券取引所が上場規則で取締役の教育状況を開示することを求める。ケロッグ経営大学院は、「アクティビストへの対応」「役員報酬の決定」といった内容を企業統治の研究者らが6日間・合計約24時間にわたり講義する講座を設置している。』

『日本企業で徐々に作成が進んでいる「スキルマトリックス」と呼ぶ一覧表は、現状の経営の強みや弱みを見極める道具になる。「ESG」「研究開発・IT(情報技術)」といった10前後の項目を作り、取締役が知見を持つ分野に丸印をつける。空欄があれば、人材の足りていない分野が企業や株主に見えてくる。

ヤマハは6月下旬の株主総会で、NTT会長の篠原弘道氏、富士通で執行役員を務めた吉沢尚子氏を新たに社外取締役に選んだ。従来のスキルマトリックスで不足していた、デジタルや製造・技術の研究開発といった項目を補った。

サンリオも6月下旬の総会で新たな社外取締役を招き入れた。米SNS(交流サイト)大手ツイッターの日本代表、笹本裕氏だ。21年3月期は12年ぶりの最終赤字に転落。従来の延長線上にない経営改革の必要に迫られ、デジタル分野で新ビジネスを切り開くための有力な知見を得る人選だった。』

『企業が直面する課題は多く、変化も速い。企業価値向上のために社外取締役の役割を改めて問い、統治を磨き直すことが求められている。』