中国、カンボジア産フルーツ輸入解禁 EU制裁を穴埋め

中国、カンボジア産フルーツ輸入解禁 EU制裁を穴埋め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB05A750V00C21A7000000/

『【プノンペン=ショーン・タートン、佐堀万梨映】中国がカンボジア産フルーツの輸入を増やしている。人権問題を巡り欧州連合(EU)から経済制裁を受ける同国を支援するためだ。カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の一員として南シナ海などを巡り、親中の立場を示してきた。縫製業に依存する経済を多角化したいカンボジアにも利点があり、対中傾斜を強めている。

6月上旬、北京郊外の河北省の卸売市場で、カンボジア産のマンゴー輸入を祝う式典が開かれた。中国がカンボジア産の生鮮マンゴーを直接輸入したのは初めて。たくさんの風船が空に放たれ、会場は祝賀ムードに包まれた。

2020年6月、中国はカンボジアと生鮮マンゴーの直接輸入の衛生要件を定めた。中国側が求める品質基準を満たすカンボジアの果樹園と包装工場は中国へ直接輸出できるようになった。中国への初めての生鮮マンゴーはカンボジアから5月に出荷された。カンボジアの1~5月のマンゴー輸出は前年同期の3倍以上になった。

中国はマンゴーに先行し、カンボジアからの生鮮バナナの直接輸入を解禁した。対中輸出額は19年に800万ドル(約8億9000万円)だったが、20年は15倍の1億2100万ドルに急増した。中国では北京、上海など都市部を中心にマンゴー、バナナのようなトロピカルフルーツの需要が高まっている。

カンボジアは中国に対し、次は生鮮リュウガンの直接輸出の解禁を求めている。さらに生鮮ドラゴンフルーツなどの直接輸出の実現につなげていく構えだ。

英エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)によると、カンボジアの農産品輸出は20年が9億3200万ドルで、前年より約17%増えた。それでも輸出総額の5.4%にすぎない。だが、カンボジア政府は輸出の大半を衣料品や靴が占める現状を変えるため、フルーツをはじめとする農産品の輸出を増やそうとしている。

カンボジアのベン・サコン農林水産相は、生鮮フルーツを世界最大規模の市場を持つ中国へ直接輸出することによる利点を指摘。「新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けたカンボジア経済を底上げし、農村部の貧困解消にも役立つはずだ」と話す。

カンボジア経済を支えようとする中国の考えは明白だ。中国は20年10月、カンボジアとの自由貿易協定(FTA)に調印した。EUが同年8月、カンボジアがEUに武器以外の全品目を無関税で輸出できる「EBA協定」の優遇策の一部を停止したことを受けた救済策だ。中国は南シナ海の領有権を巡り、ASEANのいくつかの国と争っており、カンボジア経済をテコ入れすることで中国寄りの姿勢を期待する。

国際貿易センター(ITC)によると、カンボジアからEU(27カ国)への輸出額は20年が約32億2700万ドルで、前年から17%減った。一方、中国への輸出額は20年が約10億8900万ドルで、前年より8%増えた。

中国は新型コロナのワクチン提供、インフラ整備でもカンボジアを支援する。同国のフン・セン首相は5月、オンラインで開かれた国際会議で「中国以外に、カンボジアは一体、誰に頼ればいいのか」と発言した。両国の関係はさらに深まる見通しだ。』