フランスが治安対策強化 モスク監視、世論を意識

フランスが治安対策強化 モスク監視、世論を意識
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR260B50W1A620C2000000/

『【パリ=白石透冴】フランスが治安対策の強化に乗り出している。テロ事件関係者の監視を強める法案の審議が続くほか、イスラム過激思想の取り締まりを目的とした別の法案も月内に成立する見通し。6月の地方選で治安対策を訴えた野党共和党が勝利するなど国内で関心が高まっていることに配慮した格好だ。』

『「テロの動画を10回見る人物がいても、今は治安当局は把握できない。この法律を使えば、それが可能になる」。ダルマナン内相は6月、政権が提出した「テロ防止と情報収集関連法案」の意義について、国民議会(下院)で説明した。

法案では、テロに関するネット上の情報を効率的に集める捜査手法を正式導入するとしている。テロ事件で服役、出所した人物の監視強化期間を従来の1年から最長2年に延ばすことなども定めている。

仏メディアによると、2021年にはテロに関わる罪で仏全土に服役中の500人弱のうち、60人が出所する。マクロン政権はテロの再発防止に不可欠だとして、4月に法案を閣議決定しており、近く成立する見通しだ。』

『もう一つの法案が、通称「分離主義対策法案」だ。フランスの価値観に反するイスラム過激思想の取り締まりを念頭に置いており、過激な思想を広げるモスクを閉鎖しやすくするといった内容だ。』

『相次いで対策を打ち出すのは、国民の関心の高まりがある。仏調査会社エラブが4月に発表した世論調査によると、国民の65%が「ここ数年で治安が悪化した」と考えている。別の調査では86%が22年の次期大統領選で「どんな治安対策を打ち出しているかを基に、投票先を決める」と答えた。

仏内務省の統計でみると、殺人事件などの凶悪犯罪の発生件数はほぼ横ばいだ。だが教師が首を切断された20年10月の事件など散発するテロが、体感治安に影響を与えているとみられる。』

『また6月の統一地方選では中道右派共和党系の候補がパリ首都圏「イルドフランス」など主要選挙区で相次いで勝利した。過激な対策を訴える極右国民連合のルペン党首も依然支持率でマクロン氏と首位を競う。こうした状況から政権は改めて対策強化の必要性を感じているもようだ。

ただ行きすぎた対策はあつれきも生みかねない。イスラム過激思想を取り締まる法案を巡っては、宗教が攻撃されていると感じるイスラム教徒も多いと指摘される。出所者らの監視についても、プライバシーを侵害する恐れがあるとの懸念は残る。』