エルサルバドル、ビットコインを配布へ 9月に法定通貨

エルサルバドル、ビットコインを配布へ 9月に法定通貨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05CGW0V00C21A7000000/

『【メキシコシティ=宮本英威】中米エルサルバドルは暗号資産(仮想通貨)ビットコインを9月から法定通貨の一つにすると決め、準備を始めた。電子財布(ウォレット)を設け、登録者には30ドル(約3300円)相当のビットコインを配布する方針だ。当局は前のめりだが、国民には慎重な見方が多く、スムーズに導入できるかどうか不透明だ。

エルサルバドル政府は公式の電子財布「CHIVO(チボ)」の導入を発表した。名称は「かっこいい」を意味するスラングだ。国民はチボのアプリをダウンロードしたうえで、電話番号の登録や顔認証による本人確認を済ませた後、30ドル相当のビットコインを受け取れる。

ビットコインはもう一つの法定通貨、米ドルと交換できる。そのためのATMを1500台設置する計画も進められている。

エルサルバドルの人口は650万人で、政府はその約6割にあたる400万人程度の登録を見込んでいる。ビットコインの配布にかかる費用は1億2000万ドルと推定される。

ブケレ大統領は「ビットコインの使用は任意だ。米ドルは法定通貨であり続ける」と説明する。国民は給与や年金を米ドルで受け取れる。』

『ビットコイン普及のためのインフラ整備も民間企業の協力で進める。仮想通貨のATMを手がける米アテナビットコインは100万ドル以上を投じ、エルサルバドルに1500台のATMを設置する考えを示した。

エルサルバドルの就労機会は少ない。近隣の富裕国である米国で就労し、母国に送金する人々の家族が多い地域を優先して設置する考えだ。アテナビットコインのマティアス・ゴールデンホーン取締役(中南米担当)は「持続可能な速度で事業を展開していきたい」と話す。

ブケレ氏はビットコインを法定通貨に追加する理由を「送金する人を助けるため」と指摘する。一般に金融機関を介する送金に比べ、ビットコインの送金手数料が安いため、エルサルバドルへの送金増を期待する。

エルサルバドルへの海外からの送金額は2020年が59億ドルで、同国の国内総生産(GDP)の約2割に相当。これが増えれば、エルサルバドル経済のてこ入れにつながる。

当局の思惑通りにビットコインが普及するかどうかはなお不透明だ。エルサルバドル商工会議所が1668人の市民を対象に電子媒体で実施した調査によると、ビットコインでの給与支払いには93%が反対した。送金についても83%が否定した。

米州開発銀行(IDB)の調べでは、エルサルバドルの一般家庭ではインターネットの普及率が45%にとどまる。中南米地域の20カ国ではホンジュラス(39%)に次いで低い水準だ。

価値が変動するビットコインを法定通貨に加えることには国際機関からも慎重な意見が相次ぐ。中米経済統合銀行(CABEI)は技術面で支援する意向を示すが、世界銀行は「エルサルバドル政府から支援の要請はあったが、手助けはできない」と主張した。国際通貨基金(IMF)の報道官は「マクロ経済、金融、法的に多くの問題を引き起こすので慎重な分析が必要」と指摘した。

ブケレ氏は19年6月、大統領に就任した。まだ39歳で、国民の人気は高い。ただ強権的な姿勢が目立つ。ビットコインを法定通貨に加える法案は6月上旬に議会を通過したが、十分に議論を尽くしたとはいえない状況で、野党は批判している。 』