[FT]ブラジル大統領、ワクチン調達疑惑でさらに窮地

[FT]ブラジル大統領、ワクチン調達疑惑でさらに窮地
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB021790S1A700C2000000/

 ※ トランプからバイデンに変わったことが、ブラジルにも「飛び火」した…、ような感じだな…。

 ※ これが、「左派勝利」となるのかが、注目だ…。

『ブラジルで右派のボルソナロ大統領に対抗する勢力が、新型コロナウイルスワクチンの調達をめぐる疑惑の拡大に乗じて攻勢を強めている。

6月30日、ワクチン問題をめぐりブラジリアの国会議事堂前でボルソナロ大統領に抗議する人々=ロイター
インド製ワクチン「コバクシン」2000万回分の調達契約をめぐる汚職疑惑が浮上し、政府のコロナ対応への批判が高まっている。南米最大の人口を抱えるブラジルでは50万人以上が新型コロナ感染で死亡している。

2022年の再選に向けてギアを上げようとするボルソナロ氏にとっては、政治的に敏感な時期に論争が起きる事態ともなった。

世論調査の支持率では、収賄罪などによる有罪判決が4月に無効とされたことで22年大統領選への立候補が可能となった左派のルラ元大統領に先行されている。

政府高官、発注で圧力?
製薬会社バーラト・バイオテックが生産するコバクシンをめぐっては、書類に不備がありながら、政府高官が保健省の担当官に発注を認めるよう圧力をかけたと告発されている。

1回分15ドル(約1700円)という調達価格は、ブラジルが購入している他社のワクチンよりも高い。

さらに、間に入った企業が果たした役割と、コバクシンは臨床試験(治験)の最終段階が未完了でありながら、米ファイザーや米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の製薬部門ヤンセンファーマよりも先に契約が交わされたという点についても、疑いが持たれている。

コバクシンの契約問題を最初に暴露した内部告発者のきょうだいである連邦下院議員のルイス・ミランダ氏は、ボルソナロ氏に3月、問題があることを個人的に伝えていたと述べている。

ボルソナロ政権は、2月に交わした16億レアル(約354億円)のワクチン調達契約に不正な行為は一切なかったと否定。ボルソナロ氏は、まだワクチンが送られてきていないので支払いは全くなされていないと強調している。

ミサの後、車に乗り込むボルソナロ大統領(1日、ブラジリア)=ロイター

「省庁内で起きていることについて、私には知りようがなく、私は大臣を信頼している。我々は何も悪いことはしていない」とボルソナロ氏は今週、支持者に語った。

だが保健省は6月29日、連邦会計検査官の提言を受けてコバクシン調達契約の一時停止に動いた。

疑惑の発覚は、コロナ禍の重大性を否定して国内外で非難を浴びる元陸軍大尉のボルソナロ氏の政敵を勢いづかせた。

政府のコロナ対応について調べる上院調査委員会(CPI)での先週の両ミランダ氏の証言後、報告を受けていながら行動を取らなかったとして、上院議員3人がボルソナロ氏を最高裁に刑事告発した。

「保健省内に巨大な汚職のたくらみが存在することを知らされていながら、彼は何も行動を取らなかった。背任は犯罪だ」とCPI副委員長のランドルフェ・ロドリゲス上院議員は述べた。

連邦検察庁は別途コバクシンの契約交渉について調べている。

野党が大統領罷免請求
野党側は6月30日、ボルソナロ氏に対する罷免請求を議会に提出。すでに100通以上に達していた同様の請求を統合したものだ。

左派・労働者党のエルビーノ・ボーン・ガス氏は、「この政権がジェノサイド(集団虐殺)をしているだけでなく腐敗していることも明白だ」と語った。

大統領府と保健省はコメントの要請に応じなかった。バーラトは以前にコバクシン供給に関して不正行為はないと否定している。

弾劾要請の受け入れ可否を決める権限を持つ下院議長が、受け入れようとする姿勢を全く示していないことから、今のところ専門家は、ボルソナロ氏が大統領職を追われる可能性はほとんどないとみている。

支持率を下げているとはいえボルソナロ氏は依然、世論調査では有権者の2割超の支持を得ている。

だが現下の事態は、CPIの調査で政府のコロナ対応のひどさに光が当たり、信用が大きく傷ついたボルソナロ氏に対する圧力の高まりを物語る。

テレビ中継された公聴会では、ボルソナロ氏が抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンなど効果が否定された治療法を支持していたことや、政府がファイザーからのワクチン供給に関するメール数十件を無視していた疑いについて一連の証人が語った。

2億1000万人が暮らすブラジルで、ワクチン接種を完了した人はわずか12%にとどまっている。

英リスク分析会社ベリスク・メープルクロフトの米州調査部門を率いるジメナ・ブランコ氏は、ワクチン調達をめぐる疑惑でボルソナロ氏の議会の支持基盤はさらに弱まり、重要な経済改革の推進が困難になると指摘する。

「疑惑の発覚が在任中の犯罪疑惑に関する最高裁の調べにつながる可能性は無視できない」と同氏は言う。「そうなった場合、議会の弾劾よりはるかに速く進行する」

その決定の権限は、ボルソナロ氏の盟友であるアラス連邦検事総長の手中にある。上院議員らの「背任」の告発について、検事総長がどう判断するかだ。法的には、個人的な利益を理由に公職者が義務を果たさなかったことと定義され、最高1年の禁錮刑と罰金が科される。

ジェトゥリオ・バルガス財団のダビ・タンジェリーノ教授(刑事法)によると、アラス氏は証拠不十分で却下するよう求めるか、捜査を拡大するか、あるいは大統領の訴追へ向かうことができる。

「検事総長がお蔵入りさせることを選べば、司法にできることは何もなくなる」という』