[FT]イスラエル外相、UAEを初訪問 ガザ攻撃棚上げ

[FT]イスラエル外相、UAEを初訪問 ガザ攻撃棚上げ
核開発のイラン懸念で共闘
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB306Z90Q1A630C2000000/

『イスラエルのラピド外相が6月29日、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。これは歴史的な出来事だ。両国は2020年に国交を正常化したが、イスラエルからは過去最高位の高官が訪れたことになる。イスラエル軍は5月、パレスチナ自治区ガザを空爆し、アラブ諸国の反感を招いた。だが、イスラエルはアラブの一角であるUAEとの関係改善に取り組む姿勢をみせた。

イスラエルのラピド外相(左)と握手するUAEのアブドラ外務・国際協力相(29日、アブダビ)=ロイター

トランプ前米政権の仲介で「アブラハム合意」が成立し、イスラエルはUAE、バーレーンという2つのアラブ国家との数十年に及ぶ外交断絶に終止符をうった。その後、イスラエルの閣僚がUAEを訪問したのはラピド氏が初めてだ。

この訪問に先立ち、イスラエルとガザ(の武装組織)の間では11日間、砲撃と空爆の応酬による紛争が続いた。これは双方が14年に経験した激しい戦闘に近い規模だった。ガザの保健当局によると、250人以上のパレスチナ人が犠牲になり、半数近くが女性と子供だった。イスラエル側でも12人が死亡した。

UAEは(イスラエルの)暴力行為を非難した。UAEはイスラエルとの関係強化に熱心なのに、同国の政策への影響力がほとんどないことが明るみに出たとアナリストらは指摘する。UAEの国民は紛争の間、ソーシャルメディアを通じて(ガザの)パレスチナ人に連帯を表明した。政治的な異論が受け入れられることがまずない(UAEの)独裁体制下で、表現の自由が許される、まれな機会だった。

UAEのサーイグ国務相は29日、首都アブダビにイスラエルの大使館、ドバイにイスラエルの総領事館を開設するにあたり、ラピド氏を歓迎する考えを示した。ラピド氏はイスラエルの新たな連立政権をまとめた立役者で、次期首相に就く予定だ。

防衛、技術、医療、農業の協力で安全保障
核開発を進めるイランへの懸念をイスラエルと共有するUAEは国交正常化を、防衛、技術、医療、農業で協力しながら安全保障を確保する手段の一つだととらえている。

2国間の取引のほとんどは政府系企業の間で生じてきた。イスラエル国有の防衛関連企業ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズと、アブダビ首長家との関係が深いテック企業グループ42(G42)は、人工知能(AI)開発が専門の合弁会社を設立することで合意した。アブダビの政府系ファンド、ムバダラ・インベストメントはイスラエル沖の天然ガス田の権益を11億ドル(約1200億円)で取得すると発表した。

イスラエルとUAEの直行便が20年に運航を始め、人気の観光地ドバイを訪れるイスラエル人が急増した。

イスラエルではベネット首相の新政権が、連続12年にわたり首相を務めたネタニヤフ氏を退陣に追い込んだ。UAEにとってラピド氏の訪問は、イスラエルの新政権と安定した関係を築く好機だ。だが、右派のベネット氏は、イスラエルによる(パレスチナ自治区の一部である)ヨルダン川西岸の併合、(自治区での)ユダヤ人入植地の拡大を支持している。
シンクタンク、クライシス・グループの湾岸諸国担当シニアアナリスト、エルハム・ファクロ氏は「UAEはラピド氏の訪問を、イスラエル新政権と強固な関係を始め、経済連携を計画通りに推し進めるチャンスだと考えている」と指摘した。

21年はこれまでにネタニヤフ氏ら複数の(ネタニヤフ政権の)閣僚がUAE訪問を計画したが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限や外交上の理由で中止に追い込まれた。UAEの複数の高官は、ネタニヤフ氏が(3月の)総選挙で同氏の支持勢力を後押ししようと、UAEの対イスラエル投資を利用したと非難していた。』