“金庫番”起訴で風雲急の「トランプ疑惑」捜査

“金庫番”起訴で風雲急の「トランプ疑惑」捜査
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23444

 ※ この「金庫番」氏が、わが身可愛さから、「司法取引」にでも応じて、「機密事項」の暴露にでも及べば、御大(及び、その親族)は、俄然窮地に追い込まれる…。

 ※ 事態の成り行きに、注目だ…。

『起訴されたウイーゼルバーグ氏は1日早朝、弁護士に伴われ、マンハッタン地検に出頭した。 1日までに明らかにされたところによると、今回起訴の直接容疑は、同社の「給与外利益」を対象とする脱税をめぐるもので、トランプ氏本人は対象となっていない。しかし、マンハッタン地検の元検事でペース大学法学部教授を務めるベネット・ガーシュマン氏は、電子メディア「The Hill」に対し、「トランプ氏は間違いなく今回の問題に関わっており、後日、起訴されることもあり得る」とコメントしている。

 ウォールストリート・ジャーナル紙も「大統領在任中及びその後も、幾多の刑事・民事追求をそのたびに交わしてきたトランプ氏にとって、今回は初めての起訴案件であり、打撃になることは避けられない」と伝えた。 

 一方、トランプ氏は前日30日、ワシントン・ポスト紙がいち早く「起訴」決定を報じたのを受け、FoxNews番組の中で「自分に関わる一連の捜査や連邦議会における弾劾審議を含めすべてナンセンスきわまりない。今回はニューヨークのラジカルな左翼検事が攻撃を仕掛けてきたものであり、断固戦わなければならない」などと猛反発の構えを見せた。

 ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルのほか主要各紙が一斉に報じたところによると、マンハッタン地検は、トランプ氏が大統領在任中の2018年当時から、「トランプ・オーガニゼーション」のオーナーである同氏による税務内容疑惑に目をつけ、周辺捜査を進めてきた。しかし、現職大統領は刑事訴追対象外とされていることなどから、その後捜査は立ち往生状態だった。

 局面が大きく動き始めたのは、トランプ氏が昨年11月大統領選で敗退、去る1月20日、ホワイトハウスを離れてからだった。同地検はただちに、トランプ氏の最側近で30年近くにわたり、「トランプ・オーガニゼーッション」の“金庫番”を務めてきたウイーゼルバーグ氏が疑惑全容解明の重要なカギを握るとみて、親族関係の事情聴取に着手してきた。並行して同氏個人の過去何年にもわたる納税申告書類もすでに押収された。

 その過程で具体的に浮かび上がってきたのが、ウイーゼルバーグ氏の子息および家族が同社で雇用されている間に、運転手付き私用車の賦与、私立学校入学金・授業料の肩代わり、豪華アパート提供など、会社側から受けてきた給与以外の多額の便宜提供にからむ脱税疑惑だった。この関連ですでに、子息の元夫人が地検の事情聴取で容疑内容をほぼ認めているという。

 このため、同地検はとりあえず、「トランプ・オーガニゼーション」経営実態に精通したウイーゼルバーグ氏を起訴後、本格追及の過程で、司法取引などの可能性をちらつかせ、結果的に同氏から核心に迫る供述を得たい考えだと伝えられる。

 この点に関連し、何人かのマンハッタン地検検事経験者は、ウォールストリート・ジャーナル紙に対し「今回の起訴内容は、(トランプ氏起訴を含む)将来の一連の起訴容疑につながり得る。とくに、今後、ウイーゼルバーグ氏からの捜査協力が得られることになった場合、なおさらだ」「捜査対象人物が、刑事訴追容疑をかけられるまで、捜査協力を拒み続けることは珍しいことではない。しかし、いったん起訴された場合、当該人物は裁判で徹底的に争うか、有罪を認めて捜査協力するかの選択を迫られることになる。多くの場合、裁判の結果、刑期言い渡しになるのを回避するため、捜査協力の道を選ぶことになる」などと論評している。』

『さまざまな疑惑
 トランプ氏が直接関与してきた事業に関してはこれまで、さまざまな疑惑が伝えられてきた。その中には以下のようなものがある:

2016年大統領選に立候補したトランプ氏は、共和党陣営が全国から集めた選挙資金の中から、少なくとも820万ドル以上を「諸経費」として一族が所有する関連会社に振り込ませた
ニューヨーク検事総長は昨年8月、トランプ氏が同州ウェストチェスター郡セブンスプリングズの大規模遊休地、シカゴのトランプ・インタナショナル・ホテル売買などに際し、銀行融資を受けやすくするため時価相場を故意に吊り上げ、売却の際には収益を少なく見せるため評価額を操作してきた疑いなどで捜査に乗り出した。その後、今年に入り、刑事事件捜査に切り替えられた
事業経営者養成を目的としてトランプ氏が設立した「トランプ大学」について、当初入学案内に盛り込まれた授業内容と運営実態が大きく異なっていたため、多くの学生たちが民事訴訟を起こし、最終的にトランプ氏側が、賠償金2500万ドルを支払い決着した
2018年、トランプ氏が管理する慈善事業組織について、集まった資金のうち、慈善目的以外に流用したとして告発を受け、ニューヨーク州地裁が同氏に対し、200万ドルの罰金支払いを命じた
 しかし、大統領在任中に国民の最大の関心事となったのは、トランプ氏の過去の納税実態を暴いたニューヨーク・タイムズ紙によるスクープ記事だった。

 同紙が昨年9月27日付で報じた内容によると、①大統領は2016年および2017年両年度、それぞれ750ドルしか所得税を納めていなかった②過去18年間にわたり、合計9500万ドルの所得税を納税したが、その後「企業損失」などを理由に7290万ドルの還付を受けた③過去15年のうち10年分については、損失が収益をはるかに上回ったとして所得税を全く納めなかった④2016年、新設オープンしたばかりの首都ワシントンの「トランプ・インタナショナル・ホテル」経営でも、5500万ドルの赤字税申告を行った―などの点が明らかにされた。

 マンハッタン地検は、こうした不明朗な納税実態についても、捜査を続けてきており、すでに今年2月、連邦最高裁による最終裁可を下に、過去8年間分のトランプ氏個人所得納税関係書類一式を入手したことを公表している。ニューヨーク・タイムズ紙によると、最高裁は、同地検に対し、納税関連書類とは別に、「トランプ・オーガニゼーション」本社の膨大な経理関係書類の押収を認めたことから、捜査は税処理疑惑だけにとどまらず、経営全体を俯瞰する大掛かりなものに発展する可能性もある。』

『会社ぐるみで丸ごと起訴対象
 さらに今回の動きで異例なのは、ウイーゼルバーグ氏個人のみならず、組織として会社ぐるみで丸ごと起訴対象とされたことだ。

 これは今後、ふたつの点でトランプ氏本人にとって、大きな不安要因になりうる。

 ひとつは、トランプ一族による多岐にわたる事業展開の総本山としての「トランプ・オーガニゼーション」が前代未聞の「起訴」という不名誉な刑事処分対象とされた結果、銀行、カジノなどのレジャー施設、投資会社など様々な分野のクライアントとの従来通りの活動に大きな支障を来しかねないことだ。

 そしてもう一点は、会社全体が起訴されたことにより、これまで厚い秘密のベールに包まれてきた組織について、地検による全容解明に拍車がかかるとみられる点だ。その結果次第では、捜査の手がいよいよ、組織の最高責任者であるトランプ氏にも及ぶことも否定できない。

 「トランプ・オーガニゼーション」は1923年、トランプ氏の父方の祖母エリザベス・クライスト・トランプ女史と父親フレッド・トランプ氏の手で小規模な不動産取引会社として設立されて以来、不動産開発、投資、財産管理、ホテル買収・経営、カジノ経営、マンション・タワー建設・販売、ゴルフ場経営などにも次々に手を広げ、今日では大小合わせ250近くの事業体をまとめる大組織にまで発展してきた。

 しかし、完全なファミリー・ビジネスであるだけに、税務内容も含めその経営実態は多くの謎に包まれたままとなっている。

 最終的に、トランプ氏本人の刑事訴追にまで発展するかどうかは不明だが、今回の起訴により、トランプ一族に大きな打撃となったことは間違いない。』

不仲が決定的になったトランプ前大統領とイバンカ夫妻
契約金100万ドルの「ジャレッド回顧録」に激怒、自著本は出版元ナシ
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65840

 ※ こういう情報も、見といた方がいい…。

 ※ 落日の「トランプ王国」と言った趣きだ…。

『折りからトランプ氏が築き上げた不動産・カジノ・ゴルフ場コングロマリットの「トランプ・オーガニゼーション」へ司直の手が伸びている。

 同オーガニゼーションの脱税、不正経理容疑を数年にわたって内偵してきたニューヨーク州司法長官と同州マンハッタン地方検事が今週中にも本格捜査を開始する。

 トランプ氏の超側近として過去数十年間、同オーガニゼーションの経理・税務を1人で担当してきたアレン・ワイゼルバーグ元経理部長(73)を事情聴取する。

 同氏ら同社の経営幹部たちが会社の公金を子女の学費に不正乱用していたという「別件」だ。

 長期間にわたり、しかも組織的に子供たちの高額な私立学校への学費を企業の経費で落としていたという疑惑だ。司法当局はすでにその物的証拠を入手しているという。

 これを突破口に、オーガニゼーションの乱脈経理を追及し、さらには納税上の不正を暴く狙いがある。捜査の手はトランプ氏の2人の息子やイバンカさんだけにとどまらず、トランプ氏自身にも及びかねない。』