中国共産党創立100年、識者の見方

中国共産党創立100年、識者の見方
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『「威信の低さ、強硬な外交生む」愛知県立大・鈴木隆准教授

愛知県立大・鈴木隆准教授
中国共産党の課題はグローバル大国として不可欠な普遍的理念を内包したソフトパワーが欠如していることにある。経済・軍事大国になったにもかかわらず、国際的な威信が低い。そのギャップに対する国民の困惑やフラストレーションの高まりが他国を威圧的な言動で挑発する「戦狼(せんろう)外交」につながっている。

中国共産党指導部も、国内で新型コロナウイルスを抑制し成長を続けているという内部からの評価と、中国の強硬姿勢を批判する海外からの評価のギャップにいらだちを強めている。

2000年代までの高度成長による生活水準の急速な改善はもう見込めない。その代わりにデジタル化による利便性向上などで生活の満足度向上を図っている。広域経済圏「一帯一路」の推進や軍事増強などの対外的パワーの誇示で国民の自尊心もくすぐっている。

強硬的な外交姿勢は当面続き、外交上の摩擦をもたらしやすい構図が続くだろう。かつての高度経済成長のような成功物語への固執や、失敗への過度な恐れから新しいことを議論すらできない政治的風潮が生まれつつある。

1990年代から共産党指導部の参謀役を務めている王滬寧(ワン・フーニン)氏の功罪も見逃せない。「中華民族の偉大な復興」などスローガンばかりが飛び交い、政策のイノベーションに乏しくなっている。国内は安定しているといわれるが、社会的には長期停滞になる可能性がある。

習近平(シー・ジンピン)指導部は権力継承システムにも不備がある。鄧小平氏が敷いた「集団指導体制」をあっさりやめて、習氏個人の長期政権の可能性がでてきた。後継候補を決めていないため、不測の事態が起きれば後継を巡り党内の争いの激化や国内混乱の可能性をはらむ。(北京=羽田野主)』

『「人口減少時代への対応が急務に」国際経済研究所・伊藤信悟主席研究員

国際経済研究所の伊藤信悟主席研究員
中国が先進国入りを前に経済成長が鈍る「中所得国のわな」に陥るのではないかとの指摘があるが、中国には他の途上国と違っていくつかの有利な条件がある。経済規模が大きく、教育水準が高いこと。多様性に富んでいることは、様々な技術、ビジネスモデルの試行をする上で有利だ。

多くの新興国にとって半導体・液晶産業は非常に多額の投資を必要とするので、そもそもスタートラインに立つことすら難しい。中国は過剰投資が懸念されるほど、多くの企業が政府の支援のもとで参入できる。

ただ、持続的な発展を確かなものにするためには課題も多い。人口減少時代への対応は急務だ。例えば反対も根強い「定年退職の年齢引き上げ」の早期実現は必要な労働力を確保していく意味でも急ぐ必要がある。社会保障の持続性を高めるうえでも重要だ。

人口減少は早晩始まる。中国共産党系メディアの環球時報などは「早ければ2022年に減少開始」としている。少子高齢化が加速する中で、貯蓄率が下がることになるだろう。30年代には経常赤字への転換圧力が高まる可能性がある。海外からの資金の受け取りを意識した政策運営が必要になり、それだけ市場化の圧力も強まるだろう。

人口減少に伴って世帯数も少なくなる。不動産に頼った成長は変える必要がある。不動産開発に依存した「土地財政」からの脱却にも取り組まなければならない。ここ数年土地使用権の売却への地方財政の依存度がさらに高まっている。不動産価格急落による金融不安を避けつつも、速やかに「固定資産税」に相当する不動産保有への課税に切り替える必要がある。(聞き手は山下美菜子)』